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(画像=Terra Drone株式会社)
徳重 徹(とくしげ とおる)
Terra Drone株式会社代表取締役社長
1970年山口県生まれ。
九州大学工学部を卒業後、住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)に入社し商品企画・経営企画を担当。
2000年に米サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得し、米国でスタートアップ企業の支援会社を立ち上げる。
帰国後、2010年にTerra Motors、2016年にTerra Drone、2021年にTerra DXの3社創業。
創業期から東南アジアや欧州など海外展開に力を入れる。
Terra Drone株式会社
「Unlock “X” Dimentisons(異なる次元を融合し、豊かな未来を創造する)」というミッションを掲げ、東京に本社を置き、国内外の11か国において、自社開発製の特許取得済みである測量用・点検用ドローンを石油ガス・化学・建設業界などへ提供。
ドローンを用いた非破壊検査作業に関して世界各国での豊富な実績と高い研究開発力を保持。
また、世界8か国で既に導入済みの運航管理(UTM)を展開。
空飛ぶクルマやドローンの開発及びソリューションを提供するドローンサービスプロバイダー。

これまでの事業の変遷について教えてください。

私は、スケールのある事業を創りたいというテーマから、2010年よりTerra Motors株式会社を創業しました。創業当時は2人しか入れないようなオフィスからスタートして、EV事業、さらにはドローン事業、建築DX事業の2つの会社を創業しあらゆる事業を展開してきました。日本のスタートアップ企業の多くは、ニッチトップを取るためにさまざまな事業をピボットしがちなのですが、私の場合は異なり、社会にとってのインフラになるような事業を作らなければならないという想いがあり、それはEV事業でもドローン事業でも同じだと考えていました。ただ、その分それぞれの事業を立ち上げる際には周りから反対の声があり、既存事業に迷惑はかけられないと思い、当初は私1人で事業を進めていました。

Terra Drone株式会社
(画像=Terra Drone株式会社)

2016年に立ち上げた当社は、ドローンの可能性に着目し、その力を最大限に引き出すことを目指してきました。当初はインフラ点検や土地測量などの業務から始まりましたが、その後空撮などの新たなサービスにも手を拡げ、さらにドローンの技術開発や研究にも力を入れてきました。また、日本国内だけでなく、国外にも事業を展開し、今では5か国に拠点を置き、サービス展開は世界11カ国に及びます。これまでの成長は、常に新たなチャレンジを恐れず、時代の変化に柔軟に対応してきた結果だと思っています。今後もその姿勢は変わらず、ドローンがより多くの人々の生活に役立つような新しいソリューションを提供し続けます。

一番感銘を受けた書籍とその理由は?

私が一番感銘を受けたのは「坂の上の雲」です。日露戦争の時代に生きた明治の志士たちを描いたこの作品は、決して容易な状況ではなかった彼らが如何にして信念を持って困難を乗り越え、国のために奮闘し、時には命を賭けて挑んだかを鮮明に描いています。ちなみに全10巻ある本書は、9割方の人が途中で読むのを挫折してしまうので、そういった方には200ページほどの「日本はなぜ日露戦争に勝てたのか」という瀧澤中氏の書籍をおすすめしています。

「坂の上の雲」で特に印象深かったのは、彼らが抱いていた国への強い愛情と勝利への戦略設計です。彼らは国のために何としてでも勝利を得ようと模索し、実行し続けました。その志は、今の日本人には希薄になっている分、より重要で取り戻す必要のある精神だと感じました。

読書はどのように仕事に生かせたでしょうか。

本書で書かれている日露戦争時代の日本は、スタートアップの経営と非常に共通する部分が多くあると私は考えています。当時の日本は開国期を迎え、列強諸国に対して国力も小さい中で、GDPよりはるかに大きい戦費を、勝てるか見込みが薄い戦争のために集める必要がありました。スタートアップ企業も創業時から、大企業との差別化を図り、スケール化できるか不透明な事業のために資金調達を行いながら、営業・開発・PRなど様々なことを同時並行で進めなくてはなりません。

具体的には、当時の日本は日露戦争開戦後、秋山兄弟主導の下で陸海の局地戦で必ず引き分け以上の戦果を納め、これを金子堅太郎という外交官がルーズベルトにアピールし、アメリカを緖に世界中の世論に影響を与えました。さらに、ロシア国内で明石元二郎という軍人がロシア革命の支援工作を進めたり、小村寿太郎が日英同盟を締結させたり、山本権平が組織体質の改革のため大規模なリストラを実行したりと、日本の独立を守るというビジョンのために、それぞれ役人がミッションを遂行させました。スタートアップ企業も同様に、大きなビジョンの下でそれぞれがミッションを遂行し、ある場面では企業PRでうまくいったり、またある場面では外部環境に変化を与えて市場を開拓したりと、一つ一つの成功が必ず必要になります。

そして、日本海海戦の際には、旅順港の封鎖工作のために募集の20倍ほどの国民が必死の覚悟で応募して作戦を遂行し、当時海上で最強と恐れらていたロシアのバルチック艦隊を、東郷平八郎主導の下、T字戦法という当時では掟破りの作戦を実行したおかげで、30分での決着を果たし、日本の独立は保たれました。企業のトップが重要な決断を下して、それに対して当事者意識を持って、社員それぞれが事業を遂行させることの重要性は、いうまでもありません。

つまり、トップから各部署の長、果てはパートナー先から末端の人々までが、自分の役割を理解して、祖国を守るという信念を持って200%の能力を発揮したことにより、ビジョンの達成が実現されたのと同様に、スタートアップ企業も全員が持てる能力の全てを発揮してミッションを達成しなければ、ビジョンの実現やスケール化することはできないと私は考えます。このように、「坂の上の雲」は、私自身の経営における哲学や、ビジョンへの確固たる信念に大きな影響を与えた1冊となりました。

経営において重要としている考え方を教えてください。

Terra Drone株式会社
(画像=Terra Drone株式会社)

私が経営者として重要視しているのは、リーダーだからこそ信念を持ったぶれない意思決定が必要で、これが世界に通用するものであれば世界を相手にしても勝てるということです。例えば、現在のイーロン・マスク氏を本気で超えようと思っている経営者が今の日本に何人いるでしょうか。幕末から明治維新にかけての日本ではたくさんの若者が、本気で列強を超えることを志していました。こうした意味では、歴史から学べるものはたくさんあり、それを若い人や後世に伝えていくことも重要だと考えています。事実だけを継承するのではなく、その意志や覚悟までを継承する必要があると考えています。

最後に、御社の未来構想や従業員への期待について教えてください。

未来構想は創業以来変わっておらず、新規産業のメガベンチャーを日本から生み出し世界で戦うこと、またそれを当社が具現化することです。今の日本では人口減少や高齢化が進むため、いかにして世界を相手に勝っていくのかが非常に重要です。ようやく当社も世界を相手に外貨を獲得できるような立ち位置に近づいてきたので、今後はより一層大企業と同じ規模で行えるかが鍵となります。

Terra Drone株式会社
(画像=Terra Drone株式会社)

従業員に対しては、Terra Droneグループのスピリットをしっかり継承して、私が引退した次の時代でも日本を背負っていけるような存在になってもらいたいです。そのため私は、経営のやり方や事業の基盤を作り上げるまでフルスイングで取り組むつもりです。ぜひメンバーには一生懸命ついてきて、私の後を任せられる存在になってもらえたらと思います。

氏名
徳重 徹(とくしげ とおる)
会社名
Terra Drone株式会社
役職
代表取締役社長