この記事は2023年5月1日に「第一生命経済研究所」で公開された「東京都区部版・日銀基調的インフレ率の試算」を一部編集し、転載したものです。


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日銀の基調インフレ率3指標を都区部CPIで試算:4月は加速へ

4月28日、日銀の植田新総裁が初の金融政策決定会合に臨み、金融政策の現状維持を決めた。緩和を粘り強く続ける姿勢を示す一方で、総裁会見では2%の物価目標について「基調的インフレ率は徐々に上昇を続けていて、安定的な2%の可能性も出てきてはいる」、「現在は基調的なインフレ率が持続的安定的に2%には達していないという判断だが、これが1年半の間に変わる可能性はゼロではないわけで、そうすれば当然、それに伴って政策変更はありうる事になるかと思う」といったように、今後のデータ次第では政策変更を行う姿勢も示している。

「データ次第」の姿勢を示す植田総裁の下で、物価の基調をみる重要性は増していると思われる。現在、日銀は基調的なインフレ率の指標として、全国CPIの公表2営業日後に刈込平均値・加重中央値・最頻値の3つの値を毎月公表している。いずれも物価の品目別分布に着目したもので、日銀自身も物価の基調をみるための参考にしていると考えられる。

そこで、全国CPIに先んじて公表される東京都区部CPIについて、当方で極力日銀作成手法に近づけた形で3指標の推計を行ってみた。結果は次ページの資料の通りである。作成した都区部版・基調インフレ率は、日銀の公表する全国CPIの基調インフレ指標の動きを概ね追うことができた。全国・都区部のウェイトの違いによる影響を抑える観点から、刈込平均値と加重中央値については公表されている品目別都区部CPIの値に全国CPIのウェイトを用いることで、日銀公表値に値を近づける調整を施した値も併せて求めている。

4月28日に公表された4月都区部CPIについてみると、刈込平均値(全国ウェイト)は2023年3月:+2.7%→2023年4月:+3.0%、加重中央値(全国ウェイト)は同:+0.7%→同:+0.8%、最頻値は同:+2.8%→同:+3.5%といずれも伸び率が加速した。5月下旬に公表される日銀公表値も伸び率の加速が見込まれる。基調的なインフレ率を早期に把握する観点で、同指標の動向を次月以降もウォッチしていきたい 。

第一生命経済研究所
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4月の東京都区部CPIの評価については、Economic Indicators「消費者物価指数(東京都区部・23年4月) ~コアコアがさらに加速で、事前予想をはっきり上振れ~」(2023年4月28日)をご参照ください。


第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 星野 卓也