この記事は2023年10月4日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「アイネット 【9600・プライム】独立系情報サービス」を一部編集し、転載したものです。

自社保有のデータセンター強みに
25年3月期売上高400億円へ

アイネットは創業51年を迎える独立系情報サービス企業だ。1971年にガソリンスタンド向け決済受託事業からスタート。現在はエネルギー産業や金融、官公庁、宇宙関連企業を顧客に持つなど業域を拡大してきた。システム開発サービスを展開する一方、データセンターを2台所有し、顧客データの情報処理サービスも行う。23年6月に就任した新社長の下で、新たな成長戦略を描いている。

▼佐伯 友道 社長

アイネット 【9600・プライム】独立系情報サービス
(画像=株主手帳)

「システム開発」「情報処理」主軸
顧客数は約4300社

同社は約4300社の企業を顧客に、「システム開発サービス」「情報処理サービス」「システム機器販売」の3つのサービスを提供している。

売上高の56%を占めるのが「システム開発サービス」で、受託開発請負とシステム商品開発が柱となっている。

受託開発請負ではエネルギー産業、金融、交通システム、宇宙関連など多様な顧客を対象にサービスを展開。またシステム商品開発では、無担保ローン向け「LOAN RANGER」や原価管理向け「ABC Calc」など、多数の中小、大手金融機関に使用されている。

売上の41%を占める「情報処理サービス」では、データセンターを活用した法人顧客向けクラウドサービス、受託計算サービス、メーリングサービスを展開する。

法人顧客向けサービスは、データセンター上で自社のサービスに加えて他企業のツールやコンテンツを展開してもらい、顧客に利用販売してもらう。ネオジャパン(3921)やユニリタ(3800)など多様な企業と協業しており、非常に伸びている分野の一つだ。受託計算サービスでは、全国シェア3割強のガソリンスタンド(SS)向け販売・決済プラットフォームなどを運営。郵便物の印刷・配送代行は顧客のデータをもとに印刷から発送まで自動で行い、月間約500万通以上を郵送している。ワクチン接種券などの公共サービス増加に加え、全国的に同様のサービス業者が減っており、同社に仕事が集中している。

同社はシステム開発事業を展開しながらも、データセンターを2台保有している。自社で保有することで業績の基盤を支え、他社と異なるビジネスが展開可能になるという強みがある。

「顧客からのデータを預かることができれば、メーリングサービスなどBPO(業務プロセスの外部委託)やシステム開発にもつながる。また自前のセンターなので他社より柔軟な料金ということもあり、当社は複数のサービスを使う顧客がとても多いのです」(佐伯友道社長)

24年3月期1Q業績は売上高が91億8400万円(前年同期比16・2%増)、営業利益は6億5700万円(同103・4%増)の大幅増収増益で着地。低成長だったメーリングサービスの復調などにより四半期過去最高の売り上げを達成した。

通期業績は売上高が377億円(前期比7・7%増)、営業利益は27億5000万円(同29・2%増)を予想。全項目での過去最高業績更新を見込んでいる。

前社長の経営手法踏襲しつつ
事業部間に「横串通す」施策

 同社は現会長の池田典義氏が1971年に設立したフジコンサルトから始まる。石油元売会社に勤務していた池田氏が、取引先であるサービスステーション(SS)の煩雑な事務作業をコンピュータで合理化するために起業した。決済が掛け売りからハウスカード、クレジットカードと変化するにつれ、同社の事業も拡大した。

91年には金融分野を得意とする日本コンピュータ開発と合併。社名を現在のアイネットに変更し、システム開発サービスと封入封緘ビジネスを開始。95年には株式を店頭公開、97年には東証二部に上場した。98年には初の自社データセンターを建設。2001年にはソフトサイエンス社と合併し、宇宙、制御分野に業務範囲を拡大した。

今年6月、社長に就任した佐伯氏によれば創業社長の下で合併やM&Aを繰り返してきた歴史を見てきた経験から、「いまだ事業部間に壁があると実感している」という。現状の体制に横串を通すため、まず3年前にSFA(営業支援システム)を導入し、営業サポートの共通言語を作った。

「将来的にはひとつの営業本部に統一したい。それができればまだまだ伸びしろは大きい」(同氏)

中計達成に向け底上げ
SS運営企業への拡販進める

22年5月に発表の中期経営計画では、25年3月期に売上高400億円、営業利益32億円を目標に定めている。

システム開発サービスでは、金融機関向けサービスや、販売管理システム、IoTプラットフォームのサービス展開を強化していく。 

「請負仕事は将来AIに取って変わられる。人月ビジネスではなく、自社で作って売る方向にシフトしなくてはいけない」(同氏)

情報処理サービスでは、第3データセンターの建築を予定。また受託計算サービスの顧客であるSS運営企業への拡販を進める。

「SSを運営しているのは地方の大企業が多い。計算受託だけでなく、クラウド基盤サービスやシステム開発にもつなげていきたい」(同氏)

現在注力しているのは、LPガス販社向け販売管理・課金システム『プロパネット』。ガソリン、灯油、LPガスをともに取り扱う企業も多く、顧客は200社まで積み上がった。今後は1000社まで増やしたいとしている。

「当社は時代ごとに必要とされるサービスを、データセンターを基盤とするプラットフォームに乗せることで、50年間業績を伸ばし続けてきた。次の50年に何を乗せるか、それは社員全員で考えていきます」(同氏)

▼自社保有するデータセンター

ピーエス三菱【1871・プライム】
(画像=株主手帳)
ピーエス三菱【1871・プライム】
(画像=株主手帳)

2023年3月期 連結業績

売上高349億8,800万円12.3%増
営業利益21億2,900万円10.1%減
経常利益21億7,500万円14.4%減
当期純利益13億4,300万円20.7%減

2024年3月期 連結業績予想

売上高377億円7.7%増
営業利益27億5,000万円29.2%増
経常利益29億円33.3%増
当期純利益20億2,000万円50.3%増

※株主手帳23年10月号発売日時点

佐伯 友道 社長
Profile◉佐伯 友道 社長(さえき・ともみち)
1962年12月生まれ、神奈川県出身。84年フジコンサルト(現アイネット)入社。2010年同社取締役。13年アイネット・データサービス代表取締役社長。15年アイネット常務取締役やアイネット・データサービス取締役会長などを経て23年6月アイネット代表取締役兼社長執行役員(現任)