せっかく自分の資産を外貨預金で運用するならば、他の人の平均的なリターンを下回る結果になることは避け、リターンの最大化を狙いたいところだ。そのためには、どのようなアプローチが考えられるだろうか。注意点も含めて具体的に解説する。
外貨預金のリターンの「平均点」とは ?
まずは外貨預金におけるリターンの「平均点」について、説明しておこう。
例えば、外貨預金で最も取引量が多い「米ドル」を選択した場合、日本円から換えた米ドルを1年間ずっと保有し続けたときに得られる金利収入と為替差損益の合計が、ここでいう「平均点」だ。外貨預金においてリターンの最大化を狙うためには、金利収入と為替差損益の2つにおいて、この平均点をクリアすることを意識したい。
仮に1年間保有しっぱなしにした場合に4%のリターンがあったとすると、平均点は「4%」ということになる。次項からは、この4%を下回らないためにリターン最大化の鍵となる「金利収入」と「為替差損益」のそれぞれの観点でどういったことに注意すべきかを解説していく。
金利収入で「平均点」を下回らないためには ?
まずは金利収入の側面から注意したいポイントを見ていこう。以下、金利収入で2%、為替差損益で2%のリターンがそれぞれある想定で説明していく。
「外貨預金を継続する」ことで平均点をクリア
金利収入の面では、大前提として外貨預金を継続することで平均点をクリアする、という視点が求められる。当然ではあるが、金利収入は外貨預金をしている間だけ発生するため、1年間のうち外貨預金をしていない期間があると、その分だけ金利収入を得ることができない。
ごく当たり前のことに感じるかもしれないが、こうした機会損失は目には見えないことから気づきにくい。
1年間のうち外貨預金をしていない期間が発生した場合
外貨預金をしていない期間が発生する (始めるのが遅れる) と、本来であれば得られたはずの金利収入がどれくらい減るのか具体的な数字で確認してみよう。
例えば、ある外貨を預金することで年間2%の金利収入が発生する場合、半年間しか外貨預金をしていないと、年間で得られる金利収入は1%だ。もし外貨預金を2,000万円分していた場合は、年間で40万円の金利収入を得られたはずだが、20万円に半減することになる。
1年間のうち4分の1の期間、すなわち3ヶ月間しか外貨預金をしていないと、年間で得られる金利収入はさらに減って0.5%となり、同様に2,000万円分の外貨預金をしていた場合は、金利収入は10万円まで落ちる。
【年利2%の外貨預金の場合】
外貨預金をしている期間 | 得られる金利収入 | フルリターンとの差 |
---|---|---|
1年間 (平均点) | 2.0% | 0.0% |
9ヶ月間 | 1.5% | ▲0.5% |
6ヶ月間 | 1.0% | ▲1.0% |
3ヶ月間 | 0.5% | ▲1.5% |
改めて念を押すが、金利収入の観点では何より「外貨預金を継続する」ことで機会損失を回避するのが最重要ポイントとなる。
為替差損益で「平均点」を下回らないためには ?
続いて、為替差損益の側面から注意すべきポイントを解説していく。
「さらなる評価損が怖くて外貨を円に戻す」ことをし過ぎない
為替レートは日々変動し、値上がりや値下がりを繰り返しながら、チャートが形成されていく。このチャートを見続けていると、下落が続いたら「さらに下落が加速するのではないか」といった恐怖心が生まれ、評価損が拡大することを懸念し、保有中の外貨を全て円に戻してしまいたくなることがある。
しかし、チャート上で下落一辺倒の状態が長期間続くのはそう頻繁にあることではなく、一時的に下落したからといって外貨を円に戻すという行為を繰り返すと、結果として為替手数料とあわせて為替差損を大きくしてしまう可能性があるため注意が必要だ。
外貨の運用においては、中長期的に外貨を保有することで評価損の回復を待つという視点も重要になるため、その場の感情に流されてしまわないようにしたい。
チャートの底で円に戻した場合と戻さなかった場合を比較
具体例を挙げて説明していこう。
例えば米ドルを保有していたとして、現時点で為替差損益がプラスマイナス0%だったとする。その後、一時的に2%円高ドル安が進んだ場合、米ドルを円に戻すと、2%の為替差損が確定する。しかし為替レートの下落はそこが底で、円安ドル高が進んで元に戻ると、つい安心して改めて円をドルに換えたくなる。
そして、そのタイミングで改めて円をドルに換えた後、また円での価値が2%下落して怖くなり米ドルを円に戻すと、再び2%の為替差損が確定する……。こうした悪循環を繰り返すことで、損失が積み重なっていく。
上記のケースでは、為替差損益がプラスマイナス0%のタイミングから見ると、結果として保有している米ドルの円での価値は2%しか下がっていないのに、1回目に円に戻した際の「2%の為替差損」と、2回目に円に戻した際の「2%の為替差損」で合計4%の損失を出してしまっていることになる。
「ほったらかし投資」という視点を持つことも大切
投資の世界では、高い成果を上げている人の一例として「投資をしているのを忘れている人」と説明されることがある。何もせずほったらかしにしておく方が、結果としてよい運用成績を残せることも少なくないということだ。
この「ほったらかし投資」という視点を持つことは、金利収入の観点でも非常に重要だ。せっかく外貨預金を始めても、為替差損が怖くて外貨を円に戻し、結果として外貨預金をしている期間が減ると、金利収入にも響いてくる。
しっかりと「外貨預金を継続する」ことが大切
外貨預金おいてリターンの平均点をクリアし、さらにリターンの最大化を狙うためには、何より外貨預金を継続することが重要だ。
マイボイスコム株式会社が行った「【外貨預金の利用】に関するアンケート調査 (第11回) 」によると、外貨預金の利用方法として経験者のうち35.4%が「金利がよいので、中長期間で保有し、金利差益を求める」、24.9%が「為替レートの変動を利用し、中長期間で保有し、為替差益を求める」と回答しており、半数以上が中長期目線で運用に取り組んでいることが分かる。
また同調査では、外貨預金を利用したい (続けたい) 理由として以下のような回答も上がっており、長期運用によって得られる利益はもとより、年金対策や分散投資効果、情報量の多さなども外貨預金のメリットとして捉えられていることがうかがえる。
・長期ではあったが為替利益でかなり家計が助かったことがある。いざというときのために持っておきたい。 (女性61歳)
・物価高騰、経済悪化により収入やもらえる年金が減るおそれがあり、より運用を積極的に行おうと思っているため。 (女性36歳)
・日本経済の成長に深刻な懸念があるので通貨は極力分散したい。 (男性55歳)
・ドル-円相場は情報が豊富なので、ある程度リスクを抑えつつ、高い利回りを期待できるから。 (男性49歳)
出典:マイボイスコム株式会社【 外貨預金の利用 】に関するアンケート調査 (第11回)
こうした経験者の視点も参考にしながら、まずはしっかりと平均点を超えるリターンを得られる運用をしてリターンの最大化を狙っていきたいところだ。
(提供:大和ネクスト銀行)
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