先週は日銀政策決定会合と2月米国雇用統計の発表が有り、市場は固唾を飲んで見守っていたが前者は何の変更も無し、そして雇用統計の数字は非農業部門雇用者数が+31万1千人と前月の+50万4千人から減ったものの市場予想の+20万5千人を上回ったが、失業率が前月の3.4%から3.6%へと悪化して結果としては“波乱無し。”となり、どうやら次回のFOMC.では市場が予想する0.50%の利上げを妨げるものではないとの認識が広がった。
ところが前日、経営不安が噂された米銀行持ち株会社SVB.(シリコン・ヴァレー・銀行)ファイナンシャル・グループが保有債券の売却で巨額損失を計上した為、SVB.(シリコン・ヴァレー・銀行)が資本増強のために普通株の発行などで22億5000万ドル(約3060億円)を調達しようとしたが、それが不調に終わり結果として破綻したとのニュースが流れて、金融市場はてんやわんやとなった。
リスク・オフとなり、債券が買われて長期金利とドルは下落して株価も下げた。
典型的なリスク・オフ相場である。
2022年末時点でのSVBの総資産は約2090億ドル(約28兆円)で、資産規模は全米で16位。米銀の破綻では、2008年9月の金融危機で破綻した米貯蓄金融機関(S&L=地方銀行に相当)最大手のワシントン・ミューチュアルに続く2番目の規模となる。
FRB.によるインフレ対策の為の強力な金融引き締めに対するつけは何時かは出るであろうとの思惑は有ったが、ついに銀行の破綻と言う形で現れた。
米国の銀行が破綻するとFDIC.(米連邦保険公社)が25万ドル(約3千3百万円)までの預金の補填をするが、それが上限で週明けの米国では預金者が自分の銀行に預金引き出しに殺到するかと思ったが、日本時間の朝に米財務省は早々と“SVB.の預金を全額保護する。”との声明を出した。
これを受けて133.80と金曜日の終値135.07から窓を開けて始まってドル・円相場は135.04迄戻したものの、その頭は重い。
そもそもこれはSVB.一行だけの問題で済むのか?
そうこうしている内に米銀29位、資産規模1103億ドル(約14兆7800億円)のシグネチャー銀行も破綻したとのニュースが流れた。
米財務省・FRB・FDICはシグネチャー銀行もSVB.に引き続いて預金全額保護を発表したが、これで終わりだとは誰も思うまい。
ファースト・リパブリック・バンク(FRC.)も経営不安の噂で揺れており、FRB.及びJP.モルガン銀行から700億ドル以上の与信枠を確保していると伝えられている。
CNN .ニュースによると、“U.S. BANKS SITTING ON UNREALIZED LOSSES OF $620 BILLION.”=米国の銀行は6200億ドル(約83兆円)の未実現損を抱えているらしい。
これは保有する債券の簿価上の損失に過ぎず、満期まで保有すれば損は実現しないと言うことで、何処かの国の中央銀行が保有する巨額の債券の損失問題と似通った議論である。
例えとしては不適切かも知れないが、150円で買ったドルを“今は134円-150円=-16円の評価損を抱えているが、なーにドルが150円に戻ればチャラになるさ。”と言う議論に似ているかも知れない、もっともドル・円が150円に戻る保証は無いが…
今週もFRB.の利上げ議論に大きく影響を与えるであろう米国2月消費者物価指数(CPI.)の発表が有り、市場は6.0%の上昇を見込んでいる。
前月の6.4%から大きく改善する見込みであるが、一連の米国銀行の倒産問題が勃発してそれどころではなくなった。
市場では今回の銀行破綻の報を受けて次回のFOMC.では0.50%の利上げは無理で、前回に引き続き矢張り0.25%の利上げで落ち着くと言う意見が台頭しだしたが、果たしてこの様な状況でFRB.は利上げを強行出来るのであろうか?
一方で問題銀行に流動性を供給しながら、もう一方で金融引き締めを行うのには無理が無かろうか?
青天の霹靂とまでは言わないが(上述した様に金融引き締めに対するつけは、何時かは出るであろうと思っていた。)、突然降って湧いた様な米国金融システム・リスクを過小評価するのは甚だ危険であるかも知れない。
ドルの大幅な下落に注意したい。
この様な状況でテクニカル分析に頼るのは危険である。
出て来るヘッドラインニュースに気を付けたい。
株式・金融市場
“利上げ中止?”
2023/03/13
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