100円ショップ国内3位のキャンドゥ<2698>の2023年2月期連結最終損益が、2007年11月期以来およそ15年ぶりの赤字に転落しそうだ。コロナ禍の巣ごもり需要の反動減や円安に伴う商品原価の高騰などが利益を圧迫したという。それならば100円ショップ業界全体が赤字に陥るはずだが、上場する競合各社は黒字を維持する見通し。なぜ、キャンドゥが赤字に転落するのか?

大手で唯一、最終赤字に沈む

キャンドウが1月12日に発表した今期業績見通しは、売上高927億円、最終純損益△4億6000万円の赤字になるという。同社は今期から2月決算となったが、前期までの11月決算では売上高が前11月期比1%増の737億円、最終損益は△1億7500万円の赤字(前11月期は1億9400万円の黒字)だった。

一方、業界2位のセリア<2782>が1月31日に発表した今期業績見通しによると、売上高が同2.8%増の2140億円、最終利益が同30.1%減の100億円と大幅減益になる見通しだが最終黒字は維持する見通し。

「ダイソー」を展開する業界トップの大創産業(広島県東広島市)は非上場で利益については公開していないが(2022年2月期の売上高は5493億円)、最終黒字は確保するとみられる。キャンドゥの赤字転落は上位2社とのスケールメリットの差なのだろうか。

しかし、業界4位のワッツ<2735>も2023年8月期の売上高は同3.7%増の605億円、最終損益は同32.2%減ながら5億3000万円の黒字を予想している。実はキャンドゥが単独で最終赤字に落ち込むのは、同社の商品戦略に原因があるのだ。そのカギとなるのが100円を超える高額商品だ。


高額商品ダイソー、100均セリアの影に埋もれた

高額商品に力を入れているのがダイソー。1000円のソーラー充電モバイルバッテリーやワイヤレスイヤホン、660円のBluetooth防滴スピーカーなど、100円ショップでは高額だが家電量販店では数千円する家電商品を「格安」で販売している。高額商品の品揃えも多く、もはや100円ショップとはいえない商品展開だ。

一方、セリアは100円均一にこだわり、ダイソーのような家電商品は取り揃えていないが、100円で販売できるものに特化して販売している。

キャンドゥはダイソーと同じ商品戦略だが、高額商品の品揃えではダイソーに劣る。しかも高額商品のラインナップには家電商品が少なく、「格安」イメージが乏しいのも弱点だ。キャンドゥは「中途半端なダイソー」状態で、高額商品での競争で不利になる。

4位のワッツはネット通販ながら5000円を超える高額商品を展開するなど、上位のキャンドゥよりもダイソーに近い商品戦略だ。

一方、全商品を100円で販売しているセリアに比べると、どうしても割高感が出てしまう。高額商品路線のダイソーと100円均一路線のセリアの間で差別化できていないことが最終赤字につながったと言えそうだ。

とはいえキャンドゥの売上高は成長を続ける見通しで、今後はコストダウンや商品戦略の練り直しなどにより増益の可能性も十分にある。株式公開買い付け(TOB)でイオンの傘下に入り、経営基盤は盤石になった。イオン系列の総合スーパーや食品スーパー、ドラッグストアなど全国で5000店舗近い売り場での展開も期待できる。

だが、店舗数が多くても商品で差別化できなければ、売上高が増えたところで薄利多売の100円ショップだけに利益を確保するのは難しい。高額商品を充実させるのか、「原点回帰」で100円商品に集中するのか、それとも別の道を選ぶのか…先ずは商品戦略の見直しが「黒字転換」の第一歩だろう。

文:M&A Online編集部