特集『Hidden unicorn企業~隠れユニコーン企業の野望~』では、各社のトップにインタビューを実施している。今後さらなる成長が期待される隠れたユニコーン企業候補のトップランナーたちに展望や課題、戦略についてヒアリングし、各社の取り組みを紹介していく。

バーチャレクス・ホールディングス株式会社は、コンサルティング・IT・アウトソーシングをワンストップで提供し企業の支援をグループ全体で行う新しい形のコンサルティング会社だ。本インタビューでは、代表取締役社長である丸山栄樹氏に同社の企業概要や日本経済の展望、今後の事業展開などについてうかがった。

(取材・執筆・構成=山崎敦)

バーチャレクス・ホールディングス株式会社
(画像=バーチャレクス・ホールディングス株式会社)
丸山 栄樹(まるやま えいき)――バーチャレクス・ホールディングス株式会社 代表取締役社長
1965年1月4日生まれ。山梨県出身。1987年3月、東京理科大学理工学部卒業後、同年4月にアーサーアンダーセン・アンド・カンパニー(現:アクセンチュア株式会社)へ入社。IT化や業務改革、組織改革に関するコンサルティングに従事した。1993年11月に独立し、丸山経営研究所を設立。1996年5月、株式会社ゼスト(のちに株式会社バーチャレクスと合併)を設立し代表取締役社長に就任。

1999年6月、前身となる株式会社バーチャレクス(現:バーチャレクス・ホールディングス株式会社)を設立し代表取締役社長に就任し現在に至る。関連企業として株式会社タイムインターメディア取締役(2017年1月~)、バーチャレクス九州株式会社取締役会長(2017年6月~)、バーチャレクス・コンサルティング株式会社取締役会長(2017年10月~)、VXアクト株式会社取締役(2022年10月~)を兼務。
バーチャレクス・ホールディングス株式会社
1999年6月に東京都中央区築地でITコンサルティングやテクノロジーのアウトソーシングをワンストップで提供することを目的とした企業として株式会社バーチャレクスを設立。2008年7月、子会社と合併に伴い商号をバーチャレクス・コンサルティング株式会社へ変更。以降も子会社との合併を繰り返しながら2016年6月、東京証券取引所マザーズ市場(現:グロース市場)へ上場を果たす。

2017年10月、持株会社体制導入に伴い、商号を現在のバーチャレクス・ホールディングス株式会社へ変更し現在に至る。

目次

  1. デジタルマーケティングからCRMまで、クライアントの継続的な成長を促す
  2. 世の中や消費行動の変化に合わせた体勢作りが重要
  3. 新たな技術の導入と、それを支える人材育成

デジタルマーケティングからCRMまで、クライアントの継続的な成長を促す

――バーチャレクス・ホールディングス株式会社様のカンパニープロフィールと、現在までの事業内容についてお聞かせください。

バーチャレクス・ホールディングス株式会社代表取締役社長 丸山 栄樹氏(以下、社名・氏名略):私どもは、バーチャレクス・ホールディングスというグループを形成していまして、全体の従業員数は約1,000名ほどです。主にバーチャレクス・コンサルティング株式会社と株式会社タイムインターメディアという2社を中心としたグループとなっていますが、もともとは、1999年にバーチャレクス・コンサルティング株式会社(旧株式会社バーチャレクスの事業を100%継承)からビジネスが始まりました。

当時は、ちょうどネットバブルと呼ばれるようなインターネット黎明期でした。しかしそのころから「非対面による顧客接点が伸びるだろう」と考えていましたので「コンサルティング・IT・アウトソーシング」をワンストップで提供するサービスを行うための会社を立ち上げました。

創業当時から単純にレポートを提供するだけのコンサルティングモデルではなく、クライアントと一緒に伴走するパートナーとしてビジネスの結果を提供するような新しいコンサルティング会社を作りたいと思っていました。

最初は、今でいうCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)領域のビジネスからスタートしまして、現在はデジタルマーケティング全般まで業務領域を拡大しています。見込客獲得から契約、アフターフォロー、ライフタイムバリューを上げるといった企業と顧客の接点すべてを支援できるようなサービス展開をしています。

――バーチャレクスグループは“新しいコンサルティング”としてコンサルティングに「アウトソーシング」と「テクノロジー」を組み合わせ、ワンストップでクライアント様の課題解決を支援されています。ITを軸としたコンサルティングの業界内における競合優位性とはどのようなポイントでしょうか?

私どもは、コンサルティングとITとアウトソーシングのサービスを行っていますが、一般的にはそれぞれ別の事業体が行う領域のサービスを一括で行っています。そのため別々の領域のスキルセットを用いて競合優位性を持たせることが可能です。例えばコンサルティング会社様が競合だった場合、戦略性と実現性の両方を兼ね備えたようなご提案ができます。

IT会社様と競合する場合、一般的なソフトウェアが持つようなマーケットのニーズに即した構想や機能が必要です。加えて我々のソフトウェアは、コンサルティング領域でさまざまな企業様をご支援させていただいた実績や知見、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)でクライアント様と一緒に業務を行ったノウハウなどを機能に組み込んでいますので、そういったところが強みだと思います。

またBPO企業も競合にあたりますが、BPO企業は人数を増やすことで成立するビジネスです。我々の場合は、頭数を大きくするようなビジネスではないので、クライアントに対して「ITを組み込み少ない人数で効率的にビジネスを回していく」といった提案が可能になります。さらにクライアント様目線でいえばコンサルティングとITとアウトソーシングをワンストップで提供できることも強みの一つです。

通常ですとクライアント様が上流工程をコンサルティング会社へ依頼し、途中でIT会社を挟み、最後にBPO会社へ依頼するため、クライアント様は3つの会社をハンドリングしなければなりません。もちろん3つの会社様もそれぞれに儲けたいと考えるため、全体的にコストも高まりますし、各会社間での引き継ぎなどを考えればその分工数も増えます。

私どもの場合は、それらすべてをワンストップで提供できますので、クライアント様目線でいえばトータルコストだけでなく期間も削減できる点がメリットです。

――コスト面以外にコンサルティング・IT・アウトソーシングをワンストップで行うメリットはどういった部分でしょうか?

例えば一般的にコンサルティング会社様が担当するような上流工程において、実際の現場では実現が難しくなるような形で案件の風呂敷を広げ過ぎてしまい、下流の会社様が迷惑を被るケースがあります。私どもの場合は、すべてのステップを自分たちで行いますので、実現不可能なことを組み込むことはできません。

そのため「実際の成果物が現実的かつ戦略的」というのは、クライアント様にとって大きなメリットになり得ると思っています。

――バーチャレクスグループの中核事業会社であるバーチャレクス・コンサルティングのコーポレートサイト内において『私たちは、Solutionではなく“Succession”を提供します』というタグラインを掲げていらっしゃいますが、ビジネスを進めていくうえで特に重視されるポイントをお聞かせください。

そもそもソリューションやサクセスというのは、成果物や結果だけを指すような「ある1点」でしかありません。私どもは、そういった1点のみの幸せをクライアント様に提供するのではなく、クライアント様が継続的に成長していくための支援を続けていきたいという思いから『私たちは、Solutionではなく“Succession”を提供します』というタグラインを掲げています。

そのなかでも特に重視しているポイントは「クライアント様の成功が起きない限り私たちの存在意義はない」というところです。我々はすべてのビジネスシーンにおいて「クライアント様の成功」という視点を常に忘れないようにしています。昔「バーチャルコーポレーション(ネットワークを活用した組織の境界を持たない仮想企業体)」という言葉がありました。

「ばらばらの作業をしている個人が一つの会社としてワークしている」「クライアント様と一体になってバーチャルコーポレーションを形成する」といったような視点の必要性から名付けています。バーチャレクスという名前の由来は、「Virtual(実質上の)+X(未知数)」という意味が込められています。

最も大事なこととして、どんなフェーズやタイミングにおいてもクライアント様のビジネスの成功という視点をなくさないようにするのがポイントだと思っています。

――実際にワンストップでサービスを提供することによるお客様の反応はいかがですか?

そうですね。例えばかなり会社規模の大きいクライアント様が日本で初めてeコマースを行う際、私どもは上流のコンサルティングからITの組み込み、アウトソーシングまでの一連を担当させていただきました。その実績というのは、我々にとっても大きな経験でしたし、逆にその先の成長に向けての大きなチャンスをいただいたと思っています。

その際にクライアント様からは「短期間での立ち上げを実現できて本当に良かった」と言っていただきました。ほかのクライアント様からも「ワンストップですと議論が早くITの導入などもスピーディーに実現できるので、ワンチームでやってくれて本当に助かります」というお話をよくうかがっています。

世の中や消費行動の変化に合わせた体勢作りが重要

――2022年末に日本政府からスタートアップ企業の育成に向けた方針が打ち出されるなど成長企業にとってはビジネスチャンスが期待されますが、現在の日本経済が直面している課題と、今後の日本経済の動向についてお考えをお聞かせください。

日本の経済は、長い間停滞しているというのが基本的な問題だと思います。そこを押し上げていくためにも日本企業がグローバルに戦っていかなければ日本国内の経済も上がっていかないのではないでしょうか。世界で戦っていく企業がいない、または少ない状態にも関わらず、日本国内の雇用や景気のことを考えても大した効果は出ません。

「縮小していくマーケットのなかで施策を練る」という意味では、限界なのではないかと思います。そのためベンチャーや日本企業を育成の支援をするのであれば、やはり「グローバルで戦えるような企業を育てる」という施策が必要なのではないでしょうか。それが結果的に日本の経済や雇用を回復させることにつながるはずです。

――バーチャレクスグループとして同様の事業領域を持つ企業が2023年以降の市場において成長していくためのポイントは何だとお考えでしょうか?

コロナ禍の約3年間で「業績を伸ばした企業」「業績に直接ダメージを受けた企業」が二分化したように感じました。そういった状況のなかで、各社の優劣や勢いの流れが変わりつつあるのが2023年初頭の状況だったと思います。

そのためアフターコロナの経済においては、新しい戦いが始まりますので「どういった企業が伸びるのか」「どういうサービスでないと伸びないのか」について真剣に考えるべきではないでしょうか。アフターコロナにおいては、コロナ禍前に元通りになることはなく働き方や生活の仕方、マーケティングを含めた消費活動も大きく変わりました。

インターネットで商品を買ったり、ケータリングを用いて自宅で食事したりする機会も増えました。コロナ禍前とは違った状態で社会が進み始めているので、そこをしっかりと見極めておくことが必要です。我々の領域でいえば、従業員の働き方が変わってきていることを理解しながら組織運営を行うことが求められます。

一方、クライアント目線でいえばマーケティングにおける消費行動や購買に至るまでの広告の流れも変わってきていることを踏まえた作戦を立てる必要があると思っています。また長い目で見た場合、メタバースのような未来が到来すれば再び消費行動やマーケティングプロセスにも変化が訪れるでしょう。世の中の流れを見ながら、企業と顧客が出会う場面や流れを意識していく必要があると思っています。

新たな技術の導入と、それを支える人材育成

――バーチャレクスグループとしての今後の目標(売上、成長、事業展開など)、5年後、10年後に目指すべき姿についてお聞かせください。

5年、10年先の話でいえば売上も200億円から400億円という規模になっていき、既存のコンサルティング会社様と同規模になるようなイメージを持っています。ただそれは、同じような業務内容になるということではありません。

IT製品まで持った新しいコンサルティング会社として、しかもクライアント様と伴走し一緒に業務を行いながらビジネスの結果まで提供するオペレーションも持っているといった形でやっていければと思っています。業務のOEMともいえるところが、私どもの目指すべき姿です。

――目標に向けてバーチャレクスグループとして重点的に取り組んでいるポイントと現在の事業課題をお聞かせください。

短期的には「進化計算・遺伝的アルゴリズム」というAIの開発に取り組んでいます。世の中でいわれているのは、以下の図の右側にある「機械学習・ディープラーニング」と呼ばれるものですが、我々が取り組んでいる進化計算・遺伝的アルゴリズムは「無限にある組み合わせのなかから最適な組み合わせを出せる」というものです。

バーチャレクス・ホールディングス株式会社

これは、業務の計画に有用なため、我々の今後のソリューションサービスに組み込んでいきたいと思っています。私どもは、さまざまな領域で計画業務を行っていますので、計画業務におけるSaaSの形での提供を強化していく予定です。

また重点的に行っている要素としましては、デジタルマーケティングの強化や拡大を行っています。もともと行っていたCRMは、顧客になったあとを担うものです。しかしそこをさらに強化し顧客化までを担うマーケティングからCRM以降までをすべてサポートできる状態を作っていきたいと思っています。

私どもは、さまざまな意味でのワンストップという考えを持っています。例えば一般的なコンサルティング会社様でいえばSFDC(セールスフォース・ドットコム)のソリューションを提供するようなサービスを行っている傾向です。

それには、必ずCRMもついてきますので、そこまでをしっかりとワンストップで行えるというところをさらなる強みにしていきたいと思っています。また「SFDCだけで競合優位性をどう持って行くのか」という点に疑問を感じるかもしれません。

その点でいえば私どもは、SFDCを導入してIT導入をして終わりではなく、状況に合わせて都度チューニングすることで最適解を出していき、しっかりと伴走できる機能を持たせようとしています。そのためには、コンサルタントのような頭脳やITオペレーションを行える人材といったリソースが社内に必要です。

特に人材面においては、コンサルティングのスキルが求められますが、「コンサル+IT」「コンサル+オペレーション」など何かしら2つ以上のスキルを持った人材を育てていきたいと思っています。人材の育成に関しては、基本的にOJTでストレッチして、いろいろなものを吸収させていくことが重要だと思っています。

ただこれは「教育の仕組みが必要ない」ということではありません。OJTでストレッチできるような方法論や仕組みが必要と考え、現状は準備に取りかかっているところです。

――AIの開発状況は、現在どのような段階でしょうか?

昨年12月にSaaS型の第一版をリリースいたしました。一般的なSaaSモデルの場合、月1万円といった比較的小さな単位のものが多いかもしれません。しかし私どもの場合は、グループウェアを企業が導入するような範囲で、クライアント様の業務や計画の規模に合わせて提供しクライアント様の本数を増やしていきたいと考えています。

クライアント様の数を増やしていくにあたり、クライアント側にAIの専門家が必要になるとスピード感を持った利用ができません。しかしSaaS型にすることで企業様が導入する際、我々側の専門人材の効率性も高まりますし、クライアント様側も短期間で導入できることからSaaS型に注力していきたいと考えています。

――最後に弊媒体の読者層である投資家、資産家の皆様へメッセージをお願いします。

バーチャレクスグループは、見る角度によって何をメインにしているのかが変わってしまう会社だと思っています。そのため「なにか一つのジャンルに絞った会社」と思っていただくのではなく、クライアント様のビジネスの成功を提供するために「コンサルティング・IT・アウトソーシング」という3つのスキルを競争力として持っている新しいコンサルティング会社の形を目指しているとご理解いただければ幸いです。

もちろんそういった理解を深めていただくためにもIRなどを通じて投資家の皆様とのコミュニケーションを充実させていきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。