先週は注目の4月の米国消費者物価指数(CPI.)の発表があり、CPI.は前月の+5.0%から+
4.9%へと10ヶ月連続で下落し、また食品・エネルギーを除くコア・CPI.も前月の+5.6%から+5.5%へと下落してFRB.による利上げ打ち止め感を加速するのに十分な数字であった。
米国10年債利回りは3.5%台から3.3%台へと下落してドル・円相場も133.75まで連れ安となったが、金曜日に発表になったミシガン大学消費者調査で長期期待インフレ率が3.2%と市場予想(2.9%)を上回り、前月(3.0%)から加速したことを受けて一気に利上げ期待感が再浮上して10年債利回りは再び3.5%台近くまで上昇してドル・円相場も135.74まで買い上げられた。
何と市場の移り気なことか?
移り気と言えば、インフレ懸念でラガルド総裁が口を酸っぱくして利上げ継続を繰り返しているユーロは1.10台のミドルから一転して下げに転じて金曜日は1.0850を割って引けた。
更なる金利上昇が見込まれるユーロが売られて、金利のピーク感が漂うドルが買われると言う面白い現象が起きている。
この背景には市場のポジションの傾きが考えられる。
シカゴ・IMM.は執拗にユーロの買いポジションを保持しており(5月9日時点でネットで約18万枚のユーロの買い持ち(凡そ22億5千万ユーロ))、1.10を大きく上切らなかったことを見てのユーロの失望売りが出ても不思議ではない。
(過去50週のシカゴ・IMM.のユーロ・ポジション)
解せないのは同じくシカゴ・IMM.は5月9日時点で約6万1千枚の円の売り持ちポジション(ドル換算で約56億ドルの買い持ち)を保持しているにも拘わらず、円を買い戻す(ドルを売る。)行動に出ない事である。
(過去50週のシカゴ・IMM.の円・ポジション)
同じく我が国個人投資家も5月9日時点で約7億ドルの買い持ちへとドル買いを増やしている。
(2020年からの個人投資家のポジションとドル・円相場の推移)
つまり統計上見えるポジションはドルの買い持ちなのに、ドル・円相場は下がらないと言う不思議な現象が起きている。
あくまでも推測であるが、FOMC.後にドルの下落を期待してドルのショートを構築した短期の投機筋が、以前にも説明した様にドルの売り持ち(円の買い持ち)を保持するとキャリング・コスト(高金利通貨を売って、低金利通貨を買うとその金利差を毎日払わなければならない。)が掛かるので、一旦ドルの売り持ちを閉じたのではなかろうか?
日米金利差縮小は何れ必ず起こるが、それは今日明日の事ではない。
6月13日~14日に開催される次回のFOMC.までは中々動き難い状況が続くかも知れない。
但し依然として燻る米国中小銀行の危うさ、重く伸し掛かる商業用不動産やシャドウ・バンキング問題、そして期限の迫った債務上限問題などを見るととてもドルを買う気にはなれない。
キャリング・コストを考えながら、上手くドルのショートを回す(ある程度ドルが下がったところでは買い戻して、再び上で売る。)戦略が肝要であろうか?
今週のテクニカル分析の見立てはドルが大きく反転したので上下両サイドに注意を促す。
136.50を上切ったら137円台を目指すが、絶好のドルの売り場となろう。
下サイドは134.50を下切れば132円台を目指す。