ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「G7の結束強まり日本に有利な状況(リスク選好)だが、反面、日中関係悪化のリスク(リスク回避)が残る」

ドル円=135-140、ユーロ円=147-152、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨10位(10位)、株価3位(5位)、G7の結束強まり日本に有利な状況(リスク選好)だが、反面、日中関係悪化のリスク(リスク回避)が残る」
 広島G7で日本がプレゼンスを高め、G7の結束力が高まった。中国に対しては、外交・経済の振る舞いに対し、これまでは遠慮していたが、今回は名指しで警戒感を表明した。中国は早速、強く反発し、今後の外交・経済交流はより難しくなる。またG7直前には、半導体のサプライチェーン強化を念頭に海外の主要な企業首脳らと面会し、日本への投資拡大を呼びかけた。出席した企業からは今後の計画などが示され、政府側も補助金を活用して支援を続ける方針を示した。日経平均は3万円にのせ市場は活況を呈している。経済は回復の道を辿っている。リスク選好の円売りが出やすい。

 円安の基本材料は、輸入が減少しつつあるといえども貿易赤字での円売りが続くこと、消費者物価が3%に乗せても、年度後半には2%を割り込むとの見方を変えない日銀が金融緩和を続けていることにある。
4月貿易赤字は21か月ぶりに前年同月を下回った。これが継続すれば円安圧力は減殺されるが、実際に黒字に転換する迄じっくり待ちたい。テクニカルでは値幅が縮小していることもあり、ボリバン上限、中位、下限では、流れに乗らず慎重に行きたいところだ。

 ドル円の水準では、昨年は130円に乗せたあたりから、メディアの報道が騒々しくなっていたが、最近は静かだ。円安の慣れもある。国民が不満を持っていなければ、日銀介入の可能性も低くなる。米景気も後退観測があるので、米側からも円買い介入を認める可能性も低い。上述したように米中、日中経済関係の悪化も円相場の波乱要因だ。

*米ドル「通貨6位(5位)、株価(NYダウ)17位(17位)、債務上限、景気後退説、米中関係悪化でもドルは、それほど弱くはない」
 現在ドルは年初来で12通貨中で6位と強くもなく弱くもない。債務上限問題、6月FOMC、米中対立という不安要因はあるものの、景気はそれほど後退していない。株価もNYダウは伸びないが、ナスダックは好調だ。アトランタ連銀のGDPナウは2.7%増、CNNの恐怖と欲望指数ではリスク選好の67と高い水準にある。債務上限問題ではデフォルトになっても、いずれ解決するものだと見られているからだろう。6月のFOMCではパウエルFRB議長が銀行の貸し渋りなど信用収縮がもたらす金融引き締め効果を指摘し、利上げ停止を示唆した。利上げする確率についてのトレーダーらの予想は25%に低下した。

 G7では中国の経済活動を強く批判したが、中国とのデカップリングではなく、ディリスキングを目指すとした。ディリスキングでも中国からの安い商品の輸入が途絶えれば、物価の上昇やドル高(貿易赤字の縮小)に結び付く。中国の代替はメキシコに代表されるニアショアリング政策を強めることとなるし、G7に招待されたグローバルサウス諸国との関係強化に繋がる。

さて債務上限問題では、トランプ前大統領が共和党議員に対し債務上限交渉に全力で取り組むよう促した。共和党は望むものをすべて手に入れられない限り、民主党との債務上限に関する合意に達すべきではない、共和党議員は交渉で強硬な姿勢を示すべきとも述べた。債務上限問題は前回の大統領選挙の遺恨となっている。

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価4位(3位)DAX)、食傷気味の利上げ発言。ボリバン上限から下限へ急降下」
 ドルが強いとユーロが下がる。年初来では4位だが、5月はここまで10位と弱い。3月24日以来、一目均衡表の雲の下へ下落した。ボリバン上限から下限へ下落した。しつこいくらいECBは利上げ継続を強調するが、やや食傷気味。先週はラガルドECB総裁が物価安定を実現するために必要な措置を実施していくと述べた。 物価安定と金融安定はトレードオフの関係にあってはならないとし、「われわれは双方の目標を同時にうまく追求していける。持続可能な高金利」水準を維持する必要がある」と述べた。
 
ただ利上げ、利上げという割には政策金利は3.75%で、英国の4.5%、米国の5.25%、豪の3.85%と比べると低い。自ずから上昇の限界があるので、ボリバン上限からきっちり下落、ただ下限に来ているので、売りには慎重になりたいところ。
 4月ユーロ圏消費者物価改定値は、前年同月比7.0%上昇し前月の6.9%から伸びが拡大した。食品価格の上昇は鈍化したが、サービスとエネルギー価格の伸びが加速した。
一方、IMFは独の成長率については、財政引き締めやエネルギー価格ショックが短期的な成長に重圧を加え始めており、今年のGDP成長率はほぼゼロにとどまるとの見通しを示した。

*ポンド「通貨2位(3位)、株価13位(12位)、金融引締め(量的も含め)は続く、日本からの投資増加はポンドを支える」
 年初来2位でポンド円は8.29%高、対ドルでは2.91%高で堅調だ。ただ今月は対ドルではボリバン上限から下限へ弱含みしている。米消費者物価低下に比し、英国のそれは高止まりしていて上昇していたが、
調整が入り対ドルで下落したが、一気にボリバン下限を割り込むほどのものではない。
 英中銀ベイリー総裁は、2%のインフレ目標達成への決意は「揺るぎない」と述べるとともに、食料品値上がりと引き締まった労働市場が生活費高騰を長引かせる恐れがあると警告した。
エネルギー価格下落により総合インフレ率は「今後数カ月に」現在の10.1%という水準から急低下するはずだと語った。前回の0.25%利上げに続き、「物価圧力持続の兆候があれば」引き締めを続けるとも述べた。ブロードベント副総裁は、中銀が保有する英国債を年800億ポンドのペースで減らす決定を下したことについて、四半期ごとに約100億ポンドの国債が満期を迎えるため、さらに約100億ポンドを売却することが「おおむね適切」だと感じたと述べた。 副総裁は「年間1000億ポンドを超えれば、市場の流動性が混乱する恐れがあると市場関係者から聞いている」と発言した。

*豪ドル「通貨9位(9位)、株価15位(15位)、賃金と雇用状況がやや緩和。6月は政策金利は据え置きか」
 5月は対円では強いが、対ドル5月10日のボリバン2σ上限での高値0.6818からボリバン下位へ下落0.66台で弱い。1年前と比べれば全体的に資源価格が下落した弱く、年初来では9位。ただ一旦は利上げ停止したRBAが再び利上げしたことで下げ止まっていた。今後はどうか。
 1Q賃金価格指数は前年比の伸びが3.7%に加速し、10年ぶりの高水準となった。前期比の伸びは0.8%と、予想の0.9%に届かなかった。賃金の上昇スパイラルがさらなる利上げにつながりかねないと懸念するRBAにとっては一定の安心材料となった。来月の豪政策金利据え置き確率は80%で維持されている。

 4月の雇用統計は、就業者数が予想外に減少した。失業率も上昇し、労働市場減速の可能性を示され、これでもRBAが来月利上げを停止するとの観測が高まった。 就業者数は前月比4300人減少。予想は2万5000人増だった。 失業率は3.7%に上昇。予想は3.5%。これまでの利上げの影響が現れ始め、2023年を通して労働市況は段階的に軟化する。G7で中国の外交・経済活動が批判されたことが豪中貿易関係に影響するかどうかも注目点だ。今週は5月製造業・サービス業PMIや4月小売売上の発表がある。

*NZドル「通貨7位(8位)、株価12位(13位)、今週は0.25%利上げか。財政刺激策でインフレは高止まりか」
 NZドルは年間では7位だが、先週と5月のここまでは最強通貨だ。今週24日の金融政策会合では、政策金利の0.25%引き上げが予想されている。前回は0.5%引き上げ、5.25%とした。1Qの消費者物価上昇率は前年比6.7%と、予想を下回ったが、昨年付けた記録的高水準になお近く、項目別でも食品から住宅建設に至るまで幅広く価格が上昇した。オア総裁はインフレを抑制するために浅いリセッションを引き起こす必要性を認めている。
 
さてNZの予算案が発表された。豪とともに財政の健全さでは高い評価がある。2022/23年度の財政赤字が69.6億NZドルになるとの見通しが示された。昨年12月時点の予想である36.3億NZドルから赤字幅を上方修正した。財政収支が黒字に戻るのは25/26年度以降となる見通し。従来予想より1年後ずれした。税収の減少、物価上昇、景気減速が背景。政府は国債の増発を計画。27年6月までの4年間の総発行額を200億NZドル増額し1200億NZドルとした。 新規歳出規模は予想外で、財政見通しも予想以上に拡張的だと指摘されている。短期的にインフレ圧力を高めると観測がある。また財務省は今年下半期のリセッション入りを予想していないと表明。サイクロン被害からの復興で経済活動が活発化しているほか、国境の再開で観光客が戻っていることが背景にある。

テクニカル分析

*ドル円「再びボリバン2σ上限を上抜く、ただ先週末は小反落してボリバン内へ」
日足、再びボリバン2σ上限を上抜く、ただ先週末は小反落してボリバン内へ。5月18日-19日の下降ラインが上値抵抗。5月17日-19日の上昇ラインがサポート。5日線、20日線上向き。
週足、再びボリバン2σ上限へ上昇。雲中。5月8日週-15日週の上昇ラインがサポート。10月17日週-5月15日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、今年は月ごとに陰陽を変えていたが5月は4月に続きここまで陽線に。5か月移動平均線は上向く。2月-4月の上昇ラインがサポート。22年10月-11月の下降ラインを上抜く
年足、2023年はここまで陽線。2022年は大陽線に終わるも、長い上ヒゲで圧力を残した。21年-22年、12年-21年の上昇ラインがサポート。

*ユーロドル「下落継続、雲の下へ」
日足、3σ下限へ下落。5日線、20日線が下向く。雲の下へ。3月15日-5月19日の上昇ラインがサポート。5月18日-19日の下降ラインが上値抵抗。
週足、ボリバン2σ上限から4月17日週-5月1日週の上昇ラインを下抜いて急落。ボリバン中位へ。3月13日週-5月15日週の上昇ラインがサポート。5月8日週-15日週の下降ラインが上値抵抗。5週線下向く、20週線上向き。
月足、ボリバン中位越えて一服。21年6月-23年5月の下降ラインが上値抵抗。23年3月-4月の上昇ラインを下抜く。1月-3月の上昇ラインがサポート。5か月線上向き、下向きの20か月線を上抜く。
年足、年足陽転。20年‐21年の上昇ラインは下抜く。2022年は2年連続陰線もボリバン2σ下限到達し反発。下ヒゲが長く反発力あり。02年-22年の上昇ラインがサポート。21年‐22年の下降ラインが上値抵抗。

*ユーロ円「ボリバン2σ下限から反発、5月11日の下ヒゲ効く」
日足、ボリバン2σ下限から反発。5月11日の下ヒゲ効く5月17日-19日の上昇ラインがサポート。5月2日-19日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン3σ上限から反落、2週連続陰線も先週は陽転。5月8日週-15日週の上昇ラインがサポート。5月1日週-15日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、5月はボリバン2σ上限から反落中。23年3月-4月の上昇ラインがサポート。2008年7月-23年5月の下降ラインが上値抵抗。
年足、3年連続陽線。今年も陽線。20年-22年の上昇ラインがサポート。08年-22年の下降ラインを上抜く。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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