本記事では「天才工場」の創設者であり、出版プロデューサー業界のベテラン、吉田氏に話を伺う。天才工場は一貫して「誰もが持つ一つの才能を引き出す」という理念のもと、数々のビジネスリーダーに影響を与え、その才能やビジョンを世に問い続けている。 吉田氏の広がるネットワークと深い経験を通じて、出版業界の変遷、本とビジネスの相互作用、そして一冊の本が人々にどれほどの影響力と価値をもたらすことができるのか、事業の変遷や将来の展望と共に紐解いていく。
(執筆・構成=野坂 汰門)
同社代表の吉田氏は童話作家であり、出版プロデューサーとしても知られる人物は、豊富な経験と知識を持つ。1960年新潟県六日町生まれで、法政大学および青山学院大学大学院を卒業後、約200冊の童話やビジネス書を執筆。 その中には『日本村100人の仲間たち』など、46万部を超えるベストセラーも含まれる。また、出版プロデュースでは、40年間で2600冊に関与し、4冊のミリオンセラーを生み出した。 出版を社会事業と捉え、NPO法人『企画のたまご屋さん』を創立し、学生向けの出版プロジェクトや全国大会も開始。また、多くの大学や専門学校で講師を務め、出版業界だけでなく、教育や文化にも大きな影響を与えている。
事業変遷と天才工場の歴史
ー「天才工場」とインパクトのある社名ですが、由来を教えていただけますか。
はい、実は私たちは元々リクルートで、今から40年以上前に学生や新入社員を対象に「天才塾」というプログラムを開催していました。
リクルートの天才塾が解散した後に、私とハトリオさん、そして久保田達也さんが立ち上げたのがこの天才工場です。最初はマッドアマノさんと共に始めた趣味の集まりでしたが、そのまま会社名になりました。
私たちは「誰もが持つ一つの才能を引き出す」を理念に掲げ、才能を見つけ、ビジネスに活かす、あるいは自分の夢を実現するために活かすことがミッションです。
ー なるほど、その才能を引き出すというのが天才工場の名前の由来なのですね。御社のミッションを成し遂げるために、展開している事業についてお聞かせいただけますか。
はい、私は元々、動画制作を行っており、自分でストーリーボードを作成していました。しかし、動画制作だけでは生計を立てることが難しく、フリーランスの記者として週刊誌に寄稿するようになりました。
その記事が次第に書籍となり、現在の事業へと繋がっていきました。
ー 御社では、これまでに1200冊もの経営者の本を作成してきたと聞いています。さらに、編集部プロダクション時代から作った本も含めると、40年間で約2500冊の本を商業出版してきたそうですね。
はい、その通りです。私たちの会社、天才工場の主な仕事は、まさにそれです。
ー なるほど、それは驚きです。最近はそのノウハウを活かして他者の本をプロデュースされていますよね?初めは無料で本を作成していたとのことですが、その詳細を教えていただけますか?
はい、最初の20年間は無料で本を作成していました。本が完成し、印税が入ってきた際にその30%を頂戴していました。しかし、この方式では大赤字で、現在の、本が売れない状況を考慮に入れると、その結果は明らかです。しかし、経験を積んでいくうちに、経営者の課題解決に特化した本を作るようになり、経営者から料金を頂戴するようになりました。そして、集客や売り上げアップ、リクルーティング、ブランディングに焦点を当てた本の制作にシフトしました。
ー 御社が黒字に転換したのは、出版社から成功している経営者に収益源を移行したからということですか。
はい、その通りです。その結果、我が社の経営状況は大幅に改善しました。
実際には、我々が紹介できる著者さんは1200名にも上ります。また、我々が運営する「ウイズビズ」では新大さんのような方々にも作品を作らせていただいています。
日経新聞での記事でも触れられていますが、「ウイズビズ」は約200,000社を組織しており、ファーストビレッジの社長の方々にも作品を作らせています。
天才工場の強みとは
ー ありがとうございます。自社の事業の強みについて教えていただけますか?
私たちの会社は、40年間にわたり出版プロデュース業を行ってきました。出版プロデューサー第一号として、私たちの一番の強みは、100%商業出版を保証することです。
そして、もし本が出版されなかった場合は、全額返金保証します。
ー 出版保証と返金保証を行っているのは御社だけだそうですね。。他のプロデューサーやページプロダクションでは、本が出版されないという事態があるということですか?
はい、その通りです。しかし、我々天才工場では、そのような事態は一度も起こってはいません。
ー その成功の秘訣を教えていただけますか?
我々の企画に対して、平均して3社程度の出版社から採用の通知をいただきます。その中から我々が最適な出版社を選ぶことができます。我々の一つ目の強みです。また、私自身が日本で最も多くの編集者とつながりを持っており、現在1500人の編集者に企画書を送っています。その結果、時には10社、20社の出版社から採用のオファーが殺到することもあります。この出版社との強固なつながりが、我々の二つ目の強みとなっています。
ー 吉田さん、あなたが手掛けた本が100万部突破、つまりミリオンセラーを6冊も達成したと聞きました。それらはすべて一つのシリーズなのでしょうか。
はい、それらは全て6つのシリーズに分けられます。例えば、「動物キャラナビ」というシリーズは、鶴本正弘先生が著者で、世界20カ国で450万部を売り上げました。
また、以前に作成した「インシュリンダイエット」という本も100万部を超えています。そして、携帯小説が流行した時期には、「赤い」という本をプロデュースしました。出版社の発表によれば、この本は300万部売れ、さらにドラマ化や映画化もされました。
ー それはすごいですね。他にどのような作品があるのでしょうか。
飛鳥出版社で出している「漫画でわかるシリーズ」もあります。これもまた100万部を超える売り上げを記録しました。
成功体験とブレイクスルー
ー 過去に何か大きな成功やブレイクスルーで特に印象的だったのはどんな出来事ですか?
過去には、何度も会社が倒産寸前の状況に直面しました。これは長い間事業を続けている会社なら、誰もが経験することだと思います。 しかし、何度も50万部を超えるベストセラーを出版し、それが我々の会社を救う一助となりました。特に印象に残っているのは「日本村百人の仲間たち」という本で、発行部数46万部を記録することができました。。
ー それは驚きました。偶然を引き寄せるために何か特別に考えていることや心がけていることはありますか。
私たちは、人間関係を大切にして全てを進めています。
たとえば、著者がいなければ本の依頼はありません。実際に、昨日は池袋の結婚式場「エラの庭」で、私たちが本を作っている著者20名を集めてパーティーを開催しました。そのパーティーを通じて、新たに本を出したい経営者を紹介してもらうのです。 また、著者が書いた企画書が採用されなければ本は作れません。そのため、編集者としての人脈も大切にしています。
ー なるほど、1500名もの人々とのつながりを保ちつつ、編集者として多様なネットワークを築いているのですね。その中で、吉田さんが自ら手がけていることと、他の人に任せていることは何ですか?
私が直接手がけているのは、自社の運営です。私を含めた10人ほどの社員がいますが、私以外の全員をサポートしています。
将来のビジョン
ー 5年後、10年後、あるいはそれ以上先の未来について、どのようなビジョンを描いていますか?
近い未来の目指すべき地点として、日本全国の経営者が一人ひとりが本を出版し、そこから会社の売上を伸ばす仕組みを作りたいと思っています。 これは手近な目標ですが、同時に一生涯を通じて追い続ける大きな夢でもあります。確かに、現在は本が売れにくい時代かもしれませんが、その状況が逆に私たちにとってはプラスに働いています。以前は出版社が一度に8000冊や10,000冊を出版していました。しかし、現在は初版の部数が3000部や4000部と減ってきています。
私たちはまず、経営者の方々に出版に挑戦していただき、会社の売り上げが上がる中で、2冊目、3冊目と続けて本を出版していくことを推奨しています。これにより、社員だけでなく、お客様や取引先も喜びます。そういった仕組みを作り上げることが私たちの一つの目標です。
ー 吉田さん、今日は東大統計ベストセラー出版についてお話しいただけますか。ピカソとは、東大統計ベストセラー出版会のことを指すのですよね?
はい、その通りです。ピカソとは、私たちのプロジェクトの頭文字を取ったもので、学生から一般の方まで、幅広い層が将来一冊の本を作る仕組みを作り上げることが私の使命だと考えています。
私が一生をかけて取り組む出版プロデュースは、自分にとって転職というより、生涯をかける仕事だと考えています。
私の目指すところは、日本最大の編集者集団を作ることです。
ーありがとうございます。最後にはなりますが、吉田さんにとって本とはどういう存在なのでしょうか?
私は本を情報の最高位だと捉えています。映像メディア、例えばテレビCMや番組は、一度出された情報はすぐに消えてしまいます。一瞬で有名になる可能性はありますが、同時にすぐに話題から外れてしまいます。一方で、本は長期的に見ると、3年も5年も会社の事業規模を拡大する力を持っています。
本の目的は人々を幸せにすることだと私は考えています。一冊の本を読んで、その人が感動したり、人生が変わったり、ビジネスがうまくいったりする。これこそが本が持つ人々に影響を与える力、つまり影響力です。
だからこそ、一冊の本は読んだ人を必ず幸せにしなければならないという使命を負っていると私は考えています。私たちの会社も、その使命を果たすために日本一人を幸せにする会社を目指しています。
- 氏名
- 吉田 浩(よしだ ひろし)
- 会社名
- 株式会社天才工場
- 役職
- 代表取締役