紙の通帳を発行しない通帳レスの銀行取引が着実に広がりを見せています。銀行側としては通帳レス口座を広めたい思惑があるため、利用を促進するために特典やキャンペーンなどを用意している銀行もあります。特典はなくても逆に紙の通帳にはコストが発生するようにすることで、通帳レス口座の利用を促している銀行も多くあります。

こうした状況を考えると、これまで利用してこなかった人にも通帳レス口座の利用を検討する時期が来ているといえます。通帳レスにすると銀行取引はどう変わるのでしょうか、メリットとデメリットの両面から解説します。

銀行が相次いで導入している通帳レス口座とは

いよいよ検討必須の「通帳レス口座」、メリット・デメリットとよくある疑問に回答
(画像=NewAfrica/stock.adobe.com)

通帳レス口座とは、紙の通帳を発行しない銀行口座のことです。パソコンやスマホによるネットバンキングとATMだけで銀行取引を完結するため、通常の銀行取引をするだけであれば銀行の窓口に行くことはほとんどありません。

PayPay銀行や楽天銀行など、最初からネットバンキングであることが前提になっているネット銀行であればそもそも通帳の概念がなく、通帳レスも珍しいことではありませんが、近年では大手メガバンクや有力な地方銀行など伝統的な銀行でも通帳レス口座が広がりつつあり、銀行側もその利用を推奨しています。

以下のように大手メガバンクでもさまざまな名称で通帳レス口座を用意しており、利用促進が図られています。

・Eco通帳(三菱UFJ銀行)
・Web通帳(三井住友銀行)
・みずほe-口座

もちろん大手メガバンクだけでなく地方銀行などにも波及しているので、今後さらにこの流れが加速することは必至です。

「やっぱり紙の通帳でないと」と言えなくなってきた

長年紙の通帳に慣れ親しんできた方々にとっては「銀行口座=通帳」というイメージが強く、通帳レス口座の普及が進んだとしても「やっぱり紙の通帳でないと」との思いが強いかもしれません。

しかし、大手メガバンクを筆頭に銀行は続々と紙の通帳発行に手数料を設けるなどの方針を打ち出しており、紙の通帳を持っていることがコスト増につながる時代になりつつあります。

多くの銀行は紙の通帳を1冊発行するごとに手数料が発生する仕組みを採用していますが、銀行の中には三井住友銀行のように「1口座あたり毎年550円」というように年額で紙の通帳コストが発生する銀行もあります。毎年発生するとなると口座保有期間が長くなるほどコストも大きくなるので、注意が必要です。

通帳レス口座のメリット3つ

通帳レス口座を利用することで得られるメリットは、主に3つあります。

通帳を紛失する可能性がない

紙の通帳には、紛失や焼失、盗難などのリスクが常につきまといます。もちろん再発行も可能なので通帳を失うことと口座のお金を失うことはイコールではありませんが、紛失や盗難の場合は通帳に記載されている情報を何者かに盗み見されてしまうリスクもあります。

その点、通帳レス口座であればそもそも通帳がないので、紛失や盗難といったリスクがありません。口座にログインする情報さえ紛失しなければ、自分の口座を管理できなくなるといった事態になることはありません。

銀行に行き、窓口やATMに並ぶ必要がない

通帳レス口座の使い勝手はネット銀行とほぼ同じなので、ほとんどの手続きはネットバンキングで完結できます。そのため、銀行に行って窓口の順番待ちをする必要はありません。

また、給料日が集中する日や月末日などは銀行の窓口やATMが混雑することに閉口している方は多いと思いますが、通帳レス口座は時間外手数料が無料になったり、コンビニATMも利用しやすかったりするため、ATMの混雑からも解放されます。

通帳レス口座にすることによって特典を受けられる場合も

先ほど少し触れたように、銀行側は通帳レス口座への移行を推奨しています。そのほうが店舗運営コストや人件費を削減できるからです。そのため、既存の口座を通帳レスにすることに対して特典を設けていたり、新規に開設する口座についても通帳レスを選ぶと何らかの特典が受けられることがあります。

こうした特典は通帳レス口座の普及過程の時期が過ぎるとなくなるかもしれないので、そういった特典があるうちに享受しておきたいメリットです。

通帳レス口座のデメリット、注意点

銀行側が推奨している通帳レス口座だけにメリットは多いのですが、その一方でデメリットもあります。ここでは通帳レス口座について知っておくべき3つのデメリットについて解説します。

履歴情報の閲覧期間に制限がある

紙の通帳であればすべてのページを使い切った時点で新しい通帳に切り替えて使い続けることができるため、古い通帳を保管しておけば無期限にさかのぼって履歴情報を閲覧することができます。

通帳レス口座の場合はネットバンキングで履歴情報を閲覧できますが、さかのぼれる期限が無期限ではない場合があります。もちろん銀行側はこれがデメリットとして受け止められることを理解しているので、りそな銀行のように無期限閲覧を可能にしていたり、三井住友銀行のように30年前までさかのぼれるようにするなど、何らかの配慮をしています。

相続時に財産の存在を見つけにくい

人が亡くなった時に遺品整理をしていると、紙の通帳なら遺族が財産の存在に気づきやすいですが、通帳レスだと持ち主のスマホ内にあるアプリや、使用していたパソコンのブックマークなどを調べなければ存在に気づけないかもしれません。

また、IDやパスワードなど本人しか知り得ない情報がなければ口座の存在に気づくことはできても、その中まで閲覧することは困難になってしまうかもしれません。

通帳レスでもキャッシュカードは必要

通帳レス口座は「通帳レス」ですが、「キャッシュカードレス」ではありません。現金の出し入れにはキャッシュカードが必要なので、通帳レス口座であってもカードの紛失や盗難には注意が必要です。

通帳レス口座の疑問点を解決

通帳レス口座に関してよくある疑問点と、その答えをまとめました。

Q:通帳レスの場合、印鑑はどうなる?

通帳レス口座では印鑑を用いる場面がないため、多くの場合口座開設時に印鑑の登録をしません。印鑑の代わりにサインを用いる場合が大半です。

Q:通帳レス口座だと窓口で対応してもらえない?

通帳レス口座はネットバンキングとATMでほとんどの銀行取引を完結することができますが、それでは通帳レス口座の利用者は窓口の利用ができないのかというと、そんなことはありません。通帳レスであっても口座保有者であれば必要に応じて窓口でも対応してもらえます。

Q:通帳のコピーが必要な時は?

ローンの審査や不動産契約時など、口座番号や取引内容、残高などが分かる「通帳のコピー」が必要になることがあります。通帳レス口座では紙の通帳がないので手持ちの通帳をコピーすることはできませんが、その代替としてネットバンキングからの操作で通帳コピーを取得できるようになっています。

こうした対応については銀行によって具体的な方法はまちまちですが、必要になる場面があることは銀行側も理解しているので、何らかの方法で通帳のコピーを取得可能です。

(提供:Incomepress



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