コロナ禍で落ち込んでいた海外M&Aの件数が2023年、好調な滑り出しを見せている。1~2月累計(適時開示ベース)は前年同期比10件増の32件で、コロナ前の2019年34件にほぼ並んだ。ただ、その内容は4年前と一変している。日本企業が買い手のアウトバウンド取引が減る一方、外国企業が買い手のインバウンド取引のウエートが急上昇しているのだ。

高止まりするインバウンド比率

海外M&Aはコロナ禍を境に減少に転じ、2020年は152件と25%近い大幅なダウンに見舞われた。2021年は164件とひとまず回復に転じたが、2022年は156件と、コロナ前の2019年(199件)の水準から再び遠ざかった。

この間、顕著となったのは外国企業が買い手となるインバウンド取引の増加。裏を返せば、日本企業による海外子会社・事業を中心とする売却の動きが広がったことを意味する。また、日本企業が買い手となるアウトバウンド取引の減少傾向も鮮明になった。

海外M&A中のインバウンド比率をみると、2020年33%、21年41%、22年42%と右肩上がりで推移し、コロナ前(2019年22%)に比べてほぼ倍増した。

M&A Online
(画像=※適時開示ベース。2023年は1~2月累計、「M&A Online」より引用)

1~2月、アウトバウンドとほぼ拮抗

こうしたインバウンド比率の高止まりは2023年に入っても今のところ、変化は見られない。1~2月累計の海外M&A32件のうち、インバウンドは15件を占め、アウトバウンド(17件)とほぼ拮抗する。

国・地域別にみると、32件中、米国関連のM&Aは8件。このうち6件はアウトバウンドで、日本企業による米国企業の買収は活発に推移した。一方、シンガポールは米国に次ぐ4件を数えたが、アウトバウンドとインバウンドが半々。ドイツ、中国、韓国も各2件中、両者が1件ずつだった。

コロナ前の2019年1~2月は34件あった海外M&A中、インバウンドは8件と4分の1に過ぎなかった。

海外M&Aをめぐっては過去、日本企業による買収が数のうえで圧倒的に優勢で70%以上を占めていた。しかし、コロナ禍以降、インバウンド比率の急速な高まりで、形勢が一変しつつある。

文:M&A Online編集部