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(画像=株式会社ASNOVA
上田 桂司(うえだ けいじ)
株式会社ASNOVA代表取締役社長
2013年12月日本レンテクト株式会社を設立、2019年12月に商号を現在の株式会社ASNOVAに変更。 循環型社会に貢献するくさび式足場のレンタル需要にいち早く注目し、徹底した足場機材の管理基盤を作り上げた。 パーパス“「カセツ」の力で、社会に明日の場を創りだす。”を軸に既存の足場レンタル事業や海外展開等、様々な新規事業を拡大させる。
株式会社ASNOVA
2013年12月に創業、足場機材のレンタル事業をスタート。2022年4月、名古屋証券取引所ネクスト市場に上場。2023年12月25日に東京証券取引所グロース市場にも上場。海外子会社設立、全国各地への足場レンタルサービス「ASNOVA STATION」や仮設機材の総合サイト「ASNOVA市場」等、既存事業強化や新規事業展開、社内の人事・教育制度等もパーパスを意思決定の判断基準としている。パーパスを軸に仮説を立て、検証しながら、循環型社会への貢献と社会課題の解決に取り組む。

これまでの事業変遷について

―上田社長、ASNOVA社のこれまでの歩みについてお聞かせいただけますか?主に社長に就任された経緯から現在に至るまでの変遷について教えてください。

株式会社ASNOVA・上田 桂司氏(以下、社名・氏名略): 私の父親は福井県の敦賀市で別の事業をしていました。ただあまり大きな成長は見込めず、別会社として立ち上げたのが私共の現在の主力事業である足場のレンタル事業です。

足場というのは、材料不足が常に課題となります。自然災害や老朽化したマンションの修繕工事やリフォームなど、工事現場での需要が高いのに対して、資材の高騰もあって、足場が購入できない中でレンタルの需要に拍車がかかっております。こうした部分に社会的ニーズを感じて足場レンタルビジネスを始めました。

株式会社ASNOVA
(画像=株式会社ASNOVA)

―当時の心境についてもお聞かせいただけますか?

福井県敦賀市は人口や経済など、縮小していく市場の中で、とにかく生きるために必死でした。世の中を良くしたいという高い理想よりも、家族を守るために必死だったのです。ほとんど記憶がないくらいがむしゃらに、何でもいいから手を打たなければという状況でした。

―記憶もないほど必死に取り組んでいらっしゃったのですね…。

これまでのブレイクスルーについて

―現在はそのような危機的な状況からは脱却し状況は改善されていると伺っていますが、印象に残っている時期やターニングポイントはありましたか。

最近の話になりますが、上場したことは大きな転機だったと感じています。足場のレンタル事業は資材を手元に準備する必要があり、資金が先行する事業です。しかし、 足場レンタルは抵当権を設定できないため、借入が難しいのです。土地などとは異なり、消耗品としての扱いを受けるため、信用のみで資金を調達するしかありません。そこで上場による信用力が、この課題の克服に大きなインパクトを与えました。大きな調達と投資が可能になり、事業が一気に拡大しました。実際に昨年は20億円を超える投資が実現し、早速2拠点の機材センター新設に乗り出すことができました。

―なるほど、上場による信用がダイレクトに事業拡大につながるということですね。足場のレンタルで上場している企業様はあまりないかと思うのですが、どのような企業が御社の競合になるのでしょうか。

私共の取引先は足場施工業者や中小ゼネコンなどになりますので、上場している同業種の企業様とはそこまで競合しないのです。 そのため、競合他社はほとんど未上場の企業様です。

自社事業の強み

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(画像=株式会社ASNOVA)

―それらの競合企業とはどのような点で差別化されているのでしょうか。

一番大きな違いは保有量と拠点数です。保有量で言うと今は130億円規模の足場を確保できております。拠点数は19拠点、パートナー企業様を含めると合計で30拠点(2023年12月31日時点)になります。この業界は、お客様が必要な時に材料が近場で借りられるかどうかがものすごく大切なので、拠点数はものすごい強みになるのです。

―確かに、工事現場が様々な場所に分散していることを考えると、拠点数の多さは大きな利点となりますね。拠点数をこれほど拡大できた理由は何でしょうか?

資材を徹底的に管理し、お客様と丁寧に接し誠実な商売をすることを心がけるということを、創業以来ずっと実践し続けたことが理由だと思います。徹底しすぎるあまり最初は嫌味を言われることもありましたが、次第にこのような姿勢が多くの人に受け入れられたのだと感じています。

実はこの業界には特有の慣習的なルールが多く存在していました。私が業界に参入した当初、多くの人から「レンタル需要が大きい反面、困難が多いから覚悟がいる」と言われました。というのも足場レンタルは金融事業に例えられることもあるのですが、実質的には資金の貸し借りと似ているのです。足場のレンタル料金、つまり金利を取るわけです。そのため、新規参入もありますが、足場管理の難しさと業界特有の慣習的なルールへの対応に苦慮して、1年〜3年で撤退する企業様が多いのが現実です。

―つまり、これまでの常識に縛られない姿勢でビジネスを運営し、顧客や投資家の信頼を勝ち取ることができたということですね。

そうですね。もしかしたら業界の常識を変えたという部分もあるのかもしれません。

―ちなみに、市場の大きさがビジネスの規模に直結する業界であり、足場の量が強みとおっしゃっておりましたが、足場の稼働率はどのくらいなのでしょうか。

閑散期でも75%は稼働しております。新築やリフォームなど、市場の需要は大きいです。ただ、需要が大きい反面、在庫管理がとにかく難しいんです。この業界では昔から「足場の管理はだいたいで良い」と言われていたのですが、それが管理の難しさを物語っているのかもしれません。

具体的には、業界で平均すると四半期に一度の棚卸しで3%の差異が出るとされています。単純計算で100億円の足場があれば3億円分の差異が出るということです。しかし、私たちはこの差異を0.002%以下に抑えています。足場も自社の財産という感覚なので、とにかく徹底した管理をしております。銀行の貸し出しと同じように足場の貸し出しも一円でも、一本でも差異が出たら私たちは徹底的に原因を追求して再発を防ぎます。

―驚異的な精度ですね。実際の足場の組み立てや撤収はお客様で行われるかと思うのですが、どのように管理しているのでしょうか。

私たちは足場をレンタルすることが仕事ですので、実際の組み立てなどはお客様が行います。なので、多くの足場レンタル業者さんはお客様から返却いただく際に、1本や2本の違いを指摘することは少ないです。なぜなら、指摘する方が大変ですし、その小さな差分でお客様との関係を崩したくないと考えるのです。

しかし、私たちは、 例えば10,000本貸し出して、1本足りなかった場合、たった1本であってもしっかりと指摘して確認いただきます。そこを妥協することがお客様への配慮ではなく、適切に管理して正確にお取引を行うことが本当の誠意であると考えています。このように精度の高い管理を行うことで、一時的には嫌われてしまうこともありましたが、結果的にはこの姿勢が信頼に結びついていきました。

―それは素晴らしいですね。上場されたことで、これまで以上にリスク管理などの観点で社会的責任が求められるようになったかと思いますが、そのような徹底的な管理体制が社会から評価されているのでしょうか。

弊社ではしっかりとした経営を行っていると自負しています。上場するとコンプライアンスを含めた管理体制が求められますが、上場する前からしっかりとその点は整えていました。今まで、製品に不備があり事故などが発生した事例などもございません。万が一、製品に関する問題が発生した場合は、基本的にはメーカー保証が適用されますし、そもそも問題が生じないように管理を徹底しています。特に弊社の場合は私が誰よりもリスクへの意識を高めているつもりですが、現場の従業員の方々がリスクの管理には人一倍気を配ってくれています。

今後の展望について

株式会社ASNOVA
(画像=株式会社ASNOVA)

―続いて、今後の展望についてはどのように考えていますか?業界としては鳶職の方など人材が減少している傾向もあるとお聞きしたのですが。

お客様からは人手が足りないという声も聞きますが、職人が減少している訳ではなく、現場の需要の急増に対して人手が間に合っていないという状況だと思います。しかし、くさび式足場の特徴として、施工性の高さが挙げられます。従来の足場と比較して、人員を大幅に削減することが可能なのです。地域によっては職人さんが減少しているとの話もありますが、全国的に見れば私たちのお客様の数は増え続けています。実際に毎年150社から250社程度の新規のお客様が増加しています。

―すごい勢いですね。上田社長の今後の活躍も楽しみです。

ZUU online のユーザーへ一言

―最後に、メディアユーザーの皆様や投資家の方々へのメッセージをお聞かせください。

足場レンタルビジネスは、社会インフラを支える非常に重要な事業です。足場は工事が完了すると撤去されますが、その存在がなければ建設は成り立ちません。私たちは足場をみんなでシェアすることで、循環型社会への貢献を目指しています。事業の特性上、社会からの認知度は低いですが街中で足場を見かけた際には、私たちASNOVAの名前を思い出していただけたら嬉しいです。これからも私たちは使命感を持って事業に取り組んで参りますので、この社会にとってかけがえのないビジネスを、末長く応援していただけたら嬉しいです。

―本日は貴重なお話をありがとうございました。