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(画像=YAMAGATA DESIGN株式会社)
山中 大介(やまなか だいすけ)
YAMAGATA DESIGN株式会社代表取締役
1985年生まれ、東京都出身。三井不動産(株)に入社し、大型商業施設の開発と運営に携わった後、2014年山形県庄内地方に移住しヤマガタデザイン(株)を設立。地域と全国から資本調達(38億円)し、その資金を元手に、観光、教育、人材、 農業の4分野で事業を手掛け、山形庄内から全国にも展開可能な課題解決型街づくり事業のモデルづくりに挑む。2022年、ニッポン新事業創出大賞「経済産業大臣賞」「地方創生賞」をW受賞、日本サービス大賞「地方創生大臣賞」を受賞。
YAMAGATA DESIGN株式会社
地方都市の課題を希望に変える街づくり会社。山形庄内から全国にも展開可能な課題解決のモデルづくりに挑む。田んぼに浮かぶ 木造ホテル「スイデンテラス」、天性重視個性伸長の教育施設「キッズドームソライ」、リクルートメディア「チイキズカン」、有機農業を軸に生産/販売、資材開発を行う「ヤマガタデザインアグリ」、自動抑草ロボの開発、米穀流通を行う「有機米デザイン」などの街づくり事業を手掛ける。

YAMAGATA DESIGNを立ち上げようと思ったきっかけや事業の変遷とは?

ーそれでは、まず起業のきっかけについて教えていただけますでしょうか。

私が起業を決意した背景には、以前勤めていた不動産デベロッパーでの経験が大いに関係しています。当時はアジアや海外で人口が爆発的に増えており、そのマーケットで日本が過去成功してきたビジネスモデルをそのまま当てはめることで、収益を上げていくビジネスが社会一般的でした。 しかし、私自身は、日本という場所から世界に対して価値を提供することに興味を持っていました。 その思いから、日本国内から世界を変えるようなチャレンジに取り組みたいと考え、山形の鶴岡に位置するSpiber社に転職をしました。当初は、地球規模の問題を解決する、夢の素材開発をしている会社程度の理解でしたが、それが面白そうだと感じ、転職及び移住を決意しました。

ただ、転職当時、Spiber社は研究開発のフェーズで、事業開発担当であった私自身が会社に貢献できることは少ないと感じ、兼業という形でヤマガタデザイン株式会社を設立しました。地域貢献の思いから「地域のまちづくり会社」として当社を設立し、未利用のサイエンスパーク(産業都市を目指す地域のインフラを指す)を開発することからスタートしました。

ー続いて、創業後の事業展開や変遷について教えていただけますか?

前述の通り、最初はサイエンスパークの開発から事業を開始しました。その後、資金調達や土地売却益を観光事業、教育事業に投資し、地域の皆さんと共に満足度の高い街を作るという目標に向けて事業を推進していきました。当時は、プロジェクト推進のための会社でしたので、私自身もそのサイエンスパーク開発が終わったら、ホテル売却などを経て、Spiber社に戻ろうと考えていました。

ーその後の事業展開についてはどうですか?

地域の方々からの見方が変わり、応援していただけるようになったことで、相談が寄せられ、主軸でもある農業や人材事業などを含めた新たな分野に取り組むきっかけとなりました。我々も地域にもっと貢献したいという気持ちがありましたが、それだけでは事業は広がらないと考えています。地方で新たな事業を作るのは難しいですが、地域コミュニティの良さと困難さを突破して実績を作り上げ、信頼を得て様々な機会を得ることができたと思っています。

ー現在は観光、教育、人材、農業といった4つの事業を展開されていると思いますが、それぞれの事業についてどのような思いで取り組んでいるのでしょうか?

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大前提、私自身の考え方としては、世の中の資本主義のあらゆる仕組みを活用して社会を良くすることが目的です。それゆえに、事業ごとのアップサイドを描きつつ資金を調達し、その資金を元にサービスをより多くの人に届けるために、それぞれの事業ごとに異なる採算指標を設定し、メリハリを持って運営しています。

事業内容の詳細について、現在当社は観光事業を主軸に据えていますが、農業事業に大きく投資をしていこうと考えていて、2030年にはグループ全体の売上を百億円にするという目標を掲げています。

当社の主軸である観光事業の「スイデンテラス(米どころ庄内平野の水田の上に浮かぶように建つホテル)」というプロジェクトを一定レベルまで推進させ、教育事業の「ソライ(「夢中体験」をとおしてジブンを育んでいくことを目的にした全天候型の児童教育施設)」にも取り組んでいます。教育は将来的に地域や社会を大きく変える可能性を持っていますが、子供の生まれた地域や家庭の経済状況によって、我々のサービスを届けることが難しい場合があります。短期的な投資対効果の推測が難しく、ビジネスとして成立するのかという哲学的なジレンマを抱えつつも、地域社会にとって重要な事業という自負を持って運営しています。

事業の強みや会社規模の拡大について

ーさまざまな事業を展開している中で、各事業の強みをそれぞれどのように連携させているのでしょうか?それとも各事業は個別に考えられているのでしょうか?

各事業は個別で成立している必要があり、その上でシナジーを発揮することができると考えています。

ただ完全にシナジーを発揮できているわけではないです。今までのフェーズでは、個々の事業を強化することに重点を置き、その結果としてシナジーが生まれてきました。しかし、現状もしくはこれからはもっと積極的に我々からシナジーを生み出せるように仕掛けていく必要があると考えています。

ーそのシナジーが結果として生まれたというのは、領域が近いため、連携が必要な部分で自然とシナジーが生まれてきたという認識でよろしいですか?

そうですね。例えば、観光事業を軸にするとわかりやすいですが、実はファミリー層のお客様も多く、これからの時代では、観光や旅行を考えるとき、子供を中心にした地方旅行のニーズが増えていくと思います。また、観光と農業の親和性は高く、我々のレストランでは可能な限り有機栽培や減農薬の野菜を庄内から集めています。 さらに、我々が行っている人材事業では自社の人材採用にもそのサービスを活用しています。 このように我々の事業はどこかで他事業と繋がっており、我々はまちづくり会社として、能動的に仕掛けられる会社にならなければならないと考えています。会社のバリューは間違いなく農業の分野にあると思います。

ー農業の分野というのは、日本の農業がまだ改善の余地を残しているという意味で、より効率的な方法を模索しているということですね。

具体的にはどのような点で特に成果を出せると思いますか?

日本の農業を考えたとき、食料安全保障や国内需要への対応という観点から、日本の農業の未来は厳しいと言わざるを得ません。日本の人口は減少し、高齢化率は増加し続けています。それに伴い、日本国内の食材需要も減少しています。しかしながら、食料安全保障という観点から、国内で農業を維持することが重要だという議論がなされています。そのような状況下では農家が利益を出すことは難しいでしょう。

さらに、現在の農作物作りには、窒素・リン酸・カリという三大要素が必要で、これらの肥料は99%が海外からの輸入に頼っています。つまり、日本人が考える食料安全保障は実は成立していないのです。もし日本が貿易を断行し、これらの肥料が入ってこないと、日本は作物を作ることができなくなります。

そこで、日本の農業は国内の未利用資源をうまく循環させて、有機農業にシフトするべきだと考えています。しかし、有機農業だけでは、現在の日本の人口を養うには不十分なので、詰まるところ、食料安全保障を日本だけで成立させることは困難であり、海外とのつながりを持つことが必要だと考えております。

ーそれでは、山中さんが見ている日本の農業のチャンスは何でしょうか?

日本の農業のチャンスは、工場化や機械化が進んでいないところにあります。これから世界の人口は増加し、食料需要も増えていきます。その結果、機械化された工業農場や植物工場が増えていくでしょう。しかし、そのような農業はエネルギーコストが安い国で行うべきです。日本でそれを行っても、エネルギーコストが高くなり、海外に輸出することは難しいでしょう。

そこで、私は日本の農業は、自然の力、水と土でプレミアムな作物を作る方向に進むべきだと考えています。私たちの会社が有機農業に取り組んでいるのも、そのためです。現状では、私たちが作っている有機農産物は国内市場でよく売れています。しかし、日本の農業がアナログであるほど、需要は高まっていきます。

世界の人口が100億人になったとき、プレミアムな農産物を求める層は数パーセントでも、それは大きなマーケットになります。日本は間違いなくそのマーケットを目指すべきです。

ー日本の農業が国内外問わず、富裕層のマーケットやプレミアム農作物を作るマーケットを目指すべきということですね。

はい、その通りです。日本の農業は、担い手が減っていきますし、国内の需要も減っていきます。日本の農業は、国内外問わず、富裕層のマーケットやプレミアム農作物を作るマーケットを目指して、進化していくべきです。

ー日本製の製品を、自然を大切にする視点から作り上げ、海外に展開、輸出していくというイメージでしょうか。

基本的には、今、わかりやすくストーリーを消費者に伝えたいと考えています。例えば、ユーザーさんがお子さんを持っていたら、その子たちは必ずSDGsの教育を受けています。日本では既に数年前からSDGs教育が始まっており、これにより市場の変化が起こります。日本人の義務教育を受ける小学生全員が、プラスチックが海洋生物を困らせているという教育を受けています。これから大人になる彼らがSDGs教育を受けた人たちとなり、彼らが求める市場は全く変わるでしょう。

ーつまり、現在のSDGsやエシカル商品の市場は、意識が高い人たちが少し高価でも買うという状況ですが、これから10年、20年のスパンで考えると大きくなるということですね。

その通りです。それは、我々がなぜ将来を見据えて行動しているかというと、それは教育が将来のマーケットを作るからです。そこが我々が今一番大きく見出しているマーケットポテンシャルです。私たちの会社は日本中を全部有機農業にすればいいと考えています。全てが有機であれば、将来必ず10年、20年でマーケットは作られてくるでしょう。

ーなるほど、その時には「メイドインジャパン」だけでなく、日本国内の未利用資源の循環で有機的に農業を行っているというストーリーが必要ということですね。

そういった取り組みを私たちは応援していきたいと思います。

地域とのつながりや愛されるための秘訣

ー先ほど、地域の方々と信頼関係を築くことが大事だという話がありましたが、地域に愛されるための秘訣があれば、教えていただけますか?

前提として、地域に愛されるというのは結果の一部であると考えています。また、地方から新しいチャレンジが生まれない理由は、初めから地域の人の共感を求めに行ってしまうことだと思っています。

そうではなく、重要なポイントは、とにかく地域の人たちと一緒に、新しい既成事実を作ることです。まずはやってしまい、一緒にやったことが目に見える形になったときに、地域の人たちにどんどん理解していただけます。

過去の壁を乗り越えた経験やブレイクスルーのポイント

ーこれまでの取り組みの中で、ブレイクスルーのポイントや成功の秘訣など、特に印象に残ったエピソードがあれば教えていただけますか?

我々の最大の強みは、優秀な人材と長期的な視点で新たな挑戦を行っている点だと思います。

私自身は、時間をコストではなく資産と捉えています。また、今の社会が停滞していると感じており、その原因は時間をコストと見なし、短期的な利益を追求する風潮があるからだと思います。

その結果、ITベンチャーなどでは、成長率の追求が最優先となり、長期的に社会を変革するようなチャレンジがなかなか行われていないのです。

特に、農業業界は、イノベーションを起こすために必要な時間を得られず、遅れが見られる領域だと思っています。そのような事業のイノベーションを起こすことによって、人間や社会が豊かになるはずなのに、時間という制約により、本来良かった事業が歪んでしまうのは、私は非常に残念に思います。

だからこそ、同じ思いを持つ人たちとともに、資本構成も含めて、中長期的な視点で社会に影響を与えることに注力していき、資本パートナーや事業パートナーが我々のグループと共に揃っていることが、最大の強みだと考えています。

今後の展望について

ーありがとうございます。今後の展望を伺いたいと思います。山中さんが考える未来のビジョンは何でしょうか。5年後、10年後といった長期的な視点でも構いません。

私たちのビジョンは「地方の希望であれ」です。つまり、地方の活性化を実現することです。例えば、私たちの会社がユニコーン企業になるというのは結果として起こり得る未来かもしれませんが、最も重要なのは地方の人々がその主役となることです。

あくまで私たちが目指すのは、地方でどれだけ主役を増やせるかどうかです。よく庄内で展開する「スイゲンテラス」を他の地域でも作ってほしいと言われますが、それをやると面白みがなくなりますし、それが社会全体の発展につながるとは思えません。その地域のことは、その地域の人々が最もよく知っていますし、その地域を変えていくときに最もストーリーがあるのはその地域の人々です。私たちの取り組みを通じて、様々な地方の人々が未来を考え、挑戦することができるようになることを願っています。

ー人材、つまり、その地域で活動する主役が不足しているという課題に対して、現在、重点的に取り組んでいることは何でしょうか。

現在、重点的に取り組んでいることは、人材育成・教育です。教育と一言で言いますが、実際には難しい部分もありますが、私たちはその課題に対して真剣に取り組んでいます。

最近はニューズピクス(メディア)と連携して地域企業と都市部の経営人材を繋ぐサービスをローンチしています。

ー地方企業側は、どのようなことを考えるべきでしょうか?

地方企業は都市部の多様な人材の活用をもっと積極的に考えるべきです。我々の会社では副業制度があり、業務委託社員に部門長を任せたり、週に何日しか働かない人たちにも重要な仕事を任せていますが、地方企業がこれを実現できない理由は、社長たちが新しい働き方や組織の作り方を知らないからです。そのため、チイキズカンという新しいサービスを通じて、企業側の意識啓蒙を行います。

具体的には、我々が一定の人材を地方企業に送り込むことで、地方企業がどのように人材を活用できるかを示します。これにより、地方企業の意識を変え、都市部の優秀な人材を送り込むことができます。

ー非常に興味深いですね。これからのお取組みがとても楽しみです。本日は貴重な時間をありがとうございました。

氏名
山中 大介(やまなか だいすけ)
会社名
YAMAGATA DESIGN株式会社
役職
代表取締役