この記事は2023年8月18日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「GDPの動向を予測する上で役立つ「実質輸出入」」を一部編集し、転載したものです。


GDPの動向を予測する上で役立つ「実質輸出入」
(画像=ZoomTeam/stock.adobe.com)

(日本銀行「実質輸出入」)

日本銀行の調査統計局が作成し、分析データとして公表している「実質輸出入」。これは、実質GDPの構成項目である外需(財)の動向を予測する上でも役立つデータだ。

財務省は毎月1回、午前8時50分に「貿易統計」を公表し、日銀も同日午後2時に「実質輸出入」を公表している。実質輸出入は、財務省の貿易統計で示された財の名目輸出入金額を、日本銀行が作成・公表する輸出入物価指数で割ることで算出したものだ。GDPの輸出入と同じ考え方に基づき、名目金額を物価指数で割り、物価変動の影響を除去することで作成される。そのため、実質的な価値ベースの輸出入の動きを表すことができる。

2023年4~6月期の実質輸出入の動向を見ると、輸出は前期比2.7%増で、前期比年率で11.1%の増加になった(図表1)。地域別に見ると、米国向け輸出が前期比3.8%増、EU向けが10.0%増となり、どちらも2四半期ぶりの増加に転じている(図表2)。アジア向けは1.7%減で3四半期連続で減少した。アジア向けの内訳では、中国向けが3.0%の増加となったが、ASEAN等向けが3.9%の減少となっている。

また、財別に見ると、2四半期ぶりに増加になったのは、13.7%増の自動車関連だ(図表3)。半導体などの部材供給不足の影響が緩和してきたことが、増加の要因として挙げられる。中間財は前期比2.7%減、情報関連が1.3%減と、どちらも2四半期連続の減少になった。資本財は前期比1.8%減で3四半期連続の減少になった。

輸出入の控除項目である輸入は前期比1.1%の減少、前期比年率は4.2%の減少となったことから、GDPにとってはプラスに寄与することになる。つまり、7月20日に公表された6月実質輸出入のデータから、8月15日公表の4~6月期GDP第1次速報値の外需(財)の前期比寄与度がプラスになることが予測できたということだ。

GDPの動向を予測する上で役立つ「実質輸出入」
(画像=きんざいOnline)
GDPの動向を予測する上で役立つ「実質輸出入」
(画像=きんざいOnline)
GDPの動向を予測する上で役立つ「実質輸出入」
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景気探検家・エコノミスト/宅森 昭吉
週刊金融財政事情 2023年8月22日号