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伊藤 謙自(いとう けんじ)
スパイダープラス株式会社代表取締役CEO
北海道紋別市で育つ。高校卒業後に上京し建設資材商社営業、熱絶縁工事の施工管理を経て、1997年に伊藤工業を創業。 建設業界のIT化の遅れを自ら体感し、タブレット登場とともに建設業をターゲットにしたIT事業を開始。ものづくりの原点は子供時代のガンプラ作り。建設現場の目線を常に忘れず、プロダクト開発のモットーは「俺でも分かるように作れ」。
スパイダープラス株式会社
「私たちは、“働く”にもっと「楽しい」を創造する。」をミッションに掲げるスパイダープラスは、手間のかかる作業や段取りから働く人を解放し、人間にしかできないことにエネルギーを傾けて仕事をすることができる、働く喜びを生み出すことを目的に自社で建設DXサービス「SPIDERPLUS」の開発提供を行なっています。 スパイダープラスは、建設DX推進を牽引し、現場で働くことにさらなる『楽しい』を創造すべく事業に邁進し、建設業界をさらに魅力的な業界にするよう、取り組んでまいります。

これまでの事業変遷について

冨田:始めに、これまでの事業の変遷についてお聞かせください。

伊藤: 独立をしたのが1997年のことです。当時、建設資材の商社に勤めていて、断熱材の販売に携わっていました。その後、お客様から誘いを受けて、断熱工事の会社として独立したのが始まりです。

その後、元受けになるために法人化し、仕事を増やすために実績を作りました。実績が増えていくにつれてサブコンから直接仕事をもらうようになり、事業を続けていました。 当時は初代のiPadが出たタイミングだったのですが、建設業界のIT化が進んでいないことに気づきました。そこで、業務の効率化を図るために、自分たちでITツールを作ることにしました。

現場業務の実体験を踏まえて、断熱工事の積算のシステムを作りました。当初はあまり構想になかったクラウド活用にメリットがあると確信したため、クラウドベースのものにしました。その結果、ペーパーレス化が実現し、積算にかかる時間が大幅に短縮されました。

冨田:それは素晴らしい成果ですね。その後、どのように事業が進展したのですか?

伊藤: このシステムは業務効率を大幅に上げることができたので、他社にも提供できると考えました。同時に断熱工事会社に提供するだけでは規模が小さすぎると感じ、ある大手サブコンの常務に話をしたところ、会社の幹部会にお邪魔してプレゼンをする機会を得ました。

当時すでにCADで積算が可能だったとのことで、必要性を余り感じなかったとのことでした。ちょうどその頃にIT推進室を立ち上げたという経緯も重なり、図面をタブレットで持ち運ぶというペーパーレス化に興味を示してくれました。プレゼンに対する反応をきっかけに、建設業界全般で活用できる機能を開発し、現場管理アプリとして進化させることを考えました。図面から数量を抽出する機能から始め、図面に写真やコメントを貼り付ける機能を追加しました。

開発には一年を要し、初代iPadでも使えるようにしました。初代iPadにはカメラ機能がなかったのですが、次世代のiPadには搭載されると予測し、写真撮影機能を開発していました。そして、iPad2には、予想通りカメラ機能が搭載されていました。

その後、AppleのApp Storeに登録され、建設業の施工管理アプリとしては世界最初期に登録されました。現場にすぐに行って、開発に活かすことのできるR&Dという要素の大きさもサービス開発をする立場としての強みでした。お客様の中には新しく人が入ってきたときに、すぐに現場見学をさせてくれたり、SPIDERPLUSを実際に使ってる方がいらっしゃったので、機能改善も含めていろいろとディスカッションできました。

断熱工事を続けていると、営業利益が低くなる傾向になり、IT事業で出した営業利益を工事の方が引き下げてしまう現象が起きていました。そこで断熱工事の事業を2022年の1月に譲渡して、完全にITの会社になりました。

冨田:驚きですね。実業を持ちながらDXを進めていくというのは、珍しいケースだと思います。 伊藤代表が職人から始めて現在の地位に上り詰めた経験は、非常に印象的ですね。その精神と現場での経験から、深い理解を持って物事を進められる強みが感じられます。伊藤代表は業界に精通した社長として、自社の強みをどう捉えていますか?

伊藤: 建設業界を深く理解している会社ということが強みだと思います。この分野でSaaSを提供している企業は他にほとんどありません。さらに、私たちの会社にはゼネコンやサブコンの出身者が三割ほど在籍しています。そのため、顧客が使用する専門用語を理解する能力が高く、顧客からは「スパイダープラスのスタッフは、建設業界のことをよく理解している」と評価されています。

また、建設業界出身者による勉強会を開催し、リテラシーを高めることにも注力しています。建築や設備など、各業界出身者が自分の専門分野について話すことで、社内の知識が深まっています。これが私たちの強みであり、絶対的な競争力になっていると感じています。

経営の判断軸や企業を運営する上での考え方とは

冨田:今のような競争力が高いところでも、自分の地位を築いていらっしゃる御社の経営判断をする際に、伊藤代表が一番重視することは何ですか?

伊藤: 経営判断には様々な要素がありますが、一番重要視しているのは「誰得」です。お客さまの利益を最優先に考え、お客様にとって得な話であれば、すぐに取り組みます。 これは、我々のミッションとも一致しており、お客様が我々のプロダクトを使うことで、お客様の生活が豊かになることを目指しています。 それがあった上で、次に「それがちゃんと収益を上げることができるか?」という観点があります。

冨田:お客様の利益と会社の利益、両方を考慮しているわけですね。

伊藤: はい、その通りです。また、社員自身も楽しくないと、仕事をしていてもつまらないので、「社員が楽しいか?」という視点も大切にしています。

これは私自身の過去の経験からきていることなのです。建設業界の仕事は本当に大変で、その苦労を自分自身が理解しているからこそ、少しでも時間や余裕を提供できるものを作り出したいという思いは強いです。

冨田:お客様や社員のことを考えて経営判断すると仰っていましたが、社長が自身の強みと感じている部分は何でしょうか?

伊藤: 私が自分の強みだと思う部分は、経済的に非常に厳しい経験をしたということです。

初めて新規事業を立ち上げたときに全く収益が上がらず、自分たちのやっていることが正しいのか疑問に思ったことや、建設業で働いていたときにもITバブルが弾け、取引先のメイン企業が三社連続で倒産し、相当な額の未払金が発生したこともありました。

結果、私自身が経済的に困窮する状況にも陥りましたが、生きていれば何とか乗り越えることができると信じて行動を続けてきました。その経験が、今の私の強みとなっています。

また、自分がやっていることが世の中にとって必要なのだという自信を持ち続けることも大切です。確信があるからこそ、困難な状況でも最後まで踏ん張ることができます。

これから思い描く展望とは

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冨田:これまで過去の経験を伺ったので、次に、今後の未来についてお伺いしたいと思います。

伊藤: 私たちは、SPIDERPLUSというプロダクトが社会的に不可欠なもの、建設業の仕事にとってなくてはならない存在になることを目指しています。 そして、日本だけでなく、グローバルにも展開していきたいと考えています。特に、東南アジア市場を狙っており、ローカル企業まで導入を広めていくことで、真のグローバルIT企業になりたいと考えています。

冨田:なるほど、それは大変意欲的な目標ですね。日本のIT企業がグローバルで成功する例はまだまだ少ないですから、その野望は大変興味深いです。

伊藤:私たちは、言ったことを必ず実現するというのがポリシーなので、ぜひ期待していてください。 何年かかるかは断言できませんが、やると言ったら必ずやり遂げます。

冨田:それは素晴らしいですね。今日ここで直接お話を聞いて、力ある経営者であるからこそ、このような事業を作り上げられているのだと改めて感じました。ありがとうございました。

伊藤:こちらこそ、ありがとうございました。

氏名
伊藤 謙自(いとう けんじ)
会社名
スパイダープラス株式会社
役職
代表取締役CEO