この記事は2023年9月13日に「第一生命経済研究所」で公開された「景気予測調査から見た四半期決算見通し」を一部編集し、転載したものです。


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目次

  1. 売上高・経常利益とも計画上方修正
  2. 増収率上方修正が期待される「不動産」「職業紹介・労働者派遣」「宿泊・飲食サービス」
  3. 「電気・ガス・水道」「窯業・土石」「食料品」等が増益率大幅上方修正

売上高・経常利益とも計画上方修正

9月13日に公表された2023年7-9月期法人企業景気予測調査は、今年8月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、今年10月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、全産業と非製造業では増収率が横ばい、製造業で下方修正となっている。このことから、四半期決算でも今期の売上高計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。

一方の経常利益は、非製造業の上方修正により全産業も上方修正になっているが、製造業は下方修正となっている。とはいえ、諸々のコスト増等により減益計画の姿に変化はない。このことから、10月下旬からの四半期決算発表では、製造業の一部で業績下方修正が出てくることが予想される中、非製造業で業績計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。

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増収率上方修正が期待される「不動産」「職業紹介・労働者派遣」「宿泊・飲食サービス」

以下では、10月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。

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結果を見ると、製造業では「木材・木製品」「石油・石炭製品」「鉄鋼」「非鉄金属」以外、非製造業では「農林水産」「鉱・採石・砂利採取」以外の業種で増収計画となっている。

こうした中、前年比の上方修正率が高い業種は「不動産」「職業紹介・労働者派遣」「宿泊・飲食サービス」「鉱・採石・砂利採取」「リース」となっている。

「不動産」については、引き続き都心の高額物件の人気が高いことや、オフィス需要が改善傾向にあること、日本のインバウンド回復などにより商業用不動産が堅調なこと等が反映されたことが推察される。また「職業紹介・労働者派遣」の上方修正については、30年ぶりの賃上げや最低賃金引上げが反映された可能性が示唆される。

一方、「宿泊・飲食サービス」については、コロナからのリオープンやインバウンド回復などにより値上げが進んでいる可能性が推察される。他方「鉱、採石、砂利採掘」は鉄鉱石など一部の資源価格が比較的堅調に推移していること、「リース」は昨年度来続く旺盛な企業の設備投資需要を反映したことが推察される。

「電気・ガス・水道」「窯業・土石」「食料品」等が増益率大幅上方修正

続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、特に製造業の多くの業種で減益計画となっており、これは諸々のコスト増や海外経済の減速懸念等が主因と推察される。

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こうした中、増益率の上方修正が目立つ業種は「電気・ガス・水道」「窯業・土石」「食料品」「医療・教育」「繊維」等であり、いずれも二桁を大きく上回る上方修正率となっている。

特に3桁の上方修正となっている「電気・ガス・水道」では、電気業金の値上げや原発再稼働による燃料費削減効果等が反映されたことが推察される。また「窯業・土石」については、売上高計画が小幅上方修正にとどまっていることからすれば、原材料価格の低下が上方修正に寄与している可能性が示唆される。

一方、「食料品」や「繊維」については、売上高も「リース」に次ぐ上方修正になっていることから、値上げ効果が功奏していることが推察される。他方「医療・教育」については、医療・福祉・介護・保育分野で入居率が底打ちして回復したことが寄与していること等が示唆される。

なお、日銀が10月3日に公表する9月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、ここ元の円安や原油高・金利上昇等の影響をより織り込んでいる可能性が高いため、9月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 永濱 利廣