RC造の耐用年数は47年・寿命は平均68年|防音性や注意点を解説
  1. 耐用年数の意味、RC造と他構造の耐用年数の違い
    1. 耐用年数とは:通常の効用持続年数のこと
    2. RC造の耐用年数:最も長い47年
  2. RC造の寿命:平均で68年、メンテナンス次第で変わる
    1. 建築学の第一人者の研究ではRC造の寿命は平均68年
    2. 賃貸住宅は11~15年目で大がかりなメンテナンスが必要
  3. RC造はうるさい?メリット・デメリットを解説
    1. メリット:耐震性、耐火性、防音性に優れている
    2. デメリット:建築コストが他構造よりも高い
  4. RC造の耐用年数に関する注意点
    1. 注意点1:耐用年数はローン審査に影響を及ぼす
    2. 注意点2:建物と附属設備の耐用年数は違う
    3. 注意点3:RC造の建物の強さには外的要因も影響する
  5. 環境に配慮したコンクリートでRC造を建築
  6. RC造に関するQ&A
    1. Q.RC造とSRC造の違いは?
    2. Q.RC造の欠点は?
    3. Q.RC造とはどういう造りか?
    4. Q.RC造とSRC造のどちらの造り方がいいのか?
    5. Q. RC造は何年持つ?

本コラムでは、初心者向けに「RC造の耐用年数」、RC造のメリット・デメリット、注意点について紹介する。

耐用年数の意味、RC造と他構造の耐用年数の違い

はじめに耐用年数についてわかりやすく解説したうえで、今回の主題であるRC造の耐用年数と他構造の耐用年数を比較していく。

耐用年数とは:通常の効用持続年数のこと

不動産投資に使われる建物などの減価償却資産は、それぞれに法定耐用年数(以下、耐用年数)が定められている。耐用年数とは、東京都主税局では以下のように記されている。

減価償却資産の「耐用年数」とは、通常の維持補修を加える場合にその減価償却資産の本来の用途用法により通常予定される効果をあげることができる年数、すなわち通常の効用持続年数のことをいい、その年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)により定められています。

出典:東京都主税局「償却資産の評価に用いる耐用年数」※この先は外部サイトに遷移します。より

「耐用年数=償却資産の寿命」と解釈されることもあるが、これは正確ではない。あくまでも耐用年数は「通常の効用持続年数」であることに留意したい。

例えば、通常の効用と比べると効用が劣っても耐用年数を大きく超えて資産を使い続けられる場合もある。また耐用年数は、通常の維持補充を加えながら使用した場合を想定していることも見逃せない。建物でいえば一般的なメンテナンスを怠った場合、耐用年数以下の寿命になる可能性もある。

RC造の耐用年数:最も長い47年

まず、不動産の建物の構造には主に以下の種類がある。

W造(Wood):木造
S造(Steel):軽量鉄骨造・重量鉄骨造
RC造(Reinforced Concrete):鉄筋コンクリート造
SRC造(Steel Reinforced Concrete):鉄骨鉄筋コンクリート造

それぞれの減価償却資産の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)で定められている。例えば、RC造の建物(住居用)の耐用年数は47年だ。なお他の構造の耐用年数と比較すると以下のようになる。

<建物(住宅用)の構造別耐用年数早見表>

構造耐用年数
木造、合成樹脂造22年
木骨モルタル造20年
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造47年
れんが造、石造、ブロック造38年
金属造4ミリメートル超34年
3ミリメートル超、4ミリメートル以下27年
3ミリメートル以下19年
出典:国税庁※この先は外部サイトに遷移します。「主な減価償却資産の耐用年数表」より株式会社ZUU作成

RC造の寿命:平均で68年、メンテナンス次第で変わる

建築学の第一人者の研究ではRC造の寿命は平均68年

前提として建物の寿命は、一般的に「木造<鉄骨造<RC造」といわれる。これに基づくと寿命の長い建物を購入して不動産投資をしたい場合は、RC造を選択するのが望ましいということになる。

また、耐用年数を短く選択して1年あたりの減価償却費を増やしたい場合は「木造を選択する」という考え方もできるだろう。

RC造の建物の平均寿命については、諸説ある。例えば、国土交通省のまとめた資料「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」内では、論文や研究などに基づきRC造の平均寿命は68年(小松幸夫氏〈2013〉「建物の平均寿命実態調査」)、あるいは117年(飯塚裕〈1979〉「建築の維持管理」鹿島出版会)などのデータが示されている。

賃貸住宅は11~15年目で大がかりなメンテナンスが必要

上記の平均寿命に基づくと、RC造の建物による不動産投資はメンテナンス次第で耐用年数を大きく上回る期間、収益を得ることが期待される。

具体的なメンテナンスとしては、 RC造の外壁は12年目前後で補修・塗装工事が必要といわれている。また他の箇所もおおむね11~15年目で手入れが必要だ。建物の寿命を伸ばすための建物メンテナンスのチェックポイントには、以下のようなものがある。

・屋根:割れ、ズレ、色あせなどがないか?
・外壁:ひびやシーリングの劣化などがないか?
・雨樋(あまどい):割れやジョイント部の接合に問題がないか?
・ベランダ:鉄部のさびや割れなどがないか?
・階段、廊下:同上

出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」※この先は外部サイトに遷移します。より

RC造はうるさい?メリット・デメリットを解説

不動産投資を始めるにあたって、RC造の建物を検討しているならメリット・デメリットを知っておくことも重要だ。他の構造と特徴を比較すると以下のようになる。

<RC造と他構造との特徴比較表>

○:優れている
△:やや劣る
×:劣る

RC造
鉄筋コンクリート造
SRC造
鉄骨鉄筋コンクリート造
S造
鉄骨造
W造
木造
耐震性
耐火性
防音性
建築コスト×

メリット:耐震性、耐火性、防音性に優れている

比較表の通り、RC造は他の構造と比べて以下のメリットがある。

耐震性がある
RC造は引っ張る力に強い鉄筋と圧縮に強いコンクリートを組み合わせた構造だ。これにより、高い強度を保つことが期待できる。

耐火性がある
RC造は鉄筋をコンクリートで覆っているため、火災が起きても素材そのものが全焼することはほとんどなく、比較的弱体化しにくい。

防音性が高い
RC造で使われているコンクリートは、木材に比べて質量や密度が高いため、防音性を発揮しやすい。

デメリット:建築コストが他構造よりも高い

RC造(鉄筋コンクリート造)は、他の構造(木造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造)に比べて建築コストが高い傾向にある。特に木造の建築コストと比較すると大きな差があるのが特徴だ。

国税庁の調査によると、RC造と他の構造の全国平均の工事費用は、以下のような差がある。

<地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和5年分用】全国平均>

構造工事費用
1平方メートルあたり
鉄筋コンクリート造(RC造) 27万8,000円
木造(W造)17万7,000円
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)26万5,000円
鉄骨造(S造)27万2,000円
出典:国税庁※この先は外部サイトに遷移します。「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和5年分用】」より株式会社ZUU作成

RC造の耐用年数に関する注意点

RC造の建物で不動産投資を検討している人は、以下の注意点に留意したい。特に「注意点1」の不動産投資ローンとRC造の耐用年数の関係は押さえておきたいポイントだ。

注意点1:耐用年数はローン審査に影響を及ぼす

「耐用年数が何年残っているか」は、不動産投資ローンの審査の可否や返済期間に大きく影響する傾向がある。

金融庁の「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」によると、「融資期間を物件の法定耐用年数以内に設定しているか」の問いに対して、「必ず行っている」「概ね2/3以上の案件で行っている」「概ね1/3〜2/3の案件で行っている」「概ね1/3未満の案件で行っている」を合わせると、銀行の97%が融資期間を物件の法定耐用年数以内に設定していることになる(回答した銀行数115)。

この結果からすると、不動産投資ローンの審査で融資期間を長くしたい場合は耐用年数が長いRC造マンションなどを選ぶとよいだろう。ただし、RC造の建物であれば必ずしも融資期間を長くできるわけではなく、そもそも耐用年数を過ぎていたり、残りの耐用年数がわずかしか残っていなかったりする場合、融資期間は短くなる。

注意点2:建物と附属設備の耐用年数は違う

前述の通りRC造の建物(住居用)の耐用年数は、新築の場合で47年だ。ただし、建物とそれに附属している設備の耐用年数は異なる。附属設備とは、入居者の生活に欠かせない電気設備やライフラインなどのことだ。

附属設備耐用年数
電気設備(照明設備を含む)蓄電池電源設備6年
その他のもの15年
給排水・衛生設備、ガス設備15年
出典:国税庁※この先は外部サイトに遷移します。「平成30年分確定申告書等作成コーナー よくある質問」より株式会社ZUU作成

上記のように、附属設備は建物よりも短い耐用年数が設定されているため、その分効率的に減価償却費を計上していきやすい。

注意点3:RC造の建物の強さには外的要因も影響する

RC造のメリットとして、他の構造よりも耐震性や耐火性があることに言及した。しかし建物の強さには、最終的に物件がある区域の以下のような外的要因も影響してくるため、注意が必要だ。

建物倒壊の危険性
火災の発生による延焼の危険性
洪水、土砂災害、津波などの危険性

購入を検討している物件がある区域のリスクを調べる方法には、以下のようなものがある。

・建物倒壊や火災のリスクについて
国土交通省が運営している「ハザードマップポータルサイト」※この先は外部サイトに遷移します。に物件の住所を入力すれば、地震防災・危険度マップで地震被害シミュレーションなどを確認できる。

また東京都に所在する物件の場合、東京都都市整備局の「地震に関する地域危険度測定調査」※この先は外部サイトに遷移します。にアクセスすることで、対象エリアの建物倒壊危険度や火災危険度の確認が可能だ。

・洪水・土砂災害・津波などのリスクについて
同じく「ハザードマップポータルサイト」に物件の住所を入力すれば洪水や土砂災害、高潮、津波などのリスクを確認できる。

環境に配慮したコンクリートでRC造を建築

RC造の鉄筋コンクリートを製造する際、多くの二酸化炭素を排出することが懸念されている。林野庁の資料によると、木造1戸当たりの材料製造時の炭素放出量は5.1tであるのに対し、鉄筋コンクリート住宅1戸当たりでは21.8tと4倍以上である。

そもそも二酸化炭素はコンクリートの元であるセメントの製造工程で排出されている。そこで、セメントの量を減らし、減らした分を他の素材で補うという環境配慮型のコンクリートが開発された。

セメントの代わりの素材だが、具体的には鋼鉄を製造する際に生じる副産物であったり、石炭灰の一種である素材であったりなどが活用されている。さらに、特殊なカーボンリサイクル製品をセメントの代わりに使用することで、二酸化炭素の排出量がマイナスになるというコンクリートまで生まれている。

将来的に、こうした環境配慮型コンクリートを活用してRC造物件を建築することで、地球に優しい不動産投資を行うことができるだろう。

RC造に関するQ&A

Q.RC造とSRC造の違いは?

違いは「鉄骨が入っているか、いないか」である。

RC造の読み方は「あーるしーぞう」で、鉄筋コンクリート造のことである。一方、SRC造は「えすあーるしーぞう」と読み、鉄骨鉄筋コンクリート造のことである。鉄筋を組んだ中に鉄骨を入れてコンクリートで固めたのがSRC造の特徴だ。

Q.RC造の欠点は?

RC造の最大の欠点は「コスト」である。下表のように、4種の構造の中で最も工事費用が高くなっている。一方で耐用年数は長いことから、総合的に捉えるとコスト面のデメリットもそれほどでもないと考えられる。

<地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和5年分用】全国平均>

構造工事費用
1平方メートルあたり
法定耐用年数
鉄筋コンクリート造(RC造) 27万8,000円47年
木造(W造)17万7,000円22年
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)26万5,000円47年
鉄骨造(S造)27万2,000円重量鉄骨造34年
軽量鉄骨造27年
出典:国税庁※この先は外部サイトに遷移します。「地域別・構造別の工事費用表(1㎡当たり)【令和5年分用】」より株式会社ZUU作成

また、コンクリートが混ざっていることによる主なデメリットは以下の通りである。

・緩い地盤では建築が難しい
・強固な分、取り壊しや増改築が困難
・日当たりが悪いと経年による汚れが付きやすい
・コンクリート内に水分があることから換気システムが必須

Q.RC造とはどういう造りか?

RC造とはどういう造りか

鉄筋コンクリートとは、棒鋼(鉄筋)を立方に組んだ状態のところにコンクリートを流し込み、固めたものである(上図参照)。コンクリートは圧縮力が強いものの引張力は弱いとされ、それを引張力の強い鉄筋で補強しているのが鉄筋コンクリートの特徴だ。

Q.RC造とSRC造のどちらの造り方がいいのか?

本文の「RC造と他構造との特徴比較表」で示したとおり、耐震性・耐火性・防音性はどちらも優れている。その中でも、SRC造は揺れに強い構造と言われており、耐震性を重視するのであればSRC造が良いだろう。

Q. RC造は何年持つ?

国土交通省の「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」によれば、論文や研究などに基づきRC造の平均寿命は68年(小松幸夫氏〈2013〉「建物の平均寿命実態調査」)とされている。

また、同資料には平均寿命117年(飯塚裕〈1979〉「建築の維持管理」鹿島出版会)といったデータも示されている。

(提供:manabu不動産投資

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