ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「4か月ぶりドル円月足が陰線。貿易収支フラット化に対処する手法は。日銀が異例の為替相場言及」

ドル円=138-143、ユーロ円=153-158、ユーロドル=1.08-1.13

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨11位(11位)、株価4位(3位)、4か月ぶりドル円月足が陰線。貿易収支フラット化に対処する手法は。日銀が異例の為替相場言及」
7月はまだ本日の末日を残しているが、ドル円の月足は4か月ぶりの陰線となりそうだ。円全体では月間では4位、先週も4位と、年間では11位であるが少し強くなってきた。6月の23か月ぶりの貿易黒字に示されるが如く、エネルギー価格の下落で輸入が激減し、昨年20兆円に近い日本史上最大の貿易赤字となった状況からは大きく改善している。ただ、まだ貿易収支がフラットになっただけで20世紀のような黒字大国・超円高時代に戻ったわけではない。実需の大きな傾きがなくなり、方向感が出にくくなったというのが現状だ。

 日銀は年度後半に物価が2%を割り込むというシナリオが崩れ、財務省やIMFからも緩和修正の圧力もあり、長期金利が「0.5%と1%の間に上昇していく」ことを容認しYCCを修正した。自ら手足を縛っていた政策を修正、他の先進国同様に市場原理に任せる方向へ舵をきった。不自然なことは止めるべきだ。修正の要因の一つとして、黒田総裁時代には言及しなかった為替にも触れた。総裁は「今回は為替市場のボラティリティも含めて考えている」と述べた。

 最近の原油高や、小麦価格の上昇で、再びまだ日本の輸入が増加する恐れはあるものの、貿易収支がフラットとなった以上、一方向には動きにくいので、動いても戻しも速くなる。為替に傾向が出るのは貿易収支にも傾向が出るかどうかだ。7月上旬は赤字に戻ったが1389億円と小さい。7月中旬分は8月8日に発表される。

*米ドル「通貨6位(6位)、株価(NYダウ)12位(11位)、景気回復でもドルは強くはない」
 ドルは12通貨中6位で中くらいの強さを維持している。米国2Q・GDP成長率は前期比年率2.4%増で一般の予想の1.8%増を上回った。アトランタ連銀の発表するGDPナウはピタリ2.4%増を予想していた。そのGDPナウでは3Qの予想を3.5%増でスタートさせている。 IMFも2023年の成長見通しを1.6%から1.8%へと上方修正している。

 米国は良い方向へ向かっているのではないか。それはドル高を意味するものではない。昨年(2位)の強さはない。資源価格の下落で、取引通貨のドルを買う必要性が減じているからだ。「FRBはインフレは鈍化傾向が続いているとしている。2%の物価目標に到達するだいぶ前に利上げは停止すると考えている。ただ利下げは今年はないだろう。多くのメンバーが来年の利下げを予測している」。

景気回復でインフレ鈍化は理想的な形で、米株高もそれを評価している。今週は雇用統計の発表があるが、少し悪化しても、利下げへの道を広げることとなる。従来の貿易赤字、ドル安のほうが米国にとっては好材料となる。不安要因はこのところ上昇に転じている原油高や小麦相場の上昇だ。インフレ反転にも結び付いてしまう。それと数年ごとに押し寄せる不良債権問題だ。

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価6位(7位)DAX)、景気悪化でやや強いユーロ。景気回復の米国のドルより強いのは需給によるもの」
 2023年は持たざる国が強く、ユーロも4位となっている。ただ景気は弱い。ドイツが特に弱い。IMFは世界の成長見通しを4月の2.8%から3.0%に上方修正したが、ドイツの成長見通しをマイナス0.1%からマイナス0.3%へ下方修正した。インフレでもユーロ圏は6月で5.5%だがドイツは7月で6.2%でインフレを高めている。既にインフレを2%前後に低下させているギリシャやスペインとは差が出ている。それでも今年のユーロが比較的強いのは資源価格低下での貿易収支の改善だ。元々日本ほどエネルギーの海外依存度は高くはない。
 予想通り0.25%の利上げを行ったECBのラガルド総裁は、ユーロ圏の経済情勢は悪化しているが、インフレ抑制に向けた追加利上げの選択肢は温存した。ラガルド総裁は「9月とその後の決定についてはオープンな考えだ。利上げをするかもしれないし、据え置くかもしれない」と発言。据え置く場合は「必ずしも長期間続けるとは限らない」と述べた。

 独の2Q・GDPは前期比ゼロ%と横ばいだった。マイナス成長の回避は3四半期ぶり。ウクライナ危機によるインフレで落ち込んでいた個人消費は持ち直しつつあるが、景気低迷から抜け出せていない。今週はユーロ圏の2Q・GDPと7月消費者物価に注目したい。

*ポンド「通貨2位(3位)、株価19位(18位)、CPI上昇鈍化で、政策金利は0.25%利上げに留まる予想」
 ポンドは12通貨中位2位と強い。株価指数は19位と低迷している。今週の政策金利決定では、0.25%の利上げ予想が多い。当初は0.5%利上げ予想が優勢であったが、6月の消費者物価の前年比上昇率は7.9%と、5月の8.7%から予想以上に鈍化したことで、利上げ幅予想が縮小した。

 IMFは2023年と24年の経済成長予測を据え置いた。エネルギー価格の下落やEUとの関係改善、金融市場の安定化に伴い、経済成長見通しは年初から改善していると指摘した。年初は23年のリセッションが危惧されていた。成長率は23年が0.4%、24年は1.0%と予想、5月時の予想を据え置いた。4月時点の23年予想はマイナス0.3%だった。家計消費と企業投資が好調に推移しているとした。

 ハント英財務相の経済顧問らは、英中銀が今後数カ月間に過度な利上げを実施し、経済を不必要なリセッションへと追い込む恐れがあるとの懸念を強めている。メンバーの過半数は30年ぶりの急ピッチで進めている英中銀の利上げは減速の必要があると強く考えているようだ。それもあってか、英中銀は、バーナンキ元FRB議長の指揮により、経済予測の見直しに着手すると発表した。

*豪ドル「通貨7位(7位)、株価17位(16位)、CPI伸び鈍化、弱い小売売上で政策金利据え置き予想も浮上」
 今年は円より強く、ドルより弱い。7月は先週は最弱通貨、月間でもここまで12通貨中11位と弱い。雇用は堅調だが政策金利決定を前に2つの弱い指標が出た。2Q消費者物価は上昇率は予想以上に減速し、追加利上げ圧力が弱まる可能性を示唆した。休暇関連やガソリンの価格が下落した。前年比の伸びが1Qの7.0%から6.0%に鈍化した。また6月の小売売上高は前月比0.8%減となり、今年最大の落ち込みを記録した。金利高や物価上昇が購買力低下を招いた。 予想は横ばいだった。5月は0.8%増加していた。

 RBAが政策会合で金利を4.1%に据え置くとの観測が高まってきた。逆に0.25%利上げするとなると インフレ率が引き続き目標の2-3%を上回っていることを理由とするだろう。財インフレ率が7.6%から5.8%に低下する一方、当局が高止まりを懸念するサービス部門のインフレ率は6.3%と22年ぶり高水準に加速している。雇用も強く、失業率は約50年ぶり低水準にとどまっていることもある。FRBが0.25%利上げしたことも影響するだろう。本日はTDの7月インフレ指標の発表もある。

*NZドル「通貨8位(8位)、株価18位(17位)、リセッション経済の苦しみ。ただ円よりは強い2023年」
 豪ドルより若干弱いが、ほぼパラレルに動いている。全体では8位と強くはない。株価も4.13%高と低迷している。リセッションに陥った経済を立て直すべく、経済団体を連れて訪中し、両国の全面的な戦略的パートナーシップに関する共同声明を発表、外交、貿易・経済、国防の分野における幅広い分野で協力を拡大することを盛り込んだ。ただ肝心の中国経済も減速している。先週は中国共産党の中央政治局会議で景気支援強化と内需拡大の方針が示されたことがあり一時NZドルも戻したが持続性はなかった。

 NZ国内要因としては、消費者物価の鈍化、不動産価格下落、乳製品価格も下落し、インフレ鈍化には好影響も力強さがなくなってきた。それゆえに、7月会合では金利据え置きを決定し、これまでの利上げが想定通りにインフレ圧力を弱めているとの認識を示し、「制約的な水準」に維持する見通しとしている。最近の指標では、7月消費者信頼感指数、各種PMIなども前月比悪化した。
 好材料としては6月貿易収支もわずかながら黒字(9百万NZドル)となり、3か月連続で貿易黒字が続いていることだ。ただ輸出入とも前月比で縮小している。今週は2Q雇用統計や7月企業信頼感、6月住宅建設許可の発表がある。