ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「日本の貿易赤字縮小するか、米債利払いは。日本の消費者物価にも注目」

ドル円=133-138、ユーロ円=145-150、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円
 円は総合で年間では10位と弱いままだが、5月に限れば前半を終えて月間2位と底堅い。クロス円の下落が効いている。ドル円はGW明けのドル需要で先週はやや戻した。今週は1-3月期のGDP、4月貿易統計、4月消費者物価の発表がある。GDPは前期比年率+0.5%の予想で、2四半期連続のプラス成長の予想。米欧景気の減速で輸出が減少した一方、旅行需要の回復や自動車の供給制約の緩和が個人消費を下支えした。上場企業の2023年3月期決算は純利益が過去最高水準になる見通しだ。ファンダメンタルズは悪くはない。

 需給では今週は米債償還と利払いがある。生保の運用計画だと償還玉を積極的には再投資しないようだ。過去の5月中旬以降の週では円高になる傾向があった。金融政策ではG7財務相・中銀総裁会議でも日銀植田総裁は消費者物価の鈍化見込みから金融緩和の継続を主張した。今週の4月消費者物価も注目だ。
 4月貿易統計は約6000億円の赤字予想。現在20か月連続で前年同月で赤字拡大となっているが4月は前年の赤字7545億円より縮小する予想。輸入の伸び幅減少で5月以降は赤字幅が縮小するだろうが、黒字転換しないと確固たる円高傾向には力不足だ。

*米ドル「通貨5位(7位)、株価(NYダウ)17位(16位)、市場に理解されない共和党の債務上限案」
 ドルは先週は2位、今月はここまで5位、年間でも5位と最強ではないが弱くもない。債務上限問題が議論されているが、米国のGDP比の財政赤字は122%、小さくはないが、日本の261%、イタリアの145%、シンガポールの134%と比べる小さく、100%以上ではスペイン、英国、フランス、カナダなどもそうだ。これでデフォルトというのは、市場的にも理解されていない。米株もナスダックが年初来17.37%高、S&Pが7.41%高、ダウがやや弱いが0.46%高で、市場が大騒ぎしているわけでもない。

 アトランタ連銀のGDPナウは2.7%、CNNの恐怖と欲望指数ではリスク選好の58とまずまずだ。市場が特に悲観しているわけでもない。債務上限問題を採用しているのは米国だけで、コロナ禍での財政出動やトランプ政権での赤字増もある。上限が引き上げられるか、拒否されてある程度の混乱が起きてから共和党が批判され、新しい財政健全化制度が設立されるかのどちらかで、時間が経てば米国は元通りになるだろう。

 6月FOMCのフェッドウオッチでは利上げ停止観測が強い。インフレも概ね低下傾向にある。インフレ抑制に成功すると見るなら金利は低下しても米国経済は買いだろう。今週も債務上限で紆余曲折あるが、インフレ関連指標はない。パウエル議長を始めとするFRB要人の発言は多い。 

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価3位(3位)DAX)、経済指標悪化、テクニカルで急落」
 ユーロは年間では4位と上位にいるが、今月は10位とやや弱い。ボリバン上限で推移してきたユーロドルが団子天井から下落し一気に3σ下限へ下落した。ドルと連れ高、連れ安にもなる特異な円の動きと違って。ユーロはドルの動きと素直に反応する通貨だ。先週の下落はテクニカルとともにユーロ圏の3月小売売上の悪化(前年比3.8%減、前月は2.4%減)、独の3月鉱工業生産悪化(前月比3.4%減、前月は2.1%増)があった。

 独の4月消費者物価は前年比7.2%上昇でゆっくりと低下している。今週はユーロ圏の4月消費者物価の確定値の発表がある。ECB当局者の多くは、インフレ低下も目標の2%から大きく乖離しているため、今後も利上げ継続を示唆している。ナーゲル独連銀総裁は、現在のインフレの波を確実に終わらせる必要があるため、今月決定した利上げが最後にはならないだろうと述べた。 現在のデータはECBが追加利上げの必要性について考えを改めるべきとは示していないとした。

 一方、デコス・スペイン中銀総裁は、ECBは利上げサイクルの最終段階に近づいていると述べた。 デコス総裁は「利上げサイクル開始当初は十分な金融環境があった。現在は金融条件が引き締まったことで、一段の利上げの必要性は明らかになくなり、サイクルは終わりに近づいている」と述べた。ただ、ユーロ圏消費者の3月のインフレ期待が昨年10月以来初めて上昇した。
1年先の期待インフレ率は前月の4.6%から5.0%に上昇し、3年先も2.4%から2.9%に大幅上昇した。インフレの高止まりに歯止めをかけようとしているECBにとって好ましくない傾向だ。

*ポンド「通貨3位(2位)、株価13位(12位)、英国はG7で最も苦しい生活か」
 上昇を続けていたポンドも先週は対ドルで1.26台から1.24台、対円で171円台から168円台へ反落した。さて英中銀は、政策金利を4.25%から4.5%に引き上げた。12回連続の利上げで政策金利は2008年以来の高水準となった。 ベイリー総裁は、「インフレ率の2%目標回帰に向けて最後までやり遂げる」と述べるとともに、次の動きについていかなるシグナルも発しておらず、データ次第であることを強調した。

インフレ率の低下は予想より遅いとし、予想外に大幅で持続的な食品価格の上昇が主因とした。 エネルギー価格は現在大幅に下落しており、中銀は3月に10.1%だったインフレ率が年末までに5.1%に低下すると予想している。ただ成長は弱い。1QのGDPは前期比0.1%増加し、一時予想されていた浅いリセッションは回避した。ただ3月は予想外のマイナス成長となり、回復の脆弱さを示した。

最新の「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」週間調査によると、物価上昇率が賃上げペースを上回る度合いが、英国はG7で最も大きくなりそうとのことだ。英国民が危機感を覚え、その多くがスト入りする状況もさほど不思議ではない。英政府統計局(ONS)によれば、物価変動調整後の実質賃金は3%余り減少している。光熱費や食料雑貨といった必需品は、3月の消費者物価の前年同月比上昇率(10.1%)より急ピッチで値上がりし、ディスカウントスーパーやフードバンクの利用を促す一方、既に約30年ぶりの広がりを見せる労働争議をさらに勢いづけた。 

*豪ドル「通貨9位(9位)、株価15位(154位)、RBAタカ派姿勢で上げるも、中国景気減速で下げ。今週は賃金と雇用」
 5月2日の予想外の政策金利0.25%引き上げで上昇した豪ドル(対ドル)もボリバン2σ上限から反落、中位を割り込み雲の下に下落した。RBAが四半期金融政策報告で、生産性の低さ、エネルギー価格の上昇、人口増加に伴う家賃の高騰を踏まえインフレリスクは上向きと指摘した影響も剥げ落ちた。それよりも中国製造業などPMIの悪化や中国の輸入の減少が豪経済に影響するとされ豪ドルが売られた。中国は豪の最大の貿易相手国で輸出の39%、輸入の28%を占める(21年)。

 今週は次のRBAの金融政策を占う二つの経済指標の発表がある。1Qの賃金指数と4月雇用統計だ。賃金指数は3.6%の上昇予想で、RBAの目安の3%を上回る。雇用統計は3.5%の失業率、新規雇用は2.5万人増の予想。RBAロウ総裁は「経済の余剰生産能力が限られ、失業率が歴史的低水準にある状況を踏まえ、持続的高インフレの期待が、物価と賃金の一層大幅な上昇の一因となるリスクを引き続き警戒している」と発言している。

*NZドル「通貨8位(8位)、株価13位(14位)、リセッション懸念と高インフレで企業信頼感も弱い」
 ほぼ豪ドルとパラレルに動いている。NZも中国の貿易依存度が高い。隣国の豪より中国に依存しているので、中国の4月PMIの悪化や中国の輸入の減少=内需の弱さで、NZドル売りに波及した。
焦点は5月24日の政策金利決定。予想は0.25%引き上げて5.5%とする見方が多い。1Qの消費者物価上昇率は前年比6.7%と、予想を下回ったが、昨年付けた記録的高水準になお近く、項目別でも食品から住宅建設に至るまで幅広く価格が上昇した。オア総裁はインフレを抑制するために浅いリセッションを引き起こす必要性を認めている。リセッションと高インフレの苦しい立場にある。

 4月の製造業パフォーマンス指数(PMI)は49.1と景況悪化が続いたが、前月から1ポイント改善した。
また、最新の企業信頼感調査ではNZ企業の悲観論が明らかになった。経営者の68%は、経済の現状は、悪化しているか、非常に悪化しているとした。半数以上 (54.5%) が、景気が今後12か月で悪化すると予想しており、改善すると予想しているのは14%のみ。困難な時期が当面続くことを示しているとオークランド商工会議所が発表した。NZのビジネス信頼度について尋ねたところ、70% が非常に低い、またはやや低いと評価した。この自信の欠如は、事業主の自身の事業に対する態度に反映されており、懸念される39%が、今後1年間に成長する自分の能力にほとんどまたはまったく自信を持っていないとした。現在の経済情勢の中で、NZの企業が重大な課題と格闘し続けている。信頼感は低下しており、コストの引き上げが圧力を高めている。