2023年も大詰めを迎えつつあるが、国境をまたがるクロスボーダーM&Aはグローバルで見ると大幅なマイナスで着地する見通しだ。英米の調査会社とコンサルティング会社の調べで明らかになった。なぜ、そうなったのか?

金利高がクロスボーダーM&Aのブレーキに

金融調査会社リフィニティブによると、世界のクロスボーダーM&A(実行ベース)は2022年第2四半期(4~6月)から減少に転じている。2022年通年では前年比15.5%減の1兆3904億ドル(約202兆5700億円)と落ち込んでいたが、2023年1~9月には、さらに前年同期比48.8%減の5721億ドル(83兆3500億円)と半減した。

件数でも2023年1~9月は同16.4%減の9080件に落ち込み、四半期ベースでは2023年第3四半期(7~9月)に12四半期ぶりに3000件を下回るなど低調だ。クロスボーダーM&Aを牽引するEU、米国でコロナ禍により経済が低迷した2020年半ばの水準まで落ち込んだ。中国も景気停滞の影響から、クロスオーバーM&Aは2010年以降で最低水準まで減速している。

ボストンコンサルティンググループの調査でも、2023年1〜8月のM&A市場は、取引総額ベースで同41%減の約1兆1,800億ドル、件数で同14%減少に落ち込んでいる。こうしたクロスボーダーM&Aにブレーキをかけているのが、金融引き締めによる資金調達環境の悪化だ。

とりわけプライベート・エクイティ(PE)ファンドとベンチャー・キャピタル(VC)では2022年半ばから金利の上昇に伴う資金調達条件の逼迫や経済的不確実性などの要因により、新規投資意欲が減退したのに加えて、既存の投資にも大幅な切り下げが見られた。

低金利を維持している日本のM&Aが年間総件数でリーマンショック前年の2007年(1169件)以来16年ぶりに1000件の大台に乗せる見通しなのも、「高金利がM&Aを抑制する説」を裏付けている。

欧米では金融引き締めが見直され、2024年早々にも金利が低下する可能性が高い。金融緩和があれば、欧米企業が「買い手」となるクロスボーダーM&Aの復活に期待できそうだ。

文:M&A Online