日本では長らく超低金利、マイナス金利状態が続いてきたため、「銀行に預金していても利子はつかない」というのが半ば常識のようになっています。その一方で欧米をはじめとする諸外国ではインフレが進行しており、それを抑制するための政策金利引き上げが続いています。

その結果として日本との金利差が拡大し、それが円安の原因になっていることはニュース報道などで見聞きした人も多いことと思います。それもあって、「外貨預金は高金利」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。

しかし2023年1月13日、7年7ヵ月ぶりに日本の長期金利(10年物国債)が0.5%を突破しました。日銀がYCC(イールドカーブコントロール)によって0.5%以内に抑えるようにオペレーションをしていますが、それを突破した形です。日本の国債に何が起きていて、今後金利は上昇するのか、そして金利が上昇したら何が起きるのかを解説します。

日本国債に起きた7年7ヵ月ぶりの「事件」

いよいよ日本も超低金利が終了?「長期金利0.5%突破」が意味すること
(画像=cassis/stock.adobe.com)

2023年1月13日、日本の10年物国債(長期金利の代表格)で利回りが0.545%となり、一時的ではありますが日銀が設定しているYCCの上限を超えました。投機筋が日銀に上限突破を挑んでおり、日銀もそれに応戦している状況で、このようなことが起きました。

このままの状況が続くと、日銀は再びYCCの上限を引き上げ(つまり実質的な利上げ)に踏み切るのではないかとも指摘されています。折しも2023年4月には日銀総裁が植田氏に代わるため、これまでの「黒田路線」との変更があるのではないかと囁かれているわけです。日本もいよいよ超低金利時代が終わりを迎えるかもしれません。

すでにジワジワと金利が上昇し始めている

10年物国債の利回りは、長期金利の指標となっています。そのため、10年物国債利回りを参照している各種の金利がジワジワと上昇し始めています。

長期プライムレート(銀行が企業に1年超えの資金を貸し付ける際の金利)も10年物国債利回りと連動しているため、銀行が企業に貸し付ける金利も上昇することになります。個人レベルで影響が大きいと考えられるものに、住宅ローンがあります。変動型金利の住宅ローンを返済中の場合、適用される金利が上昇する可能性があります。

その一方で一部のネット銀行などでは預金金利を高く設定する事例があります。「借りる」と「預ける」の両方で金利の上昇が起きており、これまで長く続いてきた環境が大きく変わりつつあります。

金利上昇で考えられる資金シフト

金利が上昇すると、投資マネーなどの資金にもさまざまな動きが起きます。一般的にいわれているのは、株式などのリスク資産から預金や債券といった安全資産へのシフトです。株式は値上がり益などの高いリターンが魅力ですが、その一方で株価が大幅に下落したり、経営破綻によって紙切れ同然になってしまったりすることもあるため、ハイリスクな側面があります。

しかし金利が上昇すればリスクを取らなくても安全に高い利回りを得ることができるため、リスク資産には不利になるわけです。そのため、今後は預金増と株安の傾向が見られるかもしれません。

また、各国間の資金移動においても、いわゆる高金利通貨には不利になります。高金利通貨は新興国通貨が多いため、利回りが高い一方でリスクも高いと見なされています。米国や欧州などの先進国が利上げをすると新興国通貨で運用する必要性が薄れ、安全性の高い通貨への資金移動が起きやすくなります。

もちろん日本も例外ではなく、これまで「金利は低いものの安全資産」と見なされてきた日本円も金利が上昇すれば買われやすくなり、円高の地合いになる可能性があります。

金利上昇の時代におすすめの「攻め」と「守り」

今後さらに進むことが確実視されている金利上昇に向けて、今のうちから備えるには、どうすればよいのでしょうか。ここでは「攻め」と「守り」それぞれの視点における考え方を解説します。

最初に、「攻め」です。金利が上昇するのであれば、債券などへの投資が有利になります。日本の国債は個人向け国債として売り出されているため、個人も簡単に購入することができます。

2023年3月19日時点で売り出されている個人向け国債のうち、長期金利への反応性が高い「変動10」の表面利率は0.33%です。

かつて同じ国債の利回りは長らく0.05%でしたが、今やそれが6倍以上になっています。それでもまだまだ金利は「雀の涙」といえる水準ですが、実質的な元本保証の個人向け国債で0.33%の金利が提示されていることは、これまでの超低金利時代では考えられなかったことです。

しかも個人向け国債を証券会社などから購入するとポイントが付与されたり、キャッシュバックなどの特典が得られたりする場合があるので、より有利に投資をすることができます。

もう一方の「守り」については、金利が上昇するリスクに備える必要があります。お金を借りる際の金利が高くなるので、特に変動金利型の住宅ローンを返済中の人は、固定金利型に借り換えるか繰上げ返済などで対応するのが有効です。これから不動産を購入する予定の人は、できるだけ借り入れ分を減らすことが有効な戦略です。

自己資金を多めに用意する、購入する物件の価格帯を低くするなどの方法で借入金を少なくすることで、金利上昇の影響を低く抑えられます。

金利上昇の時代に「攻め」と「守り」で備えよう

金利上昇やインフレは、長らく日本人が経験してこなかったことです。「失われた30年」と評されるバブル崩壊後の30年間はデフレが続いていたため、あらゆるモノの価格が安くなり、金利もほとんどつかないことが当たり前でした。

「失われた30年」というくらいなので、現在30歳前後の人はその前の日本経済を全く知らない世代です。金利や物価が上昇する世界に対する耐性がほとんどないといえるため、「攻め」と「守り」をしっかり理解した上での対応が重要になります。

預金金利が上昇すると預金(現金)が有利になるとはいえ、まだまだ諸外国のようなレベルではありません。その一方でインフレは進行しているため、これからは現金の実質的な価値が目減りしていきます。

2023年1月に総務省が発表した東京都区部の消費者物価指数(2022年12月)では、40年ぶりに4%台の上昇となりました。「東京は物価が高い」というのは常識的に語られていることですが、それが国のデータからも明らかになった形です。

物価が4%上昇するということは、現金の価値が4%下落することを意味します。100万円の預金を持ったままにしていると、実質的に96万円の価値しかもたなくなってしまいます。これが「インフレに備えない」ことで考えられるリスクです。

これからはリスクの許容度を考慮しつつ、現金だけで資産を保有せず投資にも目を向けることがますます重要になります。株や債券、不動産にも目を向けるなど、資産に多様性を持たせることがリスクを軽減し、長期的な資産形成につながります。

金利上昇の時代であっても、そうでなくても、お金の管理には「攻め」と「守り」のバランスが大切です。

(提供:Incomepress



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