本記事は、荒木俊哉氏の著書『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。
言語化のための隠れた「3つ目のステップ」
ここまで繰り返しお話ししてきた「言語化」という言葉ですが、モヤモヤとした「思いや意見」を単純に言葉にすることか?と言われると、ちょっと違う気がしています。
そもそも、あなたが言語化力を磨きたい目的とは何でしょうか?
ビジネスの会議やプレゼンの場で、もしくは、企画書などの資料を書く際に、あなたの中にある「思いや意見」をちゃんと言えるようにしたい。ちゃんと伝えられるようになりたい。そんな気持ちがあるからだと思います。その目的を叶える手段として言語化があるわけです。
ならば、相手に伝わる言葉でないと意味がない。言語化をもう少し丁寧に定義すると「自分が感じたことを、相手が理解・共有できる言葉で表現すること」だと私は考えます。だからこそ言語化力を磨けば、あなたが感じたことを相手にブレなく伝えることができるようになります。それは、絵やイラスト、身振り手振りで伝えるよりも、言葉が得意とする領域だからです。
実はこのお話は、「what to say」と「how to say」の話ともつながっています。「どう言うか(how to say)」より「何を言うか(what to say)」が大事であるというお話をさせていただきました。その点についてはもちろん変わりはありません。
ですが、「何を言うか(what to say)」が自分の中で整理されたあとに、それを「どう言うか(how to say)」を工夫することで、あなたの「思いや意見」がより相手に共有・理解されるようになるはずです。
ここでいったん、ご紹介してきた「思いや意見」の言語化をあらためて整理してみたいと思います。すると、このような3つのステップで構成されることがわかります(図表11)。
ステップ(1)とステップ(2)については、「言語化力トレーニング」でやってきたこと、そのものです。あなたが自分の経験を通じて「感じたこと」、すなわち、あなただけの「思いや意見」を言葉にして整理する方法はすでに学んでいます。
あとはステップ(3)で、あなたの中で整理された「思いや意見」をいかに相手に伝わる言葉で表現できるか。その部分さえ磨くことができれば、あなたの言語化力はさらに向上していくでしょう。
ただし、ステップ(3)のテーマである「『経験』の伝わる言葉化」がうまくできなくても、そこまで大きな問題ではないと個人的に考えています。たとえば、会議やプレゼンなどの場を思い出してみてください。発言者の言葉がたとえ詰まりながらのつたない言葉だったとしても、きちんと中身のある発言であれば、相手の「思いや意見」はしっかり伝わってきますよね? 大事なのは、そこに発言者自身の思いや意見がしっかり存在していること。それが伝わりやすい言葉になっているかは、あくまでプラスアルファの話だと思うからです。
ですが、ステップ(3)の「『経験』の伝わる言葉化」についても、せっかくの機会ですので少しだけ一緒にトレーニングしてみましょう。
できるようになればなおよし、という内容ですので、あまり肩肘を張らずに気楽な気持ちで取り組んでもらえたら嬉しいです。
一橋大学卒業後、2005年に株式会社電通に入社。営業局の配属を経てクリエーティブ局へ。その後は、コピーライターとしてさまざまな商品・企業・団体のブランディングに従事。これまで手掛けたプロジェクトの数は100以上、活動は5大陸20か国以上にのぼる。
世界三大広告賞のうちCannes LionsとThe One Showのダブル入賞をはじめ、ACC賞、TCC新人賞、NIKKEI ADVERTISING アワード、YOMIURI ADVERTISING アワード、MAINICHI ADVERTISEMENT DESIGN アワードなど、国内外で20以上のアワードを獲得。
広告以外にも、国際的ビッグイベントのコンセプトプランニングや、スタートアップ企業のビジョン・ミッション・バリュー策定のサポートも行う。また、毎年一橋大学でコピーライティングやアイデア発想のゼミも開講している。
コピーライターとしての長年の経験を通して「どう伝えるか」の前に「何を伝えるか」こそが大切だと感じるようになり、本書を執筆。本書が初の著書になる。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます