東急<9005>傘下の東急電鉄は2023年3月18日に、新横浜線(新横浜駅-日吉駅の5.8キロメートル)を開業。同日開業する相模鉄道の新横浜線(羽沢横浜国大駅-新横浜駅の4.2キロメートル)と新横浜駅でつなぎ相互直通運転を行う。
これによって鉄道の広域ネットワークが形成され、新幹線のアクセスの向上や沿線地域の活性化などによる業績へのプラス効果が見込まれる。
東急電鉄は関東の私鉄で輸送人員が最も多く、2位の東武鉄道<9001>とは年間1億人以上の差がある。両社はともに鉄道だけでなく、不動産やレジャー事業を展開しており、コロナ禍からの回復途上にある。
2023年3月期はそろって増収増益を見込むが、営業利益では伸び率の大きい東武鉄道が東急を逆転する見込みだ。両社の業績予想を見てみると…。
営業利益が2倍に
東武鉄道は2023年3月期の業績予想を2月に上方修正した。売上高は当初予想よりも150億円多い6070億円(前年度比19.9%増)、本業の儲けを示す営業利益は90億円多い500億円(同2.02倍)と大きく伸びる。
予約管理などの後方業務や会場の設営、感染防止対策などの事業が大きく伸びたことや、入国制限緩和に伴う訪日客の増加、さらには全国旅行支援の後押しなどにより、ホテル業の客室単価や鉄道業の行楽需要が回復したのが要因だ。
一方の東急は2023年3月期の業績を2月に見直し、売上高を前回予想から0.9%引き下げ9288億円(前年度比5.7%増)に修正した。ただ利益は据え置いており、営業利益は400億と前年度比26.8%の増益を見込む。
2023年3月期第3四半期時点の状況を見ると、東急電鉄の輸送人員が行動制限の緩和などに伴い9.7%増加したほか、ホテル、リゾート事業でも国内の行動制限や海外からの入国者制限などが緩和されたことから利用者数が増え、稼働率が前年同期よりも26.6ポイント改善した。
こうした状況を踏まえ20%を超える増益を見込んでいるものの、東武鉄道が2倍を超える増益を達成する見込みのため、営業利益で100億円の差をつけられることになった。
東急では新横浜駅付近には大規模な集客施設が複数あり、新幹線とのアクセスも可能なことから、「沿線の住民だけでなく都心部や関西、中京方面からも多くの来客が期待できる」としている。新横浜線の開業は営業利益再逆転の起爆剤になるだろうか。
【東急、東武鉄道の売上高と営業損益の推移】2023年3月期は予想
文:M&A Online編集部