この記事は2023年10月2日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ピーエス三菱【1871・プライム】」を一部編集し、転載したものです。

PC大手・老朽化インフラ補修改修で商機拡大

▼森 拓也社長

ピーエス三菱【1871・プライム】
(画像=株主手帳)

工期短縮・省人化可能な『独自工法』で収益向上
配当性向を40%に強化へ

ピーエス三菱は、橋梁の新設工事や高速道路のリニューアル工事などを手掛けるゼネコンだ。日本で初めてプレストレストコンクリート(PC)技術を工業化し、土木分野で活躍。その後も、PC技術を活用した独自の工法を開発してきた。もう一つの主力事業・建築ではPC技術を駆使した独創的な建築構造物の施工を得意としており、免振・耐震性に定評がある。

高強度なコンクリート
土木・建築分野で活躍

ピーエス三菱はPC技術のパイオニアとして知られ、これまで約2万橋に及ぶ橋梁の新設工事や高速道路のリニューアル工事など、インフラ整備に関わってきた。全国のスタジアムや競技場なども多数施工している。

本社は東京・港区で、神奈川に技術研究所、北海道から九州まで8支店、全国に営業所を持つ。建設関連事業を営む子会社が6社あり、そのうち1社はインドネシアを拠点にしている。また、石川と福岡に2工場、その他子会社の製作工場は5工場(岩手、茨城、滋賀、兵庫、岡山)を有する。

2023年3月期の売上高は、前期比0・3%減の1093億2700万円、営業利益は同13・6%減の57億1500万円。セグメント別の売上高は、構成比で約64%を占める土木事業は約702億円(前期比4・0%増)、同約33%の建築事業は約365億円(同9・0%減)、製造事業は約19億円(同38・4%増)、その他は約6億円(同15・8%増)となっている。

工期が短いPCaPC工法
大規模更新でニーズ増

同社は、主に公共の土木工事を得意とするピー・エスと、民間の建築工事を得意とする三菱建設が合併、02年に発足した企業だ。1952年に設立したピー・エスは同年、日本初となるPC道路橋「長生橋」を施工。以来、PC技術を武器に、終戦直後より橋梁をはじめとする公共インフラの整備に携わってきた。

土木と建築を事業の中核に据える同社は、新工法・新技術を開発し続けることで業績を伸ばしてきた。土木事業は、PC技術を用いた工事がメインで、橋梁の新設や、高速道路などのリニューアルを手掛けている。新設工事とリニューアル工事の割合は半々で、主に国や自治体、NEXCOなどの道路会社から受注している。

建築事業は一般的な建築工事をはじめ、得意とする「PC技術」と「プレキャスト(PCa)工法」を用いて高品質かつ高耐久の建築物を手掛けている。

「新しい技術に常に挑戦するのが、当社の経営理念です。昨年は、建築物の梁高を抑えることで内部空間を大きく取れるような技術を開発しました。こうした技術開発に加え、営業マンの教育や工場整備など、あらゆる面を強化し、受注に結び付けたいと考えます」(森拓也社長)

3期連続増配中
株主還元を強化

今後の経営指標として、25年3月期に営業利益率6%、30年3月期に8%を掲げている。ただ、直近3カ年は前々期が6・0%、前期が5・2%、当期予想は5・0%と下降ぎみ。苦戦を強いられているのは、建築事業だ。資材や人件費の高騰に加え、公共を得意とする企業が民間に参入する流れから過当競争が激化。工事の採算性を悪化させ、利益率の低下を招いた。

こうした状況下で、同社は「プレキャスト・プレストレスト・コンクリート(PCaPC)工法」に活路を見出す。この工法は、PCaとPCの2つの技術を組み合わせたもの。工場でPC部材を生産するため、現場で生産するよりも高品質・高耐久を担保できる。また、現場で部材を生産する必要がないため、工期が短縮され、作業員の数も削減できる。昨今の人手不足と人件費高騰の問題に対応するため、建築市場においてニーズが高まっている。

「かねてより取り組んできたPCaPC建築の需要が高まり、当社にとって追い風になっています。100億円規模の大型建築にも発注があり、ここを徹底的に強化します」(同氏)

実際、大型医療施設工事などの受注を獲得できており、前期実績比で約198億円増と好調だ。

また、プレキャスト化により工期を短縮できるメリットは、高速道路リニューアル工事など、土木分野でも有用性がある。

「高度経済成長期のインフラ増設時代は過ぎ去りました。しかし、現在はインフラの老朽化対策として大規模更新工事が本格化され、その市場規模は5~6兆円規模と言われています。当社のPCaPC技術は床版の取り替え工事で引き合いが多く、今後も安定して受注獲得できる見込みです。リニューアル工事の受注が増え、経験値や熟練度が高まり、利益率も向上してきています」(同氏)

なお、株主還元では23年3月期まで3期連続増配中、24年3月期は1円増の34円を予定する。22年5月に発表した中期経営計画では、配当性向40%以上を掲げている。

プレストレストコンクリート(PC)とは
直訳すると、あらかじめ圧縮力を与えたコンクリートのこと。コンクリートの内部に、鉄筋の5~6倍の強度を持つ「PC鋼材」が引っ張られた状態で入っていることで、圧縮力を付加。これにより、外部からの荷重に対して鋼材が元に戻ろうとする力が作用し、コンクリートの弱点であるひび割れの発生を防ぐ。橋梁や舗装、タンクなど幅広く用いられている。PCは、橋の長大化など、省スペースでありながら丈夫で長持ちする構造物施工に貢献している。


2023年3月期 連結業績

売上高1,093億2,700万円0.3%減
営業利益57億1,500万円13.6%減
経常利益56億2,900万円15.3%減
当期純利益37億9,000万円16.5%減

2024年3月期 連結業績予想

売上高1,170億円7.0%増
営業利益58億円1.5%増
経常利益57億円1.3%増
当期純利益38億5,000万円1.6%増

※株主手帳23年10月号発売日時点

森 拓也社長
Profile◉森 拓也社長(もり・たくや)
1956年1月生まれ、愛知県出身。79年京都大学工学部卒業後、ピーエス三菱に入社。2010年、取締役 執行役員 技術本部長兼工務監督室長・安全品質環境担当に就任。16年、代表取締役副社長 副社長執行役員 技術本部長・安全品質環境担当兼海外事業担当
22年、代表取締役 社長執行役員 全般統理(現任)