サマンサタバサジャパンリミテッドが2023年2月期通期業績予想の大幅な下方修正を2月15日に行った。え、この会社は1月13日に第3四半期決算(2022年3月1日〜2022年11月30日)の発表を行ったばかりじゃないのか?その時に年末商戦の結果は分かっていたはずだから、その時点で下方修正をする気ならできたのではないか?そのわずか31日後に、「主力事業における2022年11月〜12月末にかけてのファッション市場の減速等の影響により、11月および12月の年末商戦において苦戦を余儀なくされ、計画未達となりました。2023年1月度は商況に復調の兆しが見受けられ、足下の業績も順調に推移しておりますものの、年末商戦の落ち込みをカバーするまでには至りませんでした」と業績下方修正の理由を説明している。ここに記されている2022年11月〜12月末にかけての「ファッション市況の減速」とは何を指しているのか?同社が販売を行っている百貨店もショッピングセンターもそれぞれ全国平均では、久しぶりに行動制限のない年末商戦になったとして、それぞれ全国売り上げは前年比+4.0%、+4.9%と発表している。一体、この文書の発表責任者の米田幸正社長は大丈夫なのだろうか?と思わずにはいられないのだ。この米田社長は昨年5月26日に社長に就任したばかりで、ある意味では今期に関しては門田剛前社長の責任ですということなのかもしれないが、6期連続赤字を続け、今期7月連続赤字が確定的では、そんなことを言っている場合ではないだろう。
では、その米田社長はどんな人物なのかと言えば、1950年10月22日生まれの72歳。1976年北九州市立大学外国語学部英米学科を卒業し、伊藤忠商事入社(正確には伊藤忠と合併前の破綻寸前の安宅産業入社)。デトロイト駐在時代はいすゞ自動車とゼネラルモーターズの提携に携わっている。2002年に伊藤忠商事退社後は、2003年ハックキミサワ(現ウエルシア薬局)社長及びCFSコーポレーション社長、2007年ピジョン常務、2009年スギホールディングス社長、2012年エステー社長、2013年大王製紙取締役、2015年フマキラー戦略アドバイザー、国士舘大学経営学部非常勤講師(2021年から客員教授)などを歴任。2022年5月26日にサマンサタバサJL社長就任。社長の任期がいずれも短いのが気になるし、ファッションやアパレルを手掛けたことがないのも気になる。72歳にして「サマンサタバサ」のような若い女子を相手にしたファッションブランド企業のトップというのはどうなのだろう?それに「サマンサタバサ」は明らかにピークを過ぎてしまったブランド。これを再び上昇カーブに乗せなければならないのだから大変だ。これが可能とすればクリエイティブ・ディレクター的な才能を併せ持つ一握りのビジネスマンだけだろう。米田氏が適任かどうかは来期(と言ってもすぐに今年3月1日からスタートだが)以降ということになるが、今回の業績下方修正発表のいい加減さを見る限りでは疑問符がついてしまう。ついでに言えば、サマンサは親会社のコナカの子会社でもあるフィットハウス(非上場)と合併する際に実質的な存続会社ではないとの判断を東証からなされたため、2024年2月29日まで猶予期間に入っているのも気がかりではある。あと1年でサマンサタバサが実質的存続会社としての体を成しているかどうかがすでに疑わしい。1月13日に発表された第3四半期決算の決算短信を見ていたら、自己資本比率がなんと3.3%!貸借対照表を見てみると、資産合計が191億4000万円、負債合計が181億3800万円。債務超過寸前のレベルになっている。来期はいよいよ正念場になっているのだ。
こうした状況を反映して、同社の株価は「倒産信号」と呼ばれている100円の攻防戦に入って、100円を境にして行ったり来たりしている。こうした状況下で米田社長は、当然親会社のコナカの湖中謙介社長(52歳)が最終ジャッジを下して選んだ社長だろう。それなりにその実力を見込んでの選択であろうが、とても私にはその意図が掴みきれない。少なくともこのブランドなり会社を買おうという企業は恐らくないだろうから、自力でこのピンチを脱出するしかないのだ。米田社長の手腕に期待したい。