総括
FX「建国100年選挙。リラ、株、長期債売られる。軍の動きにも注意したい」トルコリラ見通し
(通貨11位、株価20位)
予想レンジ トルコリラ/円6.4-7.4
(ポイント)
*選挙後の軍の動きにも注意したい
*選挙前は株安、長期金利上昇
*リラ円は安定、ドルリラは上昇(リラ安)
*大統領選は混沌
*エルドアン大統領が勝てば金利低下、株も持ちなおすか
*野党が勝てば強権的な金融政策から市場原理的なものへ戻る
*4月の消費者物価は50%割れ
*米国がF16売却か
*リラも株価も弱い2023年
*地震でも世銀が成長率見通しを上方修正
*貿易・経常赤字は続く。これが主たるリラ安要因
*リラ安防衛策はリラ預金増に繋がるがリラ安を抑えきれない
*国内預金が外貨預金を上回る=リラ化政策で
*今年は建国100周年
(株安、長期金利上昇は野党の勝利を見込んでいるのだろうか)
エルドアン大統領の強権政治か野党クロチダルオール氏の民主政治のいずれかを選択することで金融政策も大きく違ってくるので市場にも不安感が漂っている。
株安、長期金利上昇は野党の勝利を見込んでいるのだろうか。野党が政権をとると市場原理に沿ったオーソドックスなインフレ抑制政策をとる。金利は上昇、株価は下落か。リラも上昇するが、貿易赤字のリラ売りは継続しリラ高を抑制する。
エルドアン大統領なら金利低下、株高だが、市場原理から外れるので海外からの信頼は得にくい。
選挙前1か月の動きはリラ円6.9あたりで安定推移(リラも弱いが円も弱い)。
対ドルでは19.30から19.50へリラのじり安。株価指数(イスタンブール100)は5100から4400へ低下、長期金利は10%台から一時13%台へ上昇、現在は12%後半
(軍や警察はどう動くか)
トルコ軍は歴史的にも、また現在においても極めて政治的な行動をとる軍隊である。
2016年のクーデター未遂事件は記憶に新しいが、1960年、1980年と軍は2度のクーデターを起こしており、政治に介入している。1997年に軍はイスラム派の福祉党主導の連立政権を崩壊に追い込んだ。2007年はAKP副党首の大統領選出に懸念を表明した。最近は、軍はエルドアン大統領の指揮権の下で平静だが、政局が混乱すると再び台頭してくる可能性もある。
(世論調査)
イスタンブール経済研究所の4月時点の世論調査によると、野党候補のクルチダルオール氏が41%、エルドアン大統領が39%と拮抗していた。過半数を得る候補者がいなければ、5月28日に上位2人による決選投票が行われる。海外での投票も前回より増加、また野党が選挙監視に50万人を動員する見込みであり緊張感が高まっている。どちらが勝利しようと、結果を受け入れず混乱に陥る可能性もありそうだ。ただ既に選挙妨害もいくつか起きており、選挙の行く末、また選挙後の混乱もあるだろう。
(4月の消費者物価は50%割れ)
ネバティ財務相が事前に示唆していた通り、4月の消費者物価は50%割れとなった。
4月の消費者物価は前年比上昇率が43.68%で前月の50.51%から低下した。項目別では、前年比で最も上昇したのがヘルス部門の66.62%、次いでレストラン・ホテルの66.41%、食品・非アルコール飲料が53.92%と続いた。
(貿易収支は赤字継続、リラ安の要因)
4月貿易収支は88.5億ドルの赤字で、赤字傾向は変わらない。4月製造業PMIは51.5で前月の50.9から上昇。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
狭いボリバン内で推移
日足、大きく動かないのでボリバン狭い。現在は6.823-6.978(2σ)。雲の下。4月27日-8日の上昇ラインがサポート。5月2日-8日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、ボリバン2σ下限から反発も中位越えられず。4月3日週-10日週の上昇ラインがサポート。3月13日週-5月1日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向き、20週線下向き。
月足、22年11月-12月の下降ラインを上抜く。23年1月-3月の上昇ラインがサポート。21年3月-9月の下降ラインが上値抵抗。
年足、8年連続陰線。その間52円から6円台へ沈む。今年は僅かに陽転していたが3月陰転。
メルハバ
選挙は荒れている
・5月7日に東部エルズルム州で開催された集会中に、国民同盟の副大統領候補でありイスタンブール市長のイマモールの選挙バスをグループが石で攻撃し、集会に参加していた人々の一部が負傷した
・PKK テロリストの支持者は、5月8日の日曜日にオランダの首都アムステルダムの投票所で有権者を攻撃した
(写真は170万の聴衆を集めたエルドアン大統領のイスタンブールでの演説)