本記事は、井上裕之氏の著書『嫌われない断り方69フレーズ』(きずな出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

フレーズ
(画像=fotogestoeber/stock.adobe.com)
「好かれる断り方」の5つの大原則
  1. 声をかけてくれた相手に対する「感謝」を伝える
  2. 言葉だけではなく言語以外の表現を意識する
  3. 断るときは素早く断る
  4. 断る理由を明確にする
  5. 可能であれば代替案を出し、今後につなげる

断る前、あるいは断ったあとに「感謝」を示す

ひとつ目は、

「声をかけてくれた相手に対する『感謝』を伝える」

というものです。

断り文句の前に

「お声がけいただき、ありがとうございます」
「お誘いいただき、ありがとうございます」

あるいは断ったあとの締めに

「いつもお心にかけていただき、ありがとうございます」

といった言葉を使って感謝の気持ちを表現するということです。

こういうと存在意義がなくなってしまうかもしれませんが、極論をいってしまうと、これさえできていれば、断り文句自体の表現が多少おかしくても大きな問題はないといえるほど重要なものだととらえてください。

飲み会の誘いにせよ仕事の依頼にせよ、誰かから声をかけてもらえるということは、基本的にありがたいことのはずです。

誰からも声をかけてもらえないなんてことは、やはり寂しいものですからね。

そうであるなら、なによりも「ありがたい」という感謝の気持ちを示すべきではないでしょうか。

そうすれば、結果的に断ったとしても、相手は「気にしなくていいよ」

というふうに受け止めてくれる可能性が高まります。

対面や電話では言葉以外も重要

続いてのふたつ目の原則は、

「言葉だけではなく言語以外の表現を意識する」

というもの。

言語以外の表現は「ノンバーバル」ともいわれ、これは「言語を使わない」「非言語」を意味する英語です。

つまり、コミュニケーションにおいては、言葉以外の表情、声のトーン、話す速度、身振り手振り、視線や目の動きといったものを指します。

もちろんこれは、メールや手紙といったツールで使えるものではありません。

しかし、対面や電話で断るときにはとても重要なものです。

というのも、人間のコミュニケーションにおいては、言葉そのものが持つ意味よりもノンバーバルの情報のほうがはるかに優先されるという心理学の研究結果もあるからです。

これはアルバート・メラビアン氏が提唱したもので、「メラビアンの法則」としてよく知られています。

もちろん、そんな研究結果など知らずとも、このことはちょっと想像すればわかることですよね。

「本当にすみません」というメールを見た場合と、目の前の人がいかにも心苦しいという表情をしながら

「ほんッとにすみません!」

と頭を下げてくれた場合をイメージしてみてください。

後者も、文字にすれば「本当にすみません」という前者と同じ簡単な言葉を発したに過ぎません。でも、

「気持ちとしてはぜひお受けしたいが、本当に申し訳ないけれども今回はお断りさせていただきたい」

という気持ちが伝わってくるのではないでしょうか。

言葉以外のところが持つ力は大きい

前章でも触れたように、日本の社会には「空気を読む文化」が根強いという特徴があります。

そう考えると、言葉そのものよりも、ただでさえ重要だとされるノンバーバルの表現を、日本人の場合はより重視したほうがいいという見方もできます。

もちろん、「ノンバーバルの表現が重要だから」といって、あまりに大げさになるようなことは避けるべきです。

ただ、「お断りして申し訳ない」という気持ちをノンバーバルの部分で表現しつつ、「ほんッとにすみません!」と伝えたほうが、「申し訳ございません」とただ綺麗な言葉を使っただけよりも、相手に納得してもらいやすくなります。

とにもかくにも返事はすぐに!

「好かれる断り方」の3つ目の原則は、

「断るときは素早く断る」

というものです。

なにかを断る場合に限った話ではありませんが、コミュニケーションの基本は

「相手の立場に立って考える」

という点にあります。

この3つ目の原則などは、まさに相手の立場に立って考えればよくわかることです。

あなたが飲み会に誘ったり仕事の依頼をしたりした相手からなかなか返事がこなかったら、どう感じるでしょうか?

「OKでもNOでもいいから、早く返事をくれないかな……」

とやきもきするのではないでしょうか。

それこそ長く待たせられた揚げ句に断られたなんてことになれば、

「断るんだったら早くいってよ!」

という気分になるでしょう。

もし早く断ってくれたなら、別の人を誘うといった次の一手ももっと早く打てたはずです。

このことは、他人の貴重な時間を奪う行為でもあります。

誰もが忙しい社会人にとっては、ご法度といってもいいものです。

断る可能性をあらかじめ示唆しておく

しかしながら、場合によっては

「本当に現時点では判断できない」
「返事を先延ばしせざるを得ない」

というケースもあるでしょう。

そういったケースでは、

「お待たせした揚げ句にお断りすることになるかもしれませんが、いまははっきり回答いたしかねます」

と、「断る可能性もある」という旨とともに回答できない現状を伝えたうえで、「○日までにあらためてお返事をいたします」と回答の期日を伝えましょう。

そうすれば、「早く返事をくれないかな……」と相手がやきもきすることもありませんし、急ぎの案件という場合なら、

「いまのうちに断られた場合のために別の人を探しておくか」

と次の一手を考える時間的余裕も相手に生まれます。

自分のためにも理由を明確にする

「好かれる断り方」の4つ目の原則は、

「断る理由を明確にする」

というものです。

この原則の重要性は、まず相手の「納得感」を強めるという点にあります。

「お断りさせていただきます」だけではなく、

「〇〇という事情があるため、お断りさせていただきます」

という理由が示されれば、相手は

「そういう事情なら仕方ない」

というふうに納得してくれます。

理由が示されない場合には、

「断られるのは別にいいのだけれど、どうして断られたのだろう……」
「こちらになにか不手際でもあったのかな……」

と、相手はどこかもやもやした気持ちを抱えてしまうのです。

またこのことは、相手だけではなく自分にとっても大切なことです。

なぜなら、断る理由を明確にすることで、断るかどうかの自分なりの判断基準をきちんと認識できるからです。

判断基準が明確なら、まわりも納得しやすい

その判断基準がブレてしまって、そのときの気分で受けたり断ったりしてしまうと、

「前はあんなに忙しいなかでもやってくれたのに、どうして今回はやってくれないのだろう……」

なんていうふうに、相手から不信感を持たれかねません。

仕事ではなく飲み会の誘いだって、

「わたしは1次会には行くけれど2次会には行かない」

というふうに判断基準をはっきりさせておくと、2次会の誘いも断りやすくなります。

また、周囲も

「〇〇さんは2次会には行かない人」

というふうに認識してくれて、2次会の誘いを断ったとしても悪い印象を与えるようなこともなくなります。

代替案を示して関係性を継続させる

「好かれる断り方」の最後の原則は、

「可能であれば代替案を出し、今後につなげる」

です。

これは、

「今回は断らざるを得ませんが、わたしの代わりに〇〇さんという人を紹介できます」
「スケジュールの関係でお断りさせていただきますが、もし期日を〇日延ばしていただけるならお受けできます」

というふうに、断りつつも代替案を示すということです。

「可能であれば」ですから、もちろん絶対にやらなければならないということはありません。

本当に多忙で代替案を考える時間もないということだってあるでしょう。

しかし、断る相手が「今後も関係を継続したい」と思うような相手なら、やはり代替案を出すことをおすすめします。

実際に、その代替案を相手が採用するかどうかはここでは問題ではありません。代替案を出したその先は、あくまでも相手が判断することです。

言葉の裏にある気持ちを伝える

重要なのは、代替案を出すことによって

「なんとかしたい」

という気持ちを相手に伝えるということです。

相手からすれば

「忙しいのにわざわざありがたい」

と感じられ、

「また別の機会があったら今度はぜひお願いしよう」

と、縁が切れることを防いでくれます。

嫌われない断り方69フレーズ
井上裕之
いのうえ歯科医院理事長。歯学博士、経営学博士。
1963年、北海道生まれ。東京歯科大学大学院修了後、世界レベルの技術を学ぶためニューヨーク大学、ペンシルベニア大学、イエテボリ大学で研鑽を積み、医療法人社団いのうえ歯科医院を開業。自身の医院で理事長を務めながら、東京医科歯科大学、東京歯科大学非常勤講師、インディアナ大学客員講師など国内外の6つの大学で役職を兼任している。その技術は国内外から評価され、特に最新医療・スピード治療の技術はメディア(情報番組「未来世紀ジパング」)に取り上げられ、注目を集めている。世界初のジョセフ・マーフィー・トラスト(潜在意識の権威)公認グランドマスター。本業の傍ら、世界的な能力開発プログラム、経営プログラムを学んだ末に、独自の成功哲学「ライフコンパス」をつくり上げ、「価値ある生き方」を伝える著者として全国各地で講演を行なっている。
著書累計は130万部を突破。実話から生まれたデビュー作『自分で奇跡を起こす方法』(フォレスト出版)は、テレビ(「奇跡体験! アンビリバボー」)で紹介され、大きな反響を呼ぶ。ベストセラー『「学び」を「お金」に変える技術』(かんき出版)、『なぜかすべてうまくいく 1%の人だけが実行している45の習慣』(PHP研究所)など著書多数。

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