債券投資の基本事項とメリット/デメリットを徹底解説
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債券とは国や地方自治体、企業などの発行体が、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券だ。利息を受け取りながら満期まで保有すれば額面金額が返ってくる仕組みのため、ローリスク/ローリターンの投資先として選ぶ投資家も多い。本記事では債券の基本事項からメリットデメリットまで、徹底解説する。ぜひ資産運用の参考にしてほしい。

債券とは

債券とは国や地方自治体、企業などの発行体が、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券である。運用商品としての特徴は、投資時に満期日(償還日)および利率、利払日が決まっている点だ。運用期間や受け取れる利息があらかじめ分かっているため、運用計画を立てやすい金融商品といえる。

原則として、債券は満期まで保有すれば額面金額が払い戻される。そのため元本割れの可能性が低く、ローリスク/ローリターンの投資先として人気だ。リスクを抑えた運用を希望する場合はもちろん、株式などのハイリスク/ハイリターンとされる商品や投資信託と併せて保有する資産としても、ぜひ検討したい商品の1つである。

債券投資の仕組み

債券投資は、発行体が発行した債券を投資家が購入し、資金を提供する見返りとして、利息(クーポン)を受け取る仕組みだ。債券投資で押さえておくべきポイントを以下で確認しよう。

▽債券投資で押さえておくべきポイント

項目詳細
期待できる利益・利息
・譲渡益
・償還差益
利率決まっている
利息が支払われるタイミング決まっている
募集期間あり
運用期間あり
リスクの大きさ低め
※筆者作成

債券投資で得られる主な利益は、利息(クーポン)である。クーポンの利率および支払われる頻度は発行時に決められているため、運用計画が立てやすい。また、満期が決まっていることから、マネープランに沿った運用がしやすい商品ともいえる。そのため、積極的にリスクをとりながら大きなリターンを狙うよりも、中長期で安定的な資産運用をしたいと考える投資家に適した商品だといえるだろう。

債券は、購入の申込を受け付ける募集期間が決まっている。人気の銘柄は早期に売り切れるケースもあるため、債券投資を希望するなら口座開設などを事前に済ませ、速やかに購入手続きを進めることが重要だ。

なお、市場に流通している債券は、募集期間や満期以外のタイミングでも売買が可能だ。その場合、発行価格ではなく市場価格で取引が行われる。売買の価格によっては、譲渡損益や償還差損が発生する可能性がある。

債券の発行条件

債券を発行するにあたって、発行体はいくつかの条件を決めておく必要がある。ここでは、債券投資をする前に確認するべき5つの発行条件を確認する。

額面金額

額面金額とは、債券が満期(償還)を迎えたときに投資家が受け取れる金額だ。債券を売買する際の最低取引単位ともされ、たとえば額面金額が1万円の債券は1万円以上1万円単位で売買が行われる。

なお、額面金額は発行価格とは異なる。そのため、額面金額が必ずしも購入金額になるとは限らない。債券を購入する際には、後述する発行価格も併せて確認しよう。

発行価格

発行価格とは、債券が新規発行される際の価格のことをいう。先述のとおり、発行価格と額面金額は同じとは限らない。発行価格が額面金額と同じならパー発行、額面金額未満の場合はアンダーパー発行、額面金額より高い場合をオーバーパー発行という。アンダーパー発行やオーバーパー発行の場合、投資額と償還金額に差が出ることは押さえておこう。

表面利率

表面利率とは、債券の額面金額に対して1年間に支払われる利息の割合を表すものだ。利率やクーポンレートと呼ばれることもあり、パーセントで表示される。表面利率の計算式は、以下のとおりだ。

▽表面利率の計算式
表面利率=1年間に受け取る利息÷額面金額×100(%)

たとえば、額面金額が10万円で1年間に3,000円の利息が支払われる債券の表面利率は、3%(3,000円÷10万円×100)である。

なお、利率と似た言葉に利回りがある。利回りとは、投資額に対する1年あたりの運用益を表したものだ。利回りの計算式は以下のとおりである。

▽利回りの計算式
利回り=(利息+償還差損益/譲渡損益)÷保有年数÷発行価格×100(%)

たとえば、発行価格が10万円で利率が1%の債券を3年間保有し、11万円で中途売却した場合の利回りは、約4.3%((3,000円+1万円)÷3年÷10万円×100)となる。利回りは、投資額に対しどのくらいの収益を上げることができたかを表す数字であり、債券の購入価格・売却価格などによって利率と差が生じる。

償還日

償還日(満期日)とは、債券の額面金額が投資家に返還される日のことだ。

ちなみに債券の償還には、この償還日に行われる満期償還のほか、償還日の前に発行額の一部または全部を返還する途中償還(または期中償還/早期償還)というものもある。途中償還された場合、投資資金の返却を早く受けられる一方、投資の元本が減ることで受け取れる利息額が少なくなる。

利払日

利払日とは、利息が支払われる日のことだ。年2回(半年ごと)に支払われる債券が多いが、銘柄によっては年1回や3ヵ月(四半期)ごと、毎月払いのものもある。

債券の種類

債券はその仕組みによって、いくつかの種類にわけられる。ここでは、いくつかの4つポイントに注目した債券の種類分けを確認しよう。

利払い方法による違い

債券は、利息の受け取り方によって利付債と割引債(ゼロクーポン債)の2種類にわけられる。

利付債とは、定期的に利息の支払いを受けられる債券だ。発行時に償還までの利率が決定するものを固定利付債、定期的に利率の見直しが行われるものを変動利付債という。定期的に利息を受け取ることでこまめに利益確定したいなら、利付債を検討しよう。

割引債(ゼロクーポン債)とは、利息を付けない代わりに発行価格が額面金額よりも安く設定された債券をいう。償還日に発行価格よりも多い額面金額が返還されることで、その差額を利益として得ることができる。

利付債と割引債の大きな違いは、利息の計算方法だ。国内債券において利付債は単利、割引債は複利で計算するのが一般的である。そのため、割引債の方が資金効率の良い運用を目指せる。定期的な利息の受け取りを重視しない人やできるだけ資金効率が良い運用を目指す人は、割引債も検討しよう。

発行体による違い

債券は、発行体によっても種類分けされる。発行体別の債券の種類を以下で確認しよう。

▽発行体別の債券の種類

債券の種類詳細
公共債国債・個人向け国債
・利付国債
地方債公共地方債
政府関係機関債政府保証債
民間債社債・普通社債
・転換社債
・ワラント社債
外債サムライ債
ユーロ円債
※筆者作成

・公共債

国や地方公共団体といった政府機関が発行する債券を公共債という。

公共債の特徴は、政府機関が発行するため信用力が高い点だ。発行体の破綻により、投資資金の返還や利息の支払いが滞る可能性が低く、投資初心者でも始めやすい。なお、一般的に信用力が高い債券は利率が低く設定されることが多く、公共債も民間債や外債と比較すると利率は低めだ。

一部の地方債を除く公共債は、市場での流通量が多い。流動性が高く、いつでも換金しやすい点も公共債の特徴といえるだろう。

・民間債

民間債とは民間の企業が発行する債券で、中でも一般企業が発行する債券を社債という。社債には最もシンプルな仕組みの普通社債のほか、転換社債やワラント債といった複雑な仕組みを持つ商品もある。

転換社債はCB債とも呼ばれ、発行時に定められた一定の条件で株式に転換できる権利(=新株予約権)が付与された社債だ。一番の特徴は、転換価格よりも株価が上昇したタイミングで株式に転換し売却すれば、譲渡益を得られる点である。株価によっては、利息よりも大きな利益を得ることができるだろう。もちろん、権利を行使せず満期まで社債で持ち続けることも可能なため、債券として安定した運用をしながら大きな利益を狙えるのが魅力の商品だ。

ワラント債とは、その企業の株式を購入できる権利が付与された社債だ。転換社債とは異なり株式の購入には費用が掛かるが、株式購入後も債券が手元に残る点が特徴といえる。

・外債

外債とは、発行市場もしくは発行体、発行通貨のいずれかが外国である債券のことをいう。元本の払い込みや利子および償還金の受け取りが外貨で行われるものは外貨建て債券、日本円で行われるものは円建て外債と呼ばれる。

円建て外債には、日本国内の市場で発行されるサムライ債(サムライボンド)と海外の市場で発行されるユーロ円債がある。ユーロ円債は海外の市場で発行されるが、日本円で取引および利子の支払いが行われるため直接的な為替リスクがなく、比較的投資をしやすい外債の1つといえる。

購入場所による違い(新発債と既発債)

債券は購入場所によって、新発債と既発債の2種類にわけられる。新発債とは、発行体が新たに発行する債券だ。金融機関を通じて募集期間中に申し込みを行い、発行価格で購入する。

既発債は、すでに市場に流通している債券だ。いつでも購入可能だが、時価で売買が行われるため取引のタイミングによって購入価格が変わる点には注意が必要だ。既発債を購入するなら市場価格や残存期間、利率などを確認し、想定される利回りをシミュレーションしたうえで投資判断をしよう。

償還順位による違い(シニア債・メザニン債・劣後債)

債券は、償還順位(弁済順位)によっても種類分けできる。償還順位とは、元本や利息の支払い順位の優劣のことをいう。

先述のとおり債券は原則として保有期間に利息を受け取り、満期日には額面金額の返還を受けられる。しかし、発行体の破綻などの劣後事由が発生した場合には、予定していた利息や元本の支払いができなくなるケースがある。そのような場合に、資金の返済が行われる順位を決めたのが、償還順位だ。債券は償還順位が高いものから順にシニア債、メザニン債、劣後債と分類される。

シニア債は、もっとも償還順位が高い債券だ。優先的に利息や元本の返済が行われるため、債券の中でもリスクが低い。リスクが低いため利率が低く設定されることが多く、ローリスク/ローリターンの債券だといえる。

劣後債は償還順位がもっとも低く、リスクが高い債券だ。その分利率が高く設定されることが多いため、ハイリスク/ハイリターンの投資先となる。メザニン債は、シニア債と劣後債の中間に位置する債券である。

債券価格と市場金利の関係

債券が満期で償還される場合は、額面金額が用いられる。しかし、既発債を購入する場合や満期前に売却する場合には、市場価格での取引となる。取引のタイミングによっては、譲渡損や償還差損につながる可能性もあるため注意が必要だ。

そのため、中途解約や既発債の購入も活用した積極的な債券投資を行うなら、債券価格が変動する要因はぜひ知っておきたい。債券価格はおもに、市場金利の動きを受けて変動する。債券価格と金利の関係を以下で確認しよう。

▽債券価格と市場金利の関係

市場金利債券価格
上がる下がる
下がる上がる
※筆者作成

このように市場金利と債券価格は、反対の動きをする傾向がある。金利が上がると、利率が高い債券が発行されるようになる。そのため、新たに発行される債券の購入を希望する投資家が増える一方で、すでに市場に流通している低い金利の債券は購入希望者が減り、価格が下落する。反対に、金利が下がる局面では新たに発行される債券よりもすでに高い金利で流通している債券に人気が集まり、価格が上昇するのだ。

満期まで保有するつもりで投資をスタートしたとしても、不測の事態によって期間中の売買を余儀なくされるケースもあるだろう。債券投資をするなら、定期的に金利の動向を確認し把握しておくと安心だ。

債券投資のメリット

債券投資には、おもに3つのメリットがある。

収益性

1つめのメリットは安定した収益性だ。債券投資の利益の特徴は、以下のとおりである。

▽債券投資の収益性の特徴
・あらかじめ決まった利息を安定的に得られる
・ローリターンの銘柄が多い

債券は、金利および受け取れる利息額が発行時に決まっている。企業の業績などによって配当金額が上下する株式投資や、ファンドの運用実績で分配金額が決まる投資信託とはその点が大きく異なる。投資から得られる利益があらかじめはっきりしているため、運用計画を立てやすい金融商品だといえるだろう。

金利の大きさは銘柄によるが、たとえば2023年3月募集の固定5年個人向け国債の表面利率は税引前で0.18%であり、他の金融商品と比較すると限定的なものが多い。仕組債など利率が高い債券もあるが、それらは商品内容が複雑だったり、リスクが大きかったりするため、投資は慎重に進めるべきだろう。

安全性

2つめのメリットは安全性が高い点だ。先述のとおり債券は満期が決まっており、満期日には額面金額の返還を受けられる。そのため満期まで保有すれば、元本割れの可能性が少なく安全性が高い。

なお、安全性の高さは債券の発行体の信用力によって変わる。信用力とは、発行体の破綻などにより元本や利息が支払われなくなる可能性の大きさをいう。より安全性が高い債券への投資を希望するなら、信用力が高い発行体が発行する銘柄を選ぼう。

発行体や債券の信用力は、民間の格付け会社が行う格付けによって確認できる。格付けは、元利金の支払い能力や安全性などを総合的に判断し、「AAA」などのアルファベットに「+」や「-」もしくは、「1、2、3」などの数字を組み合わせて表示される。たとえばS&P社では、個別債務の格付け最上位はAAA+、最下位はDである。

外国の代表的な格付け機関としては、先述したアメリカのS&Pやムーディーズ、ヨーロッパのフィッチ・レーティングスが挙げられる。国内では、格付投資情報センター(R&I)や日本格付研究所(JCR)などがある。購入を希望する債券があるなら、いくつかの格付け機関の格付けを比較検討し、手続きを進めよう。

流動性

3つめのメリットは流動性の高さだ。流動性とは、換金のしやすさをいう。債券の流動性は銘柄によっても差があるが、たとえば個人投資家向けの代表的な債券の1つである個人向け国債は発行から1年経過すれば自由に中途換金できると定められており、急な現金化にも対応しやすい。

債券の流動性は一般的に、発行数と信用力、知名度によって上下するといわれる。発行数が多く信用力知名度ともに高い債券は、市場での取引量が多く需要も高いことから流動性が高くなる。一方、発行数や信用力、知名度が低い債券は流動性が低くなるケースが多い。

より安全な債券投資を目指すなら、流動性も確認したうえで商品を選ぶことが重要だ。

債券投資のデメリット

債券投資をするなら、知っておくべきデメリットがある。ここでは、3つのリスクを確認しよう。

価格変動リスク

価格変動リスクとは、債券価格が変動することによって譲渡損益が発生する可能性のことをいう。債券を満期まで保有した場合には、額面金額で返還されるため価格変動リスクはない。債券投資で価格変動リスクを考慮する必要があるのは、中途解約をする場合だ。

先述のとおり、中途解約時は市場価格(時価)での取引となる。中途解約時に市場価格が発行価格よりも下がっていた場合は、売却損が発生する可能性があることは知っておくべきだろう。

価格変動リスクを考える上で知っておきたいのは、投資の損益はトータルリターンで考えるということだ。トータルリターンとは、投資から得た総合利益のことをいう。債券投資なら、受け取った利息と譲渡損益を足したものが、トータルリターンである。

たとえば、10万円で利率が1%の債券を買ったとしよう。運用開始から3年経過後に債券を売却した場合、すでに3,000円の利息を得ているはずだ。そのため、たとえ時価が発行価格より下がっていたとしても、売却価格が9万7,000円以上なら投資による損失は発生していないことになる。

信用リスク

信用リスクとは、倒産や破綻といった発行体の財務状況の悪化により、利息や償還金の支払いができなくなる可能性をいう。発行体が破綻すると、投資資金の回収が難しくなるケースもあるため、できるだけリスクを抑えた債券投資を目指すなら、信用リスクが高く破綻の可能性が低い債券を選ぶことが重要だ。信用リスクの大きさを測るには、企業の決算書や、格付け会社の格付けが主な材料となる。

なお、信用リスクは債券の利率にも影響する。一般的に信用リスクが低い債券は、安定的な運用が期待できるため購入希望者が多く、金利が低く設定される傾向にある。一方、信用リスクが高い債券は、購入者を募るために金利が高く設定されることが多い。債券を選ぶ際には、リスクとリターンのバランスを見極め、投資家のリスク許容度に合った商品を選ぼう。

為替リスク

為替リスクとは、日本と外国の為替相場の変動により、外貨建て資産の価値が変動する可能性のことだ。債券投資では特に、外貨建て債券に投資をしたときに考慮するべきリスクである。

たとえば、1ドル120円のときに1万ドルの外貨建て債券を購入する場合、120万円(120円×1万ドル)の資金が必要だ。この債券を満期まで保有し、1万ドルの返還を受けたとする。この時点で、米ドルベースでは元本割れはしていない。

ここで重要なのは、円に戻すタイミングだ。もし為替相場が1ドル130円になっていたら、130万円(130円×1万ドル)を受け取れるため、為替の変動により10万円の利益を得られることになる。一方、為替相場が1ドル110円になっていた場合には、110万円(110円×1万ドル)しか受け取れない。つまり為替の値動きによって、10万円の損失が出ることになる。

このように外貨建て債券は、為替により資金が大きく増減することがある。リスクを抑えるためには、為替相場の動きや傾向を把握しておこう。なお、外貨建て債券は満期時にすぐに円に戻さなければならないわけではない。為替の状況が悪いなら外貨のまま保有し、円転するタイミングを計るのが有効だ。そのためには、現金化を急ぐ必要のない余裕資金で投資をすることが肝心だ。

債券の種類やメリットデメリットを確認し、投資スタイルや投資方針に合った商品を選ぼう

債券のメリットは、利率や満期日があらかじめ決まっていること、および満期日には額面金額が返還されることだ。満期まで保有する前提ならば元本割れの可能性が低く、計画的な資産運用を目指すことができる。

注意点としては、債券の値動きにより中途換金時に譲渡損失が発生することや、発行体の破綻などにより利息および元本の回収ができなくなることが挙げられる。デメリットを抑えるには、市場金利の動向や発行体の信用力を確認することが重要だ。

一口に債券といっても、公共債や民間債、外債などさまざまな種類がある。また新発債か既発債か、償還順位がどうなっているかによってもリスクリターンの大きさが異なる。

条件のよい債券は早めに売り切れてしまうこともあるため、投資を検討しているならあらかじめ証券外務員資格を持つ専門家に相談しておくと望んだ取引がしやすいだろう。

ZUU onlineでは、そのような専門家に無料で相談を行えるサービスを提供しているので、一度利用してみるのもいいだろう。会員登録は以下のフォームから行える。