中小企業の人材育成の成功事例

続いては、中小企業の人材育成の成功事例を「中小企業白書(2022年版)」より2つ紹介する。

社長面談や独自の社内研修でコロナショックから急回復

宮崎県にある従業員数26名の株式会社ワン・ステップは、イベント事業を営む中小企業だ。

従業員に学びの機会を与えることが会社としての成長にもつながるという方針である。社長自ら従業員と面談し、各従業員の3~5年後を見据えて研修テーマを決め、年1回以上の社外研修の機会を提供している。コロナ禍ではオンライン研修も活用した。

また、毎月40分の独自の社内研修では、仕事に関する書籍を各自が読み、グループに分かれて感想や学んだことなどを発表し、ディスカッションをしている。研修は、インプットとアウトプットの習慣化や、コミュニケーション能力の向上に役立っているという。

その結果、イベント事業というコロナ禍の影響を受けやすい事業内容にもかかわらず、売上高を急回復させることができた。

社内講座とYouTubeチャンネルで従業員の満足度向上や売上拡大に貢献

奈良県にある従業員数80名のヒカリ株式会社は、長い社歴を持つワイヤ製造が専門の中小企業だ。

2018年に「ヒカリものづくり大学」という社内講座を開講し、ものづくりの基礎やエクセル技術など、15の講座を提供している。テーマは社員からアンケートを取って決めており、将来的には講座の受講を人事考課に反映させていく予定だ。

講座を開いたことで、社員から「自分のやっている仕事の意味がようやく分かった」といったポジティブな感想も得られたという。さらに、2020年からはYouTubeチャンネルも開始し、YouTubeからの新規問い合わせも増えてきており、売上拡大にもつながった。

人材育成を考える中小企業が活用したい助成金

続いては、人材育成を考える中小企業が活用できる助成金や補助金を紹介する。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用の労働者の処遇改善を行った際に受け取れる助成金だ。たとえば、中小企業が有期雇用労働者を正社員化し、要件を満たすと1人あたり57万円が支給される。正社員化のほかにも、賃金規定の改定、賞与退職金制度導入、労働時間延長などいくつかのコースがある。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、職務に関連する知識や技能を習得させる取り組みにかかる費用が助成される仕組みだ。特定訓練、一般訓練、育成訓練休暇等付与、障害者職業能力開発など9つのコースが用意されている。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、中小企業の業務効率化等の取り組みにかかる経費を助成する仕組みだ。通常枠を含む5つの枠が用意されており、たとえば賃金引上げ枠なら補助上限は200万円だ。