2022年11月に政府が打ち出した「スタートアップ育成5か年計画」。出口戦略の多様化が掲げられ、スタートアップのM&Aも注目される。スタートから1年余りが経過した今、スタートアップをめぐる環境に変化は生じているのか。注目のトークセッションが昨年末、都内で開催された。

イベントは事業化支援などを行うゼロワンブースターが主催。「『スタートアップ育成5か年計画』推進者が振り返る、2023年の挑戦とこれからの日本」と題したトークセッションに、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局企画官の池田陽子氏、ゼロワンブースターの合田ジョージ代表CEOが登壇した。

M&A Online

(画像=会場の様子、「M&A Online」より引用)

スタートアップ5か年計画の3本柱と現状

池田氏はまず、スタートアップ5か年計画について簡単に説明。岸田政権が掲げる「新しい資本主義」で社会課題の解決と経済的利益の両立を目指す中、いずれも追求できるのがスタートアップだと強調。岸田政権1丁目1番地の政策であり、内閣官房はその司令塔役となると述べた。

そのうえで「人材・ネットワークの構築」「資金供給の強化と出口戦略の多様化」「オープンイノベーションの推進」が強化対象の3本柱となることを紹介。足元の状況として、農水省、国土交通省をはじめ、防衛省でも軍事・民間両用のデュアルユースとしてスタートアップの知見の活用を模索しており、あらゆる役所がスタートアップの創出に目を向けていると説明した。

スタートアップを増やすには?

スタートアップの盛り上がりについて合田氏が聞くと、池田氏は統計がないものの、相談の多さやスタートアップへの就職や起業を志す東大生が増えたことなど、「体感として盛り上がってきていると思う」「社会が変わってきている」と所感を述べた。

そのうえで、合田氏は、起業家創出に向けたさまざまな課題を提示。いちからの起業だけではなく、スピンオフ、カーブアウトの利用をすべきではないか。都心部と地方とで起業家志向に大きな差があることをどうとらえるべきか。欧米に比べて起業経験のあるベンチャーキャピタリストが少ないことをどう思うか。雇用の在り方についてどう思うか、などの質問を投げかけた。

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(画像=進行役を務めたゼロワンブースターの合田ジョージ氏、「M&A Online」より引用)

これに対して池田氏は、様々な形態の起業に対応した支援が豊富にある状態であり、多様な起業に対応したいとし、都市部と地方の意識の差についても、日本全国でムーブメントを盛り上げ、スタートアップエコシステムを含めて、地方へ波及させることが大事だと述べた。また、起業経験を持つベンチャーキャピタリストの存在についても重要だとし、エンジェル投資家も含めて起業経験を持つ投資家が増えることを後押しできればと語った。

また、雇用の在り方について、日本に根を張る終身雇用といった旧来のシステムからは解き放たれつつあり、それがスタートアップの盛り上がりにもつながっていると指摘、雇用の流動性を高めるために、ジョブ型雇用ではない能力に見合った新たなシステムへの取り組みも必要だと述べた。

行政との結びつきに話が及ぶと、池田氏はスタートアップを支える上で、政府の公共調達などのサポートは重要であり、「リソースを提供する主体として政府が活躍する余地はまだまだ大きい」と述べた。