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人材派遣銘柄の特徴

産業界からの規制緩和の要望と、若年層の貧困化の一因との社会批判から、どのように法整備できるかがポイントになる。

厚生労働省における「労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の報告書が平成 25 年8月 20 日に公表されている。その中で、「労働者派遣制度は労働力の迅速・的確な需給調整という重要な役割を果たしている。こうした役割を評価した上で、派遣労働者の保護や雇用の安定といった課題に積極的に応えるような制度とすべきである。」と結論づけている。

規制緩和により多くの企業が人材派遣に参入し、急速に市場を拡大してきた。しかし、リーマンショック以降人材派遣会社の選別も進み、買収や大手の子会社化等M&Aを選択せざろう得ない、淘汰の時代に入っている。リクルートが人材派遣大手のスタッフサービスを買収し、最近ではテンプが人材サービス大手のインテリジェンスを子会社化している。そして今後は人材派遣に留まらず、総合的な人材サービスを掲げて、巨大企業同士の熾烈な競争が予測される。

2006年から2010年の派遣労働者数の推移をみると、2008年のリーマンショックから2010年に大きく減少している。これは登録者数が100万人ほど減っためである。一般・特定の常時雇用労働者数(橙)の減少は23万人であり、2006年レベルに回復している。また専門技術を持った「特定:常時雇用労働者数」は景気変動に影響されず増加傾向にある。2011年以降の公表データがないが、アベノミクスによる経済への刺激策は派遣労働者数の増加に繋がることが予想される。

派遣事業の売上高をみてみると、2010年時点で5.3兆円規模である。リーマンショック前まで7.8兆円規模であったことから、景気回復とともに回帰することが予想される。2003年、規制緩和により製造業務が解禁されてから急激に売上高を伸ばしてきたことから、製造業での人材派遣のニーズがいかに高いかを示している。


人材派遣関連銘柄

魅力①:雇用形態の多様化
雇用形態が多様化する中、必要な技術、知識、スキルを持った即戦力のある人材を、必要な時に必要な人数提供してくれるサービスは、もはや企業にとって不可欠な存在である。またアウトソーシングは経営戦略の主流でもあり、外部の人的リソースを活用して業務の効率化、組織の肥大化防止、原価低減等、競争戦略には欠かせないサービスになる。よって、現在の労働者派遣制度の抱える課題が解決されることで「人材派遣業」はまだまだ成長する可能性を秘めている。

魅力②:人材派遣業の多角化
リーマンショック以降、急激に収益を落とした人材派遣業は、派遣に依存しない収益体制を目指し、周辺分野へのM&Aを活発化させ収益回復を図っている。転職希望者と企業との仲介、内定を得るための教育や実践的ノウハウの提供、意欲ある中高年への機会提供、業務を一括引き受けるBPO等、人材派遣業でのノウハウを活かしながら市場のニーズに応える新たな人材ビジネスを展開し始めている。

魅力③:派遣社員の意識
派遣社員の内、正社員としての働き口がないために派遣社員を続ける者は52%という調査結果もあるが、自ら派遣社員を望み就労している者も半数存在する。欧米並みとは言えないが、高度な技術、特殊な技能を持つ派遣社員には、高額な給与が支払われるため、時間的にも自由度の高い企業を選びながら、さらなるキャリアアップを目指すというスタイルである。将来起業を志し、産業構造を変えていく可能性のある人材に、機会を与えているのも人材派遣である。


人材派遣銘柄のリスク

ここにきて若年層の貧困化やワーキングプアの原因が、「人材派遣という雇用形態」にあるのではという議論の中、政府は規制強化の方向に舵をきった。規制緩和により大きく業績を伸ばしてきた業界であるがゆえに、景気とともに各界からの要請による法体系が今後の人材派遣業界に大きく影響を与える。同時に、社会批判を受けない、法令に基づき事業を継続するコンプライアンス対策(法令遵守)が、人材派遣企業の優劣を決めることになる。


人材派遣関連銘柄

派遣スタッフ(派遣労働者)は派遣会社と「雇用契約」を結び、派遣会社は派遣先企業と「人材派遣契約」を結ぶことで、派遣スタッフを派遣先企業に派遣する。派遣先企業は、人材派遣を受けた対価として派遣会社に派遣料金を支払い、派遣スタッフは派遣会社から給与支払を受ける。派遣先企業は、派遣スタッフに対して仕事上の指揮・命令権を持つ。

①テンプHD<2181>
人材派遣・請負・人材紹介を行う事業グループの経営計画・管理を行う。13年4月に子会社化した人材サービス大手のインテリジェンスが連結に寄与している。業界2位。

②パソナグループ<2168>
人材派遣の草分けで業界3位。主力は人材派遣であるが、委託・請負、再就職支援に注力。上場子人材派遣・請負・人材紹介を行う事業グループの経営計画・管理を行う。13年4月に子会社化した人材サービス大手のインテリジェンスが連結に寄与している。業界2位。会社・福利厚生代行が稼ぎ頭。海外でも展開する。

③アデコ
世界的な総合人材サービス企業であるアデコグループの日本法人。グローバルに人材提供できると同時に人材に関する多様な課題解決をサポートする。

④リクルートスタフィング
リクルートグループの総合力を生かした人材派遣会社。派遣スタッフからの口コミ・評判が高い。10月1日にJava・PHPのエンジニアに特化した派遣求人サイトを開設し、エンジニア就業機会の創出を目指す。