この記事は2023年9月28日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「図研【6947・プライム】」を一部編集し、転載したものです。
プリント基板設計用CAD/CAMシステムで国内首位
最先端のソフトウェアとサービスで世界の製造業を支える
図研は、自社開発のソフトウェアで世界のモノづくり企業の効率化を支援する独立系IT企業だ。神奈川県横浜市の本社の他、イギリス・ドイツ・米国シリコンバレーに開発拠点を持ち、世界14カ国で事業を展開。プリント基板設計用CAD/CAMシステムの売上では国内首位、世界でもトップクラスのシェアを有する。顧客は電気・医療・産業機器、自動車、航空機など幅広く、国内数千社超、海外を含めると数万社に及ぶ。近年は“産業のコメ”と言われる半導体分野へのソリューション開発に注力している。
▼勝部 迅也 社長
2期連続で最高業績更新
営業利益は前期比13・4%増
図研は、プリント基板設計用のCAD/CAMシステム(※1)やワイヤーハーネス設計用のシステムなどのソフトウェアを開発、販売している。
現在、関連会社を国内に7社、日本・イギリス・ドイツ・米国の4カ国6カ所に研究開発拠点を持ち、世界14カ国で事業を展開。欧米メーカーが先行する業界で、プリント基板設計用CAD/CAMシステムは国内首位、世界でトップクラスのシェア。車両用ワイヤーハーネス(※2)設計システムでも、世界トップクラスのシェアを有する。
製品分野は大きく4つに分かれる。半導体などの電子部品を搭載したプリント基板(PCB)レイアウトに関わる基板設計ソリューション。回路設計、ワイヤハーネス設計などに関わる回路設計ソリューション。各種情報・データベースの利活用などデータマネジメントを行うITソリューション。各ソリューションのライセンスの保守・アップデート(更新)などを行うクライアントサービスだ。
23年3月期の連結売上高は前期比11・3%増の350億7300万円、営業利益は同13・4%増の44億2800万円。コロナの収束によりともに2期連続で、過去最高を更新した。
売上高の割合は、海外比率が約3割を占めている。事業別の売上高構成比は、基板設計ソリューションが12%、回路設計ソリューションが22%、ITソリューションが24%、クライアントサービスが42%。特にITソリューションが前年から15%伸びた。
「まずは新規ソリューションをリリースして売上げを作っていくことを考えています。それにより結果的に保守・メンテナンスのクライアントサービスが4割、5割近くなる、安定した売上構造が出来上がっていくのです」(勝部迅也社長)
▼基板設計用CADシステム「CR-8000 Design Force」の実際の画面
日本初の汎用製品パッケージ
サードパーティとの関係構築強み
1976年、同社は手書きだったプリント基板の設計図を自動化するコンピュータシステム(CAD/CAM)を開発・販売する会社として創業した。
当時、すでに米国で同様のシステムは販売されていたが、それらの製品は「アナログ信号の繊細な処理が重要となる日本の音響メーカーなどが求める“キレイで柔らかな音”を出すことが難しかった」(同氏)という。
当時は各社の内製であったプリント基板設計用のシステムを日本で初めて汎用製品のパッケージとして開発、商品化した。その後も高い技術力とシステム構築力で、高品質なソフトウェアを数々開発。祖業のCADシステムメーカーからソリューション事業、それらに附帯するクライアントサービス事業へと領域を拡大させていった。
83年に米国カリフォルニアに拠点を開設。92年にドイツ・韓国・シンガポール、93年に中国など、積極的に海外マーケットに進出。現在の顧客は国内4000社超、海外を含めると数万社を数える。販売先上位顧客も通信機器・自動車・車載エレクトロニクス・建設機械・電子部品・事務用機器など多種多様だ。
「基本的に、製造業で電気で動くモノづくりをする会社は全て当社のお客様で、ユーザーは幅広いです。地域的なバランスも取れていますので、大きな浮き沈みがありません」(同氏)
単体の社員数は約430名、グループ連結で約1500名の同社が、多くの地域、数の顧客のニーズに対応できているのは、サードパーティ(第三者)とのパートナーシップがあるからだという。自社の社員を中心に、アライアンス先とも様々な協力関係を構築することで、品質とスピードが問われるソフトウェア開発で多くの契約を獲得してきた。
「我々はトータル1500人くらいの会社ですが、何十社という連携・協力関係にある会社が付いていることで、何千人という会社に相当する開発力を持っていることになります」(同氏)
ストック収益増加とDXで、
25年3月期売上400億円目標
3カ年計画では、最終年の25年3月期に売上高400億円、営業利益60億円、営業利益率15%の達成を掲げている。現在12%台で推移している営業利益率を上げていくため、2つの戦略を示している。
1つは、安定的なストック収益である保守契約料率の価格改定だ。案件ごとに内容を精査した上で価格の適正化を図っていくとともに、顧客ニーズに合った新規ソリューションの提案で、低下しがちな料率を上げていく。もう1つは、コロナ禍で進んだ営業活動のオンライン化などの一層のDX化だ。営業や販売、開発業務の効率化を進めて活動費を抑え、利益を押し上げていく。
また同社は事業伸長の柱にM&Aを位置付けている。特に、現在注力している技術変化の激しい分野は、機動的な技術の獲得がアドバンテージになる。
「競争のスピードに追いつくためにはM&Aも事業を拡大する方策として必要だと思っています」(同氏)
2023年3月期 連結業績
売上高 | 350億7,300万円 | 11.3%増 |
---|---|---|
営業利益 | 44億2,800万円 | 13.4%増 |
経常利益 | 47億3,500万円 | 13.4%増 |
当期純利益 | 31億9,600万円 | 6.4%増 |
2024年3月期 連結業績予想
売上高 | 370億円 | 5.5%増 |
---|---|---|
営業利益 | 46億円 | 3.9%増 |
経常利益 | 49億円 | 3.5%増 |
当期純利益 | 33億5,000万円 | 4.8%増 |
※株主手帳23年10月号発売日時点
20年4月代表取締役社長に就任(現任)。