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(画像=株式会社FOLIOホールディングス)
甲斐 真一郎(かい しんいちろう)
株式会社FOLIOホールディングス代表取締役CEO
京都大学在学中、1年半ほどプロボクサーとして活動。
2006年にゴールドマン・サックス証券に入社し、日本国債・金利デリバティブトレーディングに従事。
2010年、バークレイズ証券同部署に転籍し、アルゴリズム・金利オプショントレーディングの責任者を兼任する。
2015年12月、株式会社FOLIOを創業。
2023年7月には、AIによる金融市場予測ソリューションを提供する「AlpacaTech」を連結子会社化。
株式会社FOLIOホールディングス
個人や金融機関に向けた事業を展開する株式会社FOLIOでは、AIを活用した資産運用サービス 「ROBOPRO」を2020年1月にリリースし、以降4年以上に渡ってAI投資のノウハウを蓄積。金融機関向けには投資一任サービスのSaaS型プラットフォーム提供を行う「4RAP」事業を展開。また株式会社FOLIO ホールディングスとしては、2023年7月にAIによる金融市場予測ソリューションを提供するAlpacaTech株式会社を連結子会社化。

これまでの事業やご自身の変遷について教えてください。

幼少期の原体験ですが、私の場合、両親ともに証券会社に勤めていました。特に、株価が父親の機嫌を左右していたため、小さい頃から毎日日経平均株価を気にする子供でした。また、景気の良さを子供ながらに実感するほど裕福な時もあれば、バブル崩壊で一気にそれが無くなってしまうと言う経験もしました。そんな中でも、大学卒業まで兄弟3人を育ててくれた両親には感謝しています。そういったバブルの経験や、株式市場が常に身近にあったと言う経験から、幼少期から証券市場や投資、資産運用というものに興味を持ち、常に触れ続けてきました。そんな私は、大学卒業と共にゴールドマン・サックス証券に入社することになります。そこでは債券トレーダーとして入社し、そこでも好景気やリーマンショックを経験し、常に投資の楽しさだけでなく、難しさや市場の怖さというものを目の前で感じながら過ごしてきました。

そう言った幼少期の体験や、10年間のトレーダーとしての経験から、投資に関する情報をわかりやすく伝え、より多くの人に投資の楽しさや魅力を知ってもらいたい。少しでも皆様の資産運用をサポートしていきたい。というビジョンに基づいて、2015年12月に株式会社FOLIOを設立するに至りました。

株式会社FOLIO
(画像=株式会社FOLIOホールディングス)

一番感銘を受けた書籍とその理由は?

歴史書もビジネス書も漫画もあまり分け隔てなく考えると、実は『SLUM DUNK』という井上先生の漫画は本当に素晴らしい作品だと思っています。スポーツの世界を描いた作品ですが、メンタルのあり方、考え方など、経営に通じる部分も散りばめられていて、たまに会社のプレゼン資料でも勝手ながらセリフを使わせてもらったりしています。『あきらめたらそこで試合終了ですよ』という言葉は有名ですね。

ビジネス書に関しては、読むタイミングによって響き方が全く違ったりするので、これというのは難しいのですが、最近だとより自分ごととして読める書籍としては、ベン・ホロウィッツの「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」が挙げられると思います。彼の名前を一度は聞いたことがある方も多いかなと思います。シリコンバレーの起業家であり著名VC(ベンチャーキャピタル)の共同創業者でもあります。この本では彼が経験した事業の苦難、彼がそこから何を学び、どのように乗り越えていったのかが語られています。

創業前に私がこの本を読んだとき、私はその内容を深く理解できませんでした。共感できなかったと言った方が近いかもしれません。それは自分の現状や経験と本の中のエピソードがかけ離れていたからです。やはり経験をしていないことですので、自分ごと化して考えられなかったのです。

ところが、時間が経ち、私自身が経営者としてさまざまな困難を経験する中で、再度この本を読み返してみると全く違う角度から理解できるようになりました。彼が直面した問題の本質、そしてそれを解決していくための戦略や哲学に対して、ある部分では共感できるし、またある部分では自分と異なる考え方だなと感じるようになったのです。「ここは私ならこう考えるだろうな。」といった具合に、いわば、筆者と同じ目線で本と対話するように読み解くことができたのです。

読書はどのように仕事に生かせたでしょうか。

まず最初に、私は本を読むことの効用を『近道』だと考えています。最短距離で、とても手軽に、新しい知識を得たり、異なる視点で物事を考えることができるものだと考えています。「HARD THINGS」のような“ビジネス書”では、他の人々の経験や学んだこと、特に失敗体験を知ることができ、自分のビジネスや経営に活かすためのアイデアを得たり、予防線を張ることができるので、非常に有益だと感じています。

また、“歴史書”も有用な知識を得るために非常に有用なものだと考えています。弊社が非常に大変だった際に「背水の陣」を敷いて困難を乗り越えました。細かな解説は避けますが歴史的にこの陣形が意味することを深掘って調べていくと非常に面白い発見があります。

ただ、どんな書籍も読むだけでは十分ではないと思っています。実際には自分ごとに置き換える変換作業が必要で、自分の経験や現状に合わせて、読んだ内容を自分なりの解釈やフレームワークに落とし込むことが重要だと考えます。

例えば、「HARD THINGS」で述べられている問題や解決策は、特定のビジネスや環境に基づいています。そのため、それを自社のビジネスや環境にどう適用するかを考え、自分なりにアレンジすることが重要です。それにより、読んだことが自社の問題解決やビジネスの推進に役立つ具体的なアイデアや行動指針になります。だからこそ、読書を通じて新たな学びを得ると同時に、それを自分のビジネスに活かすための思考力や判断力を鍛えることが大切だと思っています。

経営において重要としている考え方を教えてください。

経営において私が重要と考えている考え方は、「挑戦を続けること」です。もう少し表現を変えると「勝つまでやり続けること」です。

なぜ「挑戦し続けること」が大切なのか。この点に関しては、“おみくじ”を想像してもらえるとわかりやすいかなと思います。1回で大吉を引き当てる人もいますが、何度でもくじを引いても良いとすれば、大吉が出るまでくじを引き続ければ、いつか必ず誰でも大吉を引くことができます。経営も基本的には同じです。当たりを引くまでやり続けることが非常に重要だと考えています。上記事例のように試行回数に制限がないとすれば、当たるまでやり続ける、つまり「成功するまで挑戦を続けること」が非常に重要です。

ただ、試行回数に制限はないと言いましたが、そこには注意が必要です。挑戦を続けることに重要な要素は2つあります。まずは資金です。会社は資金が枯渇すれば死んでしまいます。つまり経営において資金調達は挑戦する権利を持ち続けるために非常に重要な要素です。次に大切なのは、ラストマンの精神です。何度失敗しても、諦めずに最後までやり切るという覚悟とも言えます。資金があって、私たちがラストマンの精神を持っていれば、経営は試行回数に制限のないおみくじに変わります。

FOLIOという会社は、今でこそ非常に強い成長をしておりますが、一時期非常に大変な時期がありました。SBIグループはじめ本当に多くの方のサポートからなんとか乗り越えられましたが、そういった経験から私自身もチーム全体も成功するまで挑戦的であることを常に心がけています。

まさに「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」ということですね。

最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください。

当社は、資産運用に関する情報をより多くの人にわかりやすく伝えたいというビジョンの元で活動しています。このビジョンを達成すべく、我々はより良いサービスと体験を提供し続けていくことを目指しており、そのためにIPOも視野に含めて事業を拡大していく予定です。我々がいるからこその世の中へのプラスの差分を生み出していきたいと考えています。

一方で、社員一人ひとりには、そのビジョンを理解し共有し、それぞれが理想とする姿を追求しながら、我々のビジョンに向かって取り組むことを期待しています。かつ、私と同じくらいに意見が強くディスカッションができるような人材育成と、それが可能な環境作りをしていきたいです。また、我々のもとで学んだ経験や知識を活かし、自身のキャリアをより豊かにすることも期待しています。

氏名
甲斐 真一郎(かい しんいちろう)
会社名
株式会社FOLIOホールディングス
役職
代表取締役CEO