株式会社Deto
(画像=株式会社Deto)
恩田多賀雄(おんだ たかお)――株式会社Deto代表取締役
1959年岐阜県出身。1979年岐阜工業高等専門学校卒業後、出戸水栓(現株式会社Deto)入社。1985年2代目として代表取締役社長就任。1992年京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者稲盛和夫氏が塾長を務めた「盛和塾」入塾、1997年私塾「始道塾」開塾。
株式会社Deto
企業理念「あなたもよくなれ、わたしもよくなれ、みんなよくなれ」を世の中に広めていくことを事業目的とし、水まわり関連のOEM/ODMを中心に事業を展開。また、近年様々な製品に活用され始めているファインバブルの検証・試験・商品化も行っています。 1965年の設立以来、培ってきた熟練性やノウハウ、ネットワークを駆使し、OEM/ODMの枠を超えた新しい価値を提供し続けています。それにより、水まわりメーカーという立場から、持続可能な社会の実現を目指しています。

目次

  1. これまでの事業変遷
  2. 自社事業の強み
  3. 他社との差別化

これまでの事業変遷

deto
(画像=株式会社Deto)

―― 社長就任からこれまでの変遷について教えてください。

株式会社Deto代表取締役・恩田多賀雄氏(以下、社名・氏名略):私は二代目の社長です。創業は1959年で、ちょうど私が生まれた年です。私の父が始めた当時は、蛇口を作る小さな町工場でした。それから長い年月を経て、創業から63年を迎えています。

私が社長の座を引き継いだのは26歳の時です。突然の社長交代でした。経営の勉強は全く経験がなく、私がこれまでやってきたのは鋳物作りだけでしたから、どうすればいいのか全くわかりませんでしたが、父からは「私は19歳で会社を始めた。お前は26歳だから大丈夫だ。」と言われました。それが私の社長人生の始まりです。

また、事業の変遷としては、創業当初は鋳物作りをしていましたが、徐々に製造から開発へとシフトしました。製造を主体とした小さな会社から、開発を主体とした会社へと変貌を遂げました。

―― 突然の社長就任から、会社の変革まで、大変な経験をされたと思います。その中でも特にターニングポイントとなった出来事は何でしょうか。

水まわり商品の市場が大手ブランドに集約されていく中で、太陽熱温水器の部材を作り始めたことです。太陽熱温水器の需要が拡大した時期に、当社は急遽今までになかった専用の部材を開発から製造まで請け負うことにしました。これらをきっかけに開発主体のビジネスにシフトしたわけです。太陽熱温水器に関しては、その販売によって取引先企業は7年で売り上げ240億に、経常利益40億にと急成長しました。

―― それは驚きですね。信じられないほどの成長ですね。

その通りなのですが、当時、当社はそのお取引先に大いに依存していて、私自身も、お客様の社長秘書のような役割を果たしていました。

しかし、ある日突然、その取引がストップしました。関係性の悪化といったことではなく、様々な要因が絡んだ結果で仕方がないことでしたが、売上の大部分を占めていた取引が終了したことで会社は倒産寸前の状態になりました。その時に、京セラ創業者の稲盛さんに出会い、盛和塾に入塾しました。そして、稲盛塾長の教えを一つ一つ実践した結果、なんとか会社を存続させることができました。

その後、教わったことを後輩の経営者たちに還元していきたいと思い、始道塾という経営塾を開きました。初めは4人からスタートしましたが、参加者はどんどん増えていきました。参加された企業の利益は、平均で二倍以上に増加し、その中には上場した企業も7社含まれています。

ただ、始道塾の取組みは成功への一部を担っているだけで、その成功には各社ごとに数百、あるいは数千の要素が絡んでいます。

自社事業の強み

―― 御社が創業してから60年以上、岐阜県の地で事業を続けている理由を教えていただけますか?

正直な事を申し上げますと、明確な理由があるわけではありません。

一つあげるとすれば、当社は来期には営業利益を10億円ほど見込んでいますが、東京などに進出すれば大して目立ちません。岐阜県内では10億円の利益を出している会社は100社もなく、都市部に比べて注目されやすくなります。

―― なるほどです。事業に関しては、水まわり商品をサブスクリプションモデルで提供しているとお聞きしましたが、どのような仕組みか具体的に教えていただけますか。

例えば、浄水器のカートリッジを3ヶ月ごとに交換するサブスクリプションモデルです。キッチンの蛇口に取り付ける浄水器で、それを定期交換しやすいような工夫をし、サブスクリプションビジネスとして展開しています。

―― 新規事業の提案も行っているとお伺いしましたが、具体的なエピソードを教えていただきたいです。

一例として、全国規模のトイレ総合メンテナンス会社にプライベートブランドとして、温水洗浄便座を開発し、提供したことがあります。

これは、お客様のビジネス拡大をサポートすることで、当社も成長するというモデルが成功した一例です。

他社との差別化

―― 御社は水まわり商品の中で施設向けのトイレ商品が多いと聞きましたが、他社との差別化や戦い方についてはどのように考えていますか。

当社はODM(Original Design Manufacturer)として、メーカー向けに商品を提供しています。そのため、世間や企業からの認知を得られにくく、ホームページにも掲載できない商品が多々あります。しかし、今後は当社ならではの切り口でホームページのコンテンツも充実させていく予定です。

また、新たな市場を開拓していくにあたり、お客様からの信用を得ることが大切だと考えています。私自身もお客様と直接対話し、ひとりひとりに合わせて相手のためになることを考えご提案してきました。これは、当社の理念である「あなたもよくなれ、わたしもよくなれ、みんなよくなれ」を具現化したものです。この考えは、まず相手にとって良いかどうかを判断基準に持つということであり、特にビジネスにおいては相手の利益を優先することにつながります。完全にWIN-WINな関係ではなく、少しでも相手が良くなるように心掛けています。

例えば、お客様との間で何か問題が生じたとしても、必ずお客様の方が得をするような判断をします。公平というよりも、我々が一歩引くことで、相手が得をするようにします。その結果、他社との競争においても、当社が選ばれるようになるのです。

もちろん、理念や想いだけでは、競争の激しいこの業界で生き残ってはいけませんので、技術力の向上と開発力の強化にも注力しています。そのために、開発チームや企画室のメンバーが直接お客様に対応することも多々あります。これにより、本当にお客様が必要としている商品やサービスの開発に繋がると考えています。

この業界は、対応が困難な厳しい要求をされるお客様が多くおられます。しかし、それを聞き流したり、その場を収めようとするのではなく、お客様と真摯に向き合い、本当のニーズを理解し対応することで、お客様にとって必要な存在となり、その結果、当社の事業を拡大させることができます。また、そのような対応を続けることが、お客様の成長を支援することになり、お客様の売上や利益の増加にもつながります。

―― 恩田社長の理念や力強さが感じられるエピソードで素晴らしいですね。 恩田社長からは力強さだけでなく、知性も優れているような印象を受けますが、恩田社長はどのようにして新たな知識を得ているのですか。

私は常に学び続けることを心掛けています。最近では、大規模なセミナーに参加したり、COTEN RADIOなど深く学べる動画を見たりしています。また、グロービスの配信動画も頻繁に視聴しています。ベンチャー企業の社長など若くて優秀な方々が集まるような会にも、おじさんひとりで参加しています。新たな情報に触れることは刺激になりますし、何より楽しいです。

―― 恩田社長のように、仕事を楽しむ姿勢は素晴らしいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

氏名
恩田多賀雄(おんだ たかお)
社名
株式会社Deto
役職
代表取締役