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(画像=株式会社エンリッション)
柿本 優祐(かきもと ゆうすけ)
株式会社エンリッション代表取締役
同志社大学商学部卒、株式会社ワークスアプリケーションズに入社、その後、株式会社エンリッション創業。
私は、大学生時に社会人と交流する機会が多くあり、就職活動において早い段階から明確な未来のビジョンを持つことができました。
その経験から、全国の大学生に対して、早期から社会人と交流する機会を提供することで様々な選択肢を与え、学生自身が納得のできる就職活動の機会を提供することで、結果として人生を豊かにできるのではないかと考え、創業しました。
株式会社エンリッション
全国の大学内外にキャリア支援プラットフォーム「知るカフェ/BiZCAFE」21店舗を展開し、企業と学生の出会いを創出。
利用者の半数を1、2年生が占めていることから、企業は「Meetup」を通じて早期に学生と接触することができ、会社の想いを一人ひとりに直接伝えることができる。
またインターンシップや面接会場としても利用可。
学生は、早期から気軽に企業や社会人と交流ができ、カフェを無料で利用することができる。

これまでの事業の変遷について教えてください。

株式会社エンリッションは、私が大学3年生の頃に思いついたビジネスモデルを元に設立しました。私は学生時代から、社会人の方と交流する機会が多く、よく一緒にスノーボードをしていました。日頃から「社会人と関わる」という経験が就職活動をする際に大変有利に働いたのですが、その時にもっと学生が社会人と関われる場を作れないかと考え、現在の「知るカフェ」の形を考案しました。

株式会社エンリッション
(画像=株式会社エンリッション)

卒業後、2年間の社会人経験を経て、独立し、京都で初めての店舗をオープンしました。その後、店舗は成功を収め、全国に21店舗を展開するまでに成長し、さらにはインドという海外市場にも進出しました。

一番感銘を受けた書籍とその理由は?

書籍は数多く読んできましたが、中でも一番感銘を受けたのは『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」という本です。この書籍を読んだ2018年頃は、まさに事業拡大の真っ只中であったため、本の教えが強く心に刻まれました。この本はビジネスにおいて、データやサイエンスに基づく理性や論理だけではなく、感性や直感といったアートも大切であるというテーマを具体的なエピソードを交えて解説していました。

このアートを大切にする考え方は、スタートアップ企業においてとても重要な考え方だと思います。世の中が混沌とした世界へ向かっていく中で、スタートアップ企業はさらに混沌とした状況で結果を出す必要があります。すなわち、スタートアップ企業は資金力や人材といったあらゆるリソースが限られている中で、新しいビジネスモデルを生み出していかなければならないため、意思決定のスピードを速めて、変化に柔軟に対応していかなければなりません。その際にデータやサイエンスに加えて、直感や感性を元に判断を下すというのは、非常に重要だと言えます。

また、十分なデータがないのもスタートアップ企業の特徴と言えます。大手企業や老舗企業には数十年の経験に基づく情報がありますが、スタートアップ企業にはありません。それでも社内外で発生する様々な事象に敏感に反応し、社会に革新を与える必要があるため、時にはアート的な判断をしなければ、事業の進展がなくなります。こういった意味で、この本は私が仕事をしていく上での判断軸に大きな影響を与えたと言えます。

読書はどのように仕事に生かせたでしょうか。

私たちが事業を始めた当初、最大の課題は「前例のない、新たなビジネスモデルをどのように作り上げるか」という点でした。そんな中で、本書の「データに加えて、直感や感性も重要である」という考え方は、私たちのビジネスモデルの確立に大いに影響を与えました。

直近の例では、コロナ禍で、学生も企業も対面交流が制限された当時、知るカフェはリアルの場を売りとしていたことから、業績は下がり、みんなで一丸となって耐え抜くというような状況でした。そんな中、関西学院大学神戸三田キャンパスからキャンパス内への出店のお声がけをいただきました。当時の経営状況を鑑みれば、出店しないという判断もあるかと思いますが、コロナ禍を抜ければ、学生が大学に戻ってくることを確信していましたし、キャンパス内で出店すれば競合優位性が生まれると考え、会社として出店を決定しました。そのおかげで、学内出店の実績は増え、現在では連日たくさんの学生で賑わっておりますし、多くの企業に利用いただいている状況です。こうしたエピソードをいくつも経験したことから、スタートアップ企業の経営者には、データだけでは見えない意思決定をすることの重要性を実感しました。

経営において重要としている考え方を教えてください。

経営において私が重要としている考え方は、「ミッションの実現」であり、それを社内の各レベルで確実に実行することです。私たちのミッションは、「世界中の学生に選択肢を与えて人生を豊かにする」ことです。このミッションが全ての組織の方向性を示し、事業の具体的な成果へと続いていくのです。 私たちのミッションを噛み砕いて説明すると、「3年生から始めるという短絡的な就活の常識を変える」です。知るカフェの店舗にくる学生は1、2年生が半分以上を占めているのですが、この1、2年生が実際に、様々な業界の企業の方と気軽に交流できるというプラットフォームを作り上げています。就活という学生にとって一番重要といっても過言ではないフェーズに、様々な選択肢を提示することでミッションの実現に取り組んでいます。

また現在では、業界マップにも5年連続で、知るカフェ/BiZCAFEを掲載いただいており、徐々にカフェで早期から情報を取得するという新たな就活の価値観を世の中に提供出来つつあると感じています。

もう一つあげるとすれば、ミッションの実現を加速するために作成された、行動規範であるバリューがあります。当社では個人の目標ももちろんありますが、その他の評価基準として、行動規範に基づく評価があります。また、社員だけでなく、カフェで働く約400名の学生インターンシップ生も同じ行動規範で働いてくれています。そのため、全社員・学生インターンシップ生がこの行動規範をもとに、普段から業務にあたり、ミッションの達成に向けて努力するような組織作りを行っております。

最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください。

私たちの未来構想は、「三方よし」の事業モデルを持続可能な限り続けていき、ミッションを実現することです。そのため、現状はまだ21店舗しかない知るカフェを、プラットフォームとしてさらに広げていきます。具体的には、地方系の大学や理系軸の大学で展開していきたいと考えています。

加えて社員・学生インターンシップ生への期待としては、それぞれが自分の役割を理解し、当社のミッションを実現するために、学生と企業に価値提供をすることです。当社をせっかく選んでいただいた彼らには、成長環境を提供してどこでも輝ける人材になってもらいたいなと思います。そして、自分たちの手で社会に影響を与える仕事を通じて、個々の成長を実感していってほしいと思っています。当社の価値観を共有し、その一環となる人々が働き続けることで、エンリッションは大きく発展し、社会に貢献していけると確信しています。

氏名
柿本 優祐(かきもと ゆうすけ)
会社名
株式会社エンリッション
役職
代表取締役