ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「日銀の出口戦略は。2か月ぶりの貿易黒字も円相場に影響。20日移動平均線との攻防」

ドル円=138-143、ユーロ円=155-160、ユーロドル=1.09-1.14

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨11位(10位)、株価3位(3位)、日銀の出口戦略は。2か月ぶりの貿易黒字も円相場に影響。20日移動平均線との攻防」
 やっかいな問題を日銀も抱え込んだものだ。YCCやETF買いは出口のルールを決めていなかったので去就は市場の騒ぐとことろとなっている。先週報道された日銀のYCC維持か修正もすべて観測記事であり、これは日銀会合の声明と総裁の記者会見を待たなければならない。日銀は前総裁から今年度後半(秋以降)に物価が2%を割り込むという予想に基づきYCCを続けているが、日銀展望リポートでのインフレ見通しがどこまで上方修正されるか、YCC修正の議論はどう進んだかも注目したい。

 財務省の145円近辺での円安けん制と23か月ぶりの6月貿易黒字で137円まで下落していたドル円が142円手前まで反発した。6日連続陰線の後の6日連続陽線となった。ただ出発点の145円までは戻さず、20日移動平均線の141.87近辺で止まった。

 相場の中期的な傾向は貿易需給が影響する。6月は原油などエネルギー価格の下落で23か月ぶりの黒字となった。ただ先週は原油や小麦価格が再び上昇している。7月28日には7月上旬の貿易統計が発表される。
同時に7月の東京の消費者物価も発表される。

*米ドル「通貨6位(8位)、株価(NYダウ)11位(16位)、デコボコ道を走りながら、なんとか走行している米国経済」
 デコボコ道を走りながら、なんとか走行している米国経済。今週はFOMCの他に2Q・GDPの発表がある。アトランタGDPナウの予想通り前期比年率で1.8%成長の予想。株価もナスダック、S&Pは力強く、ダウも
徐々に上昇している。モルガン・スタンレーは2023年の平均成長率予想を1.3%と従来予想の0.6%から引き上げた。
インフラへの公共投資と非住居用の建設投資がけん引し、予想以上に快適なソフトランディングを示唆していると指摘。ゴールドマン・サックス氏は、今後1年以内に米景気後退が始まる確率を20%とし、従来予測の25%から下方修正した。
 今週のFOMCについては0.25%の利上げを織り込んでいる。焦点は次回以降だ。バーナンキ前FRB議長は、「今回のFRB利上げが、引き締め措置の最後になるかもしれない。家賃上昇が薄れ、自動車価格が下落する中、インフレは今後6カ月で3%から3.5%の範囲まで「より持続的に」低下すると予想している」と述べた。
 バーキン・リッチモンド連銀総裁は「CPI上昇率は6月に鈍化したとはいえ、まだ高過ぎる」と指摘。インフレ率を目標の2%まで戻すというのコミットメントをあらためて強調した。「手を引くのが早過ぎればインフレが再び強まり、そうなれば米金融当局はさらなる行動が必要になる」と語った。
 いずれにせよ、パウエル議長の会見が大きな焦点となる。ウクライナ情勢のこのところの緊迫は有事のドル買いを引き起こす可能性もあり。

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価7位(7位)DAX)、ECB理事会は0.25%利上げか。ただハト派の意見もあり」
 今週のECB理事会では、0.25%の利上げを完全に織り込んでいる。ただ9月に追加利上げが実施される確率は55%程度にとどまっている。タカ派中のタカ派のナーゲル独連銀総裁も若干トーンが変わった。ナーゲル総裁は「今月再び利上げする必要があるも、その後の会合ではデータに基づいて意思決定を行う。9月会合に向けて、データが何を物語るかを見ることになる」と述べた。
 データは弱い。BOAは、今年のユーロ圏経済成長率予想を従来から0.1%引き下げ、0.3%に修正した。中国経済の減速を考慮した。独連銀は、独経済は2Qにやや持ち直したものの、2023年のGDPが6月時点予想(前年比0.3%減)より悪化する可能性があるとの見通しを示した。
 クノット・オランダ中央銀行総裁は「9月の利上げは必要ないかもしれない」と発言した。既にインフレ目標の2%を下回っているギリシャのストゥルナラス中銀総裁は、「7月の理事会で0.25%の追加利上げを決定するかもしれないが、それ以上の引き締めは経済に打撃を与えかねない」と述べた。
 FRB・ECBとも今回は0.25%利上げが見込まれているが、今後の動向に対するパウエル議長、ラガルド総裁の会見での温度差がユーロ相場にも影響しそうだ。

*ポンド「通貨3位(2位)、株価18位(19位)、8月の利上げ幅は0.5%ではなく0.25%か。CPI上昇鈍化で」
 ポンドは年間でスイスに抜かれ3位に後退した。先週は12通貨中9位で、円と同じく急落した通貨の一つであった。英国のインフレ鈍化を示す指標を受けて英中銀による積極的な利上げへの懸念が後退した。
6月の消費者物価の前年比上昇率は7.9%と、5月の8.7%から予想以上に鈍化した。2022年3月以来の低い伸びとなる。予想は8.2%。英中銀もは先月、6月のインフレ率が7.9%に低下すると予想していた。

英インフレ率は当面、他地域と比較して最も高い水準にとどまるだろうが、少なくとも世界的な低下傾向に沿っている。来月の利上げ幅予想は前日まで織り込まれていた0.5%から0.25%に移りつつある。コアインフレ率は6.9%で、5月の7.1%から低下。予想は7.1%。
6月の小売売上は前月比0.7%増加した。高インフレが続いたものの、例年より温暖な気候が寄与した。予想は02%の増加。インフレ率は8%付近で高止まりしているが、7月からのエネルギー料金値下げで家計の可処分所得が増えると予想されている。
 さて、英与党保守党は、20日に行われた3選挙区の下院補選で2議席を失った。 最近の世論調査では、与党保守党は最大野党労働党に20ポイントのリードを許している。

*豪ドル「通貨7位(6位)、株価16位(17位)、雇用は改善。今週の消費者物価を経て政策金利決定へ」
 豪ドルは12通貨中7位と強くも弱くもない位置で推移している。6月の豪雇用統計では、就業者数が2カ月連続で予想を大幅に上回った。8月の0.25%利上げ予想もやや強まったが、今週のインフレ指標も重要な金融政策決定の予想となる。FRBとの金利差維持も気になるところだ。

 6月の雇用統計は、就業者数が2カ月連続で予想を大幅に上回った。失業率は50年ぶり低水準付近を維持し、労働市場の逼迫が続いていることを示唆した。市場では追加利上げ観測が強まっている。
就業者数は前月比3.26万人増加。予想は1.5万人増、失業率は3.5%、予想は3.6%。 労働市場の底堅さは追加利上げが必要になる一因で、市場が織り込む8月の利上げ再開確率は42%と、統計発表前の35%から上昇した。ブロックRBA次期総裁はインフレを抑制するには失業率が4.5%前後に上昇する必要があるとの認識を示している。

前回のRBA政策会合議事要旨では、政策が明らかに制約的で、家計の逼迫が急激な景気減速と失業率の上昇につながるリスクがあることから政策金利据え置きを決定したと明らかにした。ただ、家賃上昇や生産性低下、電気料金の上昇などによるインフレへの影響がまだ十分に把握できていないため、インフレ抑制に依然として政策引き締めが幾分必要になる可能性があると警告していた。

*NZドル「通貨8位(7位)、株価17位(13位)、先週は最弱通貨、要因は」
 先週は、円やトルコリラよりも弱く、NZドル円は1.06%下落した。消費者物価の鈍化が影響した。2Qの消費者物価上昇率は予想をやや上回ったが前年比6.0%と、1Qの6.7%から鈍化した。予想は5.9%。
22年2Qには30年ぶりの高水準となる7.3%を記録していた。7月会合では金利据え置きを決定し、これまでの利上げが想定通りにインフレ圧力を弱めているとの認識を示したが、「制約的な水準」に維持する見通しとしている。

 不動産価格も下落している。最新のTrade Me不動産価格指数によると、価格は2021年8月の水準に戻った。住宅価格は2022年3月のピークよりも13万400NZドル低く、6月の平均希望価格は84万1050NZドルにとどまっている。平均希望価格は2022年3月に97万1,450ドルという過去最高値を記録していた。

 世界の乳製品貿易価格指数も下落を続け7月19日発表分は1%下落、前回は3.3%下落であった。求人数も減少している。四半期ごとの雇用報告書では2Qは雇用機会が10.8%減少した。求人数は1年前と比べて23.7%減少。景気低迷が到来していることを示している。