システムインテグレータでシステム構築・運用保守に携わった後、2004年にトレンドマイクロへ入社。企業向けの有償サポートやマルウェアの収集、脅威傾向の分析を担当後、2016年に政府・企業・団体を狙うサイバー攻撃へ対処を行うとともに、捜査機関との官民連携に本格的に取り組む。2022年にサイバーセキュリティ・イノベーション研究所の所長に就任。また、一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の理事としても活動。
SDGsにおけるこれまでのお取組み
我々は「デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現」というビジョンを掲げて活動してきました。私たちのビジョンとSDGsやESGの社会的な側面は、目指すべき方向性が一致していると感じています。 30年以上にわたりセキュリティ業界をリードしてきた弊社は、サイバーセキュリティ分野のリーディングカンパニーとして、多くの人々へ貢献していると考えています。 これまで培ってきたサイバーセキュリティに関する知見と経験を活かし、日本国内だけでなくグローバルに、社会が直面している課題に対して取り組んでいます。
ただ、これらの取り組みが我々のコアビジネスであるサイバーセキュリティから逸脱してしまうと、持続可能な支援が難しくなるため、自社のコアコンピタンスを踏まえつつ、どのように社会に貢献できるかを常に探求しています。
そこで、今回は日本企業のセキュリティイノベーションを支援していくために設立した「サイバーセキュリティ・イノベーション研究所」での3つの取り組みについて説明します。
トランスペアレンシーセンター(製品の質への信頼)
トランスペアレンシーセンターは、トレンドマイクロが提供する製品・サービスの部材調達、製造、販売、利用時などサプライチェーン全体における透明性を示しながら、そこで培ったベストプラクティスを体系化し、お客様やパートナーへ提供することを目指しています。 昨今では企業の安心感や信頼性を自分たちで証明していかなければならない時代だと考えています。そういった自分たちの透明性を示している企業が結果としてお客様に選ばれていくのです。
このセンターではSDGsに当てはめると「産業と技術革新の基盤をつくろう」と「つくる責任 つかう責任」の2つのテーマに貢献していることになります。
「産業と技術革新の基盤をつくろう」においてはテクノロジーを導入する上でのサイバーセキュリティの実装に貢献したいと考えています。現代ではDX化が進んでおり、様々な企業が新しいテクノロジーを導入しています。導入する上でサイバーセキュリティは必要不可欠です。我々の持っているテクノロジーやソリューションで、世の中に貢献したいと考えています。
「つくる責任 つかう責任」においては、我々が提供するソリューションがいかに安全性を担保できているかということを意識しています。我々は世の中のニーズや地政学的リスクを踏まえた要求を満たしているかということを自分たちで定義し、改善しながら活動しています。
スレット・インテリジェンス・センター(情報の質への信頼)
スレット・インテリジェンス・センターでは、お客様のサイバーセキュリティを守るために、これまで培ってきた脅威情報を集め、データとして蓄積し、知見として提供しています。例えば、日本国内を標的にした高度なサイバー攻撃、国家が背景にあるサイバー攻撃者、特定企業から窃取された情報、特定企業へサイバー攻撃を行うための情報など、日本国内の法人組織がサイバー攻撃を受ける可能性がある情報をグローバル及びリージョン双方の視点で各地域の特性・地政学的特徴を踏まえた脅威分析を行い、該当の法人企業や政府機関、セキュリティ団体に提供することで、防御及び対策強化に寄与します。
「住み続けられるまちづくりを」と「平和と公正をすベての人に」に対しても取り組みを実施しています。サイバー犯罪やサイバー攻撃からどう守っていくのかということがこの2つのテーマに対する我々の貢献だと、定義して取り組みをしています。
警察や日本サイバー犯罪対策センター様等々とサイバー犯罪、サイバー攻撃の撲滅というところに貢献できるように連携しています。ランサムウェアへの対策や捜査協力も実施しています。
セキュリティ・ナレッジ&エデュケーション ・センター(セキュリティ教育)
セキュリティ・ナレッジ&エデュケーション ・センターでは法人企業向けの研修プログラムを提供しています。元々あった、トレンドマイクロのエンジニアやリサーチャーを育てるためのプログラムを活用したもので、サイバーセキュリティを担えるような人材不足の社会課題解決に向けて取り組んでいます。
また、エンジニアやリサーチャーだけではなく、日本国内、グローバルの双方から自社に必要なセキュリティ戦略を立案、推進するCISOや戦略マネジメント層、自社のビジネスの方向性を決定する経営層に対しても、当社が培ったベストプラクティスを体系化したインテリジェンスを提供しています。
トレンドマイクロが今後目指す姿
我々はお客様にサイバーセキュリティの現在の状況をより正確にお伝えしていきたいと考えています。正しい認識を持つことが次のステップとして対策につながっていきます。そのため、サイバーセキュリティの現在の状況をより正確に知っていただけるかというところにフォーカスして情報提供していきたいと考えています。
ESGやSDGsの取り組みは持続的に取り組むことで社会に貢献できると考えております。しかし、企業のビジネスとかけ離れたものに取り組むといずれ支障をきたします。そのため、自社の強みを捉えながら、社会にどう貢献できるのかということを考えていくのが重要だと考えています。
- 氏名
- 飯田 朝洋(いいだ ともひろ)
- 会社名
- トレンドマイクロ株式会社
- 役職
- 執行役員 サイバーセキュリティ・イノベーション研究所 所長