コクヨ株式会社
(画像=コクヨ株式会社)
井田 幸男(いだ ゆきお)
コクヨ株式会社 CSV本部 サステナビリティ推進室 理事
1988年入社。人事、提案営業、マーケティング、全社構造改革の業務を経て、2021年より現職、室長に就任。 長期ビジョン『be Unique.』の実現に向け、サステナブル経営と新たな組織能力の推進に取り組み中、神山まるごと高専様との協働活動も担当。 また、ライフキャリア実現に向けて副業で地域での活動(奈良での地域活性とウエルビィーング、長野での多様性とインクルーシブデザイン)を実践中。 仕事に向き合うコンセプトは「WORK HAPPY」。
コクヨ株式会社
1905年創業のコクヨはお客様の「働く」「学ぶ」「暮らす」がより創造性豊かで実りあるものとなるよう、 紙製品や事務用品をはじめとする文房具、デスクや椅子などオフィス向け家具、店舗用品などを製造・販売する。 またオフィス用品の通販事業として「カウネット」も手掛ける。

ESGにおけるこれまでのお取り組み

これまでコクヨはISOを順守しながら独自の活動をしてきました。

2009年には当時の環境基準よりも厳しい基準を使って社内精査を行っていました。自社の製品において「エコバツ」という独自の基準を設け、それが満たされていないものには、通常であれば避けられるであろう「バツマーク」を付けるという、企業としては異例の行動を取りました。この取り組みの際には、自社カタログに掲載された製品がバツマークだらけになるという厳しい状況を経験しましたが、それでも真摯にお客さまへ情報を提供し、三年以内にバツを消すという方針を宣言し、続けてきました。これは環境に配慮した商品開発を通じて、「ネガティブ」を「ポジティブ」に変えていくアプローチを見事に体現した事例であると言えます。

さらに、企業活動の一環として2007年から高知県の四万十町で間伐活動を支援し、「結の森」を展開しています。自社の家具製品の原材料となる樹木の供給元として植林を行っています。またキャンパスノートを作成している滋賀の工場では、琵琶湖・淀川水系のヨシを使用したノートを製造するという取り組みも行っています。

ESGの取り組みでこれから目指すところ

コクヨ株式会社
(画像=コクヨ株式会社)

コクヨは「自律協働社会」の実現に向けて、「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」というパーパスを掲げています。社内では社会に貢献するという文化は根付いていると思いますが、我々はそこからさらに、世の中に積極的に発信していく、「ヨコク」していくということを大切にしています。

また2024年・2030年のオールコクヨとしてのKPIを設定することで、今後も継続的にアプローチしていきたいと考えています。

現状だけではなくESGの取り組みでこれから目指すところ

コクヨ株式会社
(画像=コクヨ株式会社)

これまで以上に人々のウェルビーイングとインクルーシブな相互対話を通じた商品開発を追求していきたいと考えています。働きづらい暮らしづらい方に対して貢献して初めて、社会に貢献できるのではないかと考え、インクルーシブデザインという手法を開発の中に取り入れました。これは、社内にいる障がいのある方々に開発プロセスに入っていただいています。多様な人々が気づきを得られることを目指しています。

またサーキュラーエコノミーに向けた取り組みも強化していきます。具体的には、廃棄物を減らして資源を循環させ、製品のライフサイクル全体を通じて限りある地球資源を大切にするために、再資源化していくことを目指します。

現在、分解可能な椅子の提供や、製品の回収といった取り組みを始めています。しかし、これからはさらに一歩進めたいと考えています。例えば「分解しやすい椅子」を作るだけでなく、本当に分解されるのかということも突き詰めていきたいと考えています。分解可能であっても、解体するのに時間がかかるのであれば、意味がありません。つまり、現場で実際に受け入れられ、実際に分解しやすい椅子として処分されるにはどうしたらいいのかということを追求し続けています。

さらにステークホルダーという観点で言うと、我々は商品数が非常に多いためさまざまなパートナーから支えられています。そのため、多くの方々の協力をどう得ていくかに注力したいと考えています。

品川オフィスのTHE CAMPUSは社会に開かれた実験場です。社会の方々と一緒に実験をする場所になっています。コクヨ内だけではなく多くの人と共に取り組みを進めていくことを計画しています。THE CAMPUSの中では様々なイベントがあります。例えば、工場から出てきた廃棄物を使って別のものに生まれ変わらせるというワークショップを、お子さんと一緒に行っています。社会の人から言っていただいた気づきから商品を開発していきたいと考えています。

今後の上場企業の意義や投資家ユーザーへのメッセージ

我々の活動は、単に利益を追求するだけではなく、長期的な視野から見たときに、どれほど社会全体に対して価値を提供し続けることができるかを重視しています。非財務価値とも呼ばれるこの視点は、最終的には将来の財務価値を創出するための挑戦だと考えています。

今年からは株主還元の中に寄付枠を設け、株主の皆様にコクヨの文房具ではなく、社会貢献活動への投資を選んでいただくことを提案しました。株主の皆様からは想像以上の賛同をいただき、石巻で子供たちの学びを支えるモリウミアスさんの活動など、社会貢献活動に寄付が行われました。

この結果から、投資家の皆様は、単に株価の上昇だけを望んでいるわけではなく、投資先の企業が社会全体に良い影響を与えていくことに価値を見いだしていることを実感しました。私たちコクヨも、そのような投資家の期待に応えるべく、商品製造を通じて経済価値を実現することに加え、社会価値を実現していくことにも貢献をしていきます。投資だけでなく社会貢献活動を推進するパートナーとして参加していただくことで、一緒に未来を創造していきたいと考えています。

氏名
井田 幸男(いだ ゆきお)
会社名
コクヨ株式会社
役職
CSV本部 サステナビリティ推進室 室長