カー用品販売大手のオートバックスセブン<9832>が、全従業員4477人(2023年3月末)の2%強に当たる100人の人員削減を打ち出した。勤続10年以上の満50歳から57歳の正社員を対象に早期退職者を募り、2024年3月31日に実施する予定。
持続的に成長するためには、人員規模の最適化が必要というのが削減理由で、業績悪化に伴うものではない。事実、2023年3月期は3.3%の増収、1.5%営業増益となっており、コロナ禍の中、業績は堅調に推移している。
ただ、同業の大手イエローハット<9882>と比較すると、営業利益率は半分ほどで、本業で儲ける力ではイエローハットの後塵を拝していることが分かる。人員削減によって差は縮まるのか。両社の状況を見てみると。
社員の多様なライフプランを支援
オートバックスは人員削減と同時に、早期退職優遇制度を導入した。退職者にはキャリア(技術や知識、経験など)を向上させるための支援金を支給するとともに、希望者には再就職支援会社を通じた再就職支援を行う。
すでに企業競争力を高めるために、社員のリスキリング(新しい知識やスキルを学ぶこと)やキャリア転換をはじめ、多様な働き方を支援する人事制度の改革を進めている。
今回の人員削減もこうした取り組みの一環で、競争力の向上とともに社員の多様なライフプランを支援するのが目的だ。
支援金などの費用についての詳細は未定だが、2024年3月期に特別損失として計上する。
その2024年3月期は、売上高は前年度よりも0.9%少ない2342億円、営業利益は1.5%多い119億円を予想する。
当期利益はフランスの2店舗を閉鎖したことによる特別損失が発生したため、前回予想(2023年7月)よりも9億円引き下げ90億円(前年度比24.3%増)を見込む。人員削減による特別損失を計上すれば、この数字はさらに下がることになる。
7期連続の営業増益に
一方、イエローハットの2024年3月期は、売上高1500億円(同1.9%増)、営業利益155億円(同1.6%増)の見込み。売上高が増加に転じるのをはじめ、営業利益は2018年3月期以来7期連続の増益となる。
タイヤやオイル、バッテリーなど消耗品の販売が堅調に推移しているほか、車検工賃収入なども増加しているため増収増益を予想する。
2024年3月期の営業利益率を見ると、オートバックスセブンが5.08%なのに対し、イエローハットは10.33%で2倍ほどの開きがある。両社ともにコロナ禍の中、利益率を上げてきているが、その差は開いたままだ。
人員削減によって人件費が抑えられれば、両社の営業利益率の差は縮まる可能性がある。2025年3月期はどのような数字で着地するだろうか。
文:M&A Online