総括
FX「為替、長期金利、株価も放置、今週は政策金利決定」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価6位)
予想レンジ トルコリラ/円4.7-5.7
(ポイント)
*依然リラ安放置。相場は市場に任せる。介入せず
*長期金利、株価の急激な動きも放置
*外交において西側寄りの行動をとる(ロシアは批判)
*今週は政策金利決定、段階的に引き上げか
*外貨準備は増加
*エルドアン大統領はEUに加盟したい
*6月の消費者物価は前年比で38.21%上昇
*付加価値税を2%引き上げ
*中銀議事要旨=インフレ見通しが大幅改善するまで金融引締めプロセス継続
*新中銀総裁は「適時かつ段階的に」さらなる利上げを進めるとした
*新財務大臣は合理的な政策に変わると主張、経常収支改善も目標
*ゴールドマン・サックスは、リラが1年後に1ドル=28リラまで下落と予想
*今年は建国100周年
(リラ安には手を打たず放置。長期金利も株価も放置)
為替は市場に任せる、財政は健全化を目指し増税も辞さず、インフレ抑制のために段階的に利上げを行う、などと正統派の経済・財政政策が実施されている。
大統領選挙後の動きは以下のように急激だが敢えて放置だ。リラ相場だけでなく長期金利、株価の急激な動きも放置だ。
(西側寄りの行動=それが得策か)
外交においても、最近は西側寄り、ウクライナ寄りの行動をとり始めた。ロシアはいら立ちを隠せない。
エルドアン大統領は、スウェーデンのNATO加盟に向けた批准手続きを進めることに同意した。さらに、大統領は「EUは、トルコがスウェーデンのNATO加盟への道を切り開くことができるよう、トルコの正式なEU加盟への道を開くことが期待されている。トルコは50年以上にわたりEUから締め出されている」と、発言した。
またバイデン大統領より「トルコへのF16戦闘機売却を進める」との決断を勝ち取った。ただこれは米議会の承認が必要なため難航が予想される。
さらに、トルコは、昨年9月の捕虜交換後トルコに滞在していたウクライナの精鋭部隊「アゾフ大隊」の元司令官ら5人をウクライナに引き渡した(ロシアが不満表明)。全体として西側への歩み寄りを見せた。これは、やはり経済的にEUなど西側と関係を密にしたほうが得策だと考えているとみられる。
(政策金利決定、段階的に引き上げ)
さて、今週は政策金利の決定がある。30%台のインフレだが、中銀は段階的に利上げを行う予定だ。今回は18-20%への利上げが予想されている。
(外貨準備は増加)
トルコの外貨準備高は5月26日の985億ドルから6月30日には1,086億ドルに増加し、純外貨準備高は同期間に142億ドル増加したとシムシェク財務・財務大臣が 。
「われわれのプログラムの重要な目標の一つは、市場の状況が許す限り外貨準備高を蓄積することだ」と述べ、最近見られる外貨準備高の急速な増加は心強いと付け加えた。
「中央銀行の外貨準備の増加に貢献する合理的な政策に加えて、我が国に追加の外国資源を提供する取り組みも継続中。我々は回復の継続に必要な措置を講じる」とシムシェク氏は付け加えた。
一方、経常赤字は4月の54億ドルから5月には79.3億ドルに増加した。
中銀は7月11日、金とエネルギーを除いた経常収支は12億ドルの純赤字を示したと発表した。輸出は213億ドル、輸入は318億ドルで、5月の対外貿易赤字は104億8000万ドルとなった。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
依然、大統領選後は下位で低迷
日足、6月22日の政策金利決定までこじっかりしていたが、決定後は急落、2σ下限へ。7月12日-17日の上昇ラインがサポートだが下抜くか。7月10日-17日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。雲のはるか下。
週足、2σ下限に沿って下落。6月5日週-12日週の上昇ラインを下抜く。7月3日週-10日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線下向き。
月足、2σ下限下抜く。21年12月-23年5月の上昇ラインを下抜く。23年5月-6月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン2σ下限下抜く。
年足、8年連続陰線。その間52円から5円台へ沈む。今年は僅かに陽転していたが3月から陰転。
メルハバ
トルコを欧州だと思う人はいないーロシア
ロシアの大統領報道官は、トルコがスウェーデンのNATOへの加盟容認に転じたことに関し「トルコとは立場の違いを踏まえて、お互いに利益になる分野での対話と関係を発展させたい」と述べ、批判を避けた。ロシアは仲介役として頼りにするトルコの米欧やウクライナへの接近に警戒も強める。
報道官は「欧州にはトルコを欧州だと思う人はいない」ともクギを刺した。ロシアにとって、フィンランドに続くスウェーデンのNATO加盟実現は誤算と言える。・ラブロフ露外相は「NATO拡大に適切かつ迅速な措置を講じる」と警告した。