仕組債は、一般的な債券に特別な仕組みを組み込んだ債券だ。一般的な債券よりも利率が高く設定されるが、商品内容が複雑でリスクが高く、「やばい」商品だと言われることもある。そこで本記事では、仕組債で気を付けるべき点と上手に付き合うためのポイントを解説する。仕組債の仕組みやメリットデメリットをしっかりと押さえたうえで、運用資産への組入れを検討しよう。

仕組債がやばいと言われる理由

仕組債が「やばい」と言われる理由は? 注意点と投資のポイントを徹底解説
(画像=Mono/stock.adobe.com)

仕組債は、債券の種類の1つだ。一般的に債券は株式や不動産と比較してローリスクローリターンとされるが、特別な仕組みを組み込んだ仕組債は内容が複雑なものが多く、投資が難しいと言われる。ここではまず、仕組債投資が難しいとされる5つの理由を確認しよう。

リスクとリターンの関係が複雑

仕組債が難しいとされる理由の1つめは、リスクとリターンの関係が複雑なことだ。一般的な債券は、リスクとリターンが明確でわかりやすい。仕組債のリスク/リターンを考えるにあたり、まずは一般的な債券の主なリスクとリターンを以下で確認しよう。

▽一般的な債券の主なリスク/リターン

リスクリターン
・価格変動リスク
・信用リスク
・利息

債券の主なリターンは利息だ。利率は発行時に決められるため、運用からどのくらいの利益を得られるかを投資開始時に知ることができる。また、満期まで保有すれば額面金額が償還される仕組みのため、元本割れの可能性が低く運用計画を立てやすい。

リスクとしては、中途換金時に譲渡損失が出る可能性(価格変動リスク)と、発行体の破綻などにより利息および償還金の支払いを受けられなくなる可能性(信用リスク)が挙げられる。

仕組債は上記に加えて、商品によってその他のリスク/リターンが発生する。そのため仕組債を運用するにあたっては、それらのリスク/リターンをあらかじめしっかりと確認することが重要になる。では、仕組債で想定されるリスク/リターンにはどのようなものがあるだろうか。代表的な仕組債であるEB債(他社株転換可能債)およびリンク債(株価指数連動債)を例に見ていこう。

・例1:EB債(他社株転換可能債)

EB債(他社株転換可能債)とは、満期時に償還金が他社株式に転換して支払われる可能性がある債券だ。株式での償還の場合、債券発行体とは別の企業の株で返還されるため「他社株転換可能債」といわれる。EB債のリスク/リターンで知っておくべきポイントは以下のとおりだ。

▽EB債のリスク/リターンで知っておくべきポイント

リスクリターン
・株式での償還の場合、時価換算金額が投資元本を下回る可能性がある・一般的な債券と比較して利率が高い

EB債で押さえておきたいのは、株式で償還された場合、償還時の株価によっては時価換算金額が投資元本を下回る可能性があることだ。

EB債では、定められた株式の価格変動によって償還方法が決定する。価格がノックイン判定水準を下回らなかった場合には額面で現金償還されるため、元本割れはない。一方ノックイン水準を下回った場合には、あらかじめ決められている対象株式と現金調整額により償還される。

なお、償還時に受け取った株式はすぐに売却せずそのまま保有し続けることも可能だ。将来的に株価が下落すれば含み損が発生するが、価格が上昇すれば売却益を得られるケースもある。このようにEB債は、株価の値動きによって最終的なリターンが変わる点が大きな特徴だといえるだろう。

・例2:リンク債(株価指数連動債)

リンク債(株価指数連動債)とは、日経平均株価やS&P500といった株価指数などに連動してリターンが変動する債券だ。連動する指数の値動きによって、償還の時期および償還金額が変わる特徴を持つ。リンク債のリスク/リターンで知っておくべきポイントは以下のとおりだ。

▽リンク債のリスク/リターンで知っておくべきポイント

リスクリターン
・指数の価格変動によっては、額面金額以下での償還になる可能性がある
・早期償還により受け取れる利息が減る可能性がある
・一般的な債券と比較して利率が高い

リンク債は、連動する指数の価格が、あらかじめ設けたノックアウトおよびノックイン判定水準に到達したかどうかで、償還のタイミングおよび償還金額が変わる。指数の価格が判定水準に達しなかった場合には、償還日に額面での償還を受けられる。この場合は投資元本を割り込むことなく、償還までの利息を受け取ることが可能だ。

保有中に指数の価格がノックアウト判定水準を上回ると、償還日前に額面で償還(早期償還)となる。この場合、投資元本を割り込むことなく償還金を得られるが、早期償還のため利息額は少なくなる。

指数の価格がノックイン判定水準を下回ったときには注意が必要だ。その後指数が持ち直して償還時の価格が行使価格を上回れば、額面で償還されるため損失は発生しない。しかし、償還日の指数の価格が行使価格を下回った場合、償還価格は額面以下となり損失が発生する。これが、リンク債特有のリスクである。

リンク債への投資を検討しているなら、連動する指数の値動きの傾向や今後の動向についてあらかじめある程度把握しておくことが重要だ。

一部の商品はリスク/リターン比が悪い

仕組債が難しいとされる理由の2つめは、一部商品でリスク/リターンの比率が悪い点だ。仕組債は先述のEB債やリンク債のように価格変動により償還条件や利息額が変わるため、想定されるリターンに対しリスクが大きくなるケースがある。

仕組債投資を納得いくものにするには、購入前に商品内容を事前にしっかりと確認し、シミュレーションをしておくことが重要だ。値動きによって運用結果がどう変わるのか、損失が出るのはどのようなケースかなどをしっかり理解したうえで投資判断をしよう。

手数料が高額なことが多い

手数料が高額な商品が多いのも、仕組債投資が難しいとされる理由の1つである。債券投資では通常、購入時に手数料を別途支払うことはない。しかし実際には、購入価格に含まれる形で手数料の徴収が行われている。

仕組債は、複雑な仕組みの金融商品だ。そのため、一般的な債券よりも組成や運用にかかるコストがかさみ、そのぶん手数料も高い。金融庁が作成した「資産運用業高度化プログレスレポート2022」によると、EB債の手数料は投資元本に対し平均5〜6%程度と推察されている(参考:https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220527/20220527.html)。

手数料が高い金融商品は、リターンを生み出すまでにより多くの利益が必要になる。そのため手数料が低い商品を選ぶことは、運用を成功させるうえでとても重要だ。仕組債の手数料は明記されていないものも多いが、投資をするにあたっては常に意識しておきたい。

適切な商品説明なしで売られる場合がある

適切な商品説明なしで販売が行われるケースがあるのも、仕組債投資を難しくさせる要因の1つだ。

値動きがある金融商品の販売時には、投資家の投資経験や年齢などに合わせて商品説明や重要事項の解説を行うこととされている。特に仕組債は商品内容が複雑なため、本来であればしっかりと時間をかけて商品説明が行われるべきだ。しかし実際には、十分な説明がされないまま販売されているケースも少なくない。

商品への理解が不足したまま投資をスタートすると、発生した損失が想定外のものになる可能性もある。納得がいく仕組債投資をするには、不明点や不安を解消したうえで申し込みをすることが何よりも重要だ。

個人向け商品としてはロットが大きい

仕組債投資が難しいとされる理由の5つ目は、ロットの大きさだ。仕組債の最低投資額は一般的に、数千万円以上に設定される。個人向け国債は1万円、株式投資は数万円、投資信託は100円から投資が可能なことを考えると、多額の資金が必要な金融商品であることがわかるだろう。

ハイリスクハイリターンの金融商品である仕組債への投資は、仮に損失が発生しても許容できる範囲の余裕資金で行うことが肝心だ。購入のために本来別のことに使う予定だったお金にまで手を出してしまうと、損失が発生したときに将来の資産形成に大きな影響を及ぼす可能性もある。

仕組債投資を希望するならまず、資金状況や将来のマネープランを確認し余裕資金がどのくらい用意できるかを確認することが重要だ。予算内で余裕を持った投資をすることで、無理のない資産運用を目指そう。

仕組債トラブルに関する金融庁の対策

仕組債に関するトラブルが多数報告されていることから、金融庁は金融機関に対し、顧客の資産形成に資する商品組成・販売・管理等を行う態勢が構築されているかをモニタリングするといった対策を示している(参考:2022事務年度 金融行政方針)。

高い手数料が設定される仕組債は、これまで多くの金融機関で積極的に販売が行われており、ニーズの合わない投資家に販売されるケースも少なくなかったようだ。金融庁がモニタリングを行い金融機関に改善を促すことで、今後は顧客本位の販売が行われるようになることが期待される。

仕組債と上手に付き合うために

一般的な債券よりも商品内容が複雑でリスクが高い仕組債だが、上手に付き合うことで高い利息を得られるメリットもある。最後に、仕組債を有効に資産運用に取り入れるためのポイントを確認しよう。

事前に償還条件などを確認する

ポイントの1つめは、償還条件や利率などを事前にしっかり確認することだ。ここまで解説してきたとおり、一口に仕組債といっても償還の条件やリスク/リターンの大きさはそれぞれ異なる。商品内容に少しでも不明点があるなら、申し込みは見送るべきだ。商品の仕様をしっかりと確認し、納得できたと感じた場合にのみ購入すべきだろう。

他の商品にも分散投資を行う

ポイントの2つめは、余裕資産のすべてを仕組債に投資しないことだ。一般的に資産運用では、資産を複数の銘柄に分けて投資する「分散投資」がリスク軽減に有効とされる。複数の資産に分けて投資することで、値下がりなどで資産が減るリスクを分散できるからだ。仕組債投資をする際にも、ぜひ分散投資は念頭に置いておいて欲しい。

EB債の代わりに個別株も検討する

EB債への投資を考えているなら、転換先の個別株に直接投資することも併せて検討してみよう。先述のとおりEB債は、満期時に償還金が他社株式に転換して支払われる可能性がある債券だ。運用資産に株式を組み入れてもよいと考えているなら、EB債ではなく個別株への投資も選択肢となるだろう。EB債と株式投資の主な相違点は、以下のとおりだ。

▽EB債と株式投資の主な相違点

EB債株式
インカムゲイン(保有中に受け取れる利益)利息配当金
満期あるない
株式を購入する時期債券発行時に決められた条件によるいつでも
株式の購入価格時価
※筆者作成

EB債では、現金と株式のどちらで償還されるかが未定の状態で運用がスタートする。また、株式で償還されたとしても、償還で採用される価格は債券発行時に決められた条件によって異なる。一方、個別銘柄なら株価の動きを見ながら投資家の好きなタイミングで購入をすることが可能だ。

EB債への投資を検討しているなら、より自由な投資判断が可能な個別株への投資と比較検討してもよいだろう。

仕組債はハイリスクハイリターン。納得のいく運用をするには仕組みと発行条件をしっかり確認しよう

仕組債は、一般的な債券に特別な仕組みを組み込んだ債券である。仕組債のメリットは、一般的な債券よりも高い利率が付与されている点だ。デメリットには、手数料が高い点や最低投資額が大きい点、商品内容が複雑でわかりづらい点などが挙げられる。

仕組債は商品内容の複雑さから、トラブルになりやすい金融商品の1つである。投資をするには償還条件や満期、利率などをあらかじめしっかりと確認し、納得したうえで購入手続きを進めよう。また、仮に損失が発生しても許容できる、使い道がない余裕資金を充てることも重要なポイントだ。

ハイリスクハイリターンの仕組債投資では、運用状況によっては想定以上の損失が発生する場合もある。そのため、投資資産のすべてを仕組債に投資するのは賢明とは言えない。仕組債に投資するなら、他の金融商品と組み合わせた分散投資の1つとして活用しよう。

リスクを承知したうえで仕組債をポートフォリオに組み入れたい場合や、過去によくわからないまま購入してしまった仕組債を見直したい場合には、自分ひとりで判断するよりもプロの意見を取り入れるのがおすすめだ。ZUU onlineでは、完全無料で資産アドバイザーに相談を行えるサービスを提供しているので、利用を検討してみよう。登録は以下のフォームから行える。