安積蒸溜所の発祥と歴史
安積蒸溜所は長い歴史をもっており、ウイスキー不遇の時代のある出合いがきっかけで現在の形になりました。
安積蒸溜所の歴史を解説します。
笹の川酒造の創業
笹の川酒造の創業は1765年となっていますが、古くは1710年に猪苗代湖近辺の家に酒札(酒類の商品切手)の記録が残っており、酒蔵として300年以上の歴史があることが分かります。
1946年に前身である山桜酒造がウイスキーの製造免許を取得。
地ウイスキーブームに沸いた80年代には、一升瓶入りの「チェリーウイスキー」が爆発的にヒットしました。
「イチローズモルト」との出合い
80年代に「チェリーウイスキー」が人気を得たものの、その後消費者の嗜好の変化とともにウイスキーは不遇の時代へ突入します。
笹の川酒造で造っていた原酒は出荷されず貯蔵庫の中で眠ることになり、笹の川酒造と同じく大手の東亜酒造はウイスキー造りを休止しました。
東亜酒造の旧羽生蒸溜所は2004年に閉鎖され、笹の川酒造は旧羽生蒸溜所原酒の樽の一部を引き取り、廃棄処分の危機を救いました。
この原酒が、後に人気を博した「イチローズモルト」です。
安積蒸溜所の誕生
2014年、笹の川酒造で貯蔵していたウイスキーも「山桜」ブランドでリリースされ、日の目を見ることになります。
2016年に福島県郡山郡に安積蒸溜所を開設し、本格的に「山桜」ブランドのウイスキー製造をスタートさせました。
同年11月に敷地内にあった古い清酒蔵を蒸留棟に改装し、生産を開始したのです。
2019年12月には、初のシングルモルト「安積 ザ・ファースト」がリリースされました。
安積蒸溜所のウイスキーの製法
旧羽生蒸溜所の原酒の一部の貯蔵を引き受けたことが縁で、安積蒸溜所の製造プランには「イチローズモルト」で知られる肥土伊知郎氏の助言が随所に活かされています。
安積蒸溜所の設備
2016年に敷地内にあった古い清酒蔵を蒸留棟に改装し、ウイスキー製造を開始しました。
現在稼働するマッシュタンとポットスチル2基はいずれも三宅製作所製です。
仕込みはワンバッチあたり麦芽400kg、初留器の容量は2,000L、再留器の容量は1,000Lというごく小規模での製造を行っています。
ウイスキーの水と原料
仕込みに使用している磐梯山系の伏流水は、ウイスキー造りに適した軟水です。
主な麦芽は英国スコットランド産のノンピート麦芽と、フェノール値50ppmのヘビリーピート麦芽です。
フェノール値とは
麦芽のフェノール化合物の割合を表す値で、数値が高いほどスモーキーなピートの風味が強くなる。