1972年生まれ。札幌市出身。1995年北海道拓殖銀行に入行、日本放送協会(経理財務)を経て、2007年に株式会社ビー・ユー・ジー(現 DMG MORI Digital株式会社)へ入社。
管理部門で経営企画、人事などに従事。
2018年から2年間は親会社のDMG森精機株式会社(経理部)へ出向。2022年3月代表取締役社長に就任。
2008年株式会社森精機製作所(現DMG森精機株式会社)のグループ会社となり、工作機械制御、組込通信技術、画像処理技術と幅広い技術領域で事業を展開しています。
2021年10月「プラチナくるみん認定」を取得。個人の能力を最大限発揮できる企業を目指し、社員の健康保持・増進に取り組んでいます。
貴社のこれまでの組織拡大の沿革
弊社は1980年に株式会社ビー・ユー・ジーとして、北海道大学の大学院生4名により設立されたITベンチャーです。当時は、学生が起業することやITベンチャー自体が珍しかった時代だと思います。そのような時代に、弊社の創業者たちは、大学で学んだコンピューターを使った仕事を故郷の札幌で一生続けていきたいと考え、会社の設立に至ったと聞いております。ちなみに、私自身は2007年にキャリア採用で弊社に入社しました。
その後、創業後の比較的早い時期から大企業とお取引させていただく機会にも恵まれ、コンピューター産業の発展とともに、弊社も成長してきました。また、1990年代後半には、家庭へのインターネット普及の波にのりISDN回線用のTA(Terminal Adaptor)のヒットもありました。
社員数が100名強となっていた2008年、現在の親会社であるDMG森精機株式会社(当時の社名は株式会社森精機製作所)と資本業務提携を締結しました。その背景として、DMG森精機には、工作機械におけるITの重要性が増すことを見据え、グループ内にITの会社を持つ戦略がありました。
DMG MORIのグループに入った以降、工作機械向けの制御ソフトウェアやネットワークの開発が弊社の主力事業になっています。現在、社員が200名以上おり、そのうちの8割以上がDMG MORIの工作機械に関わる開発に従事しています。その他、以前から続けていた組込み通信系の技術を使った、お客様向けの開発も行っています。
これまでぶつかってきた組織課題
工作機械向けのソフトウェアを開発することになったときに、これまで持っていたシステム開発やソフトウェア開発に関する知識・ノウハウに加えて、会社として馴染みの薄かった工作機械や製造業に関する知識が必要になりました。当然、工作機械をお使いになる製造業のお客様の仕事も理解する必要もあり、これらの知識を獲得することが大きな組織課題でした。
また、それ以前に経験していたお客様向けにシステムを受託開発をすることとの違いがあります。受託開発では、お客様からシステムに対する要求があります。一方、DMG MORIグループの一員として開発を行うときには、DMG MORIから要求が来るのではなく、我々自身がエンドユーザーのお客様に必要なものを把握し、それを自分たちの技術でどう解決できるか、どのような価値を提供できるかということを考える必要があります。製造業という未経験の市場でのこのような開発は、非常にチャレンジングなことでした。
これらの課題には現在も継続して取り組んでいます。DMG森精機から当社へ出向してきている20名ほどのエンジニアに引っ張ってもらいながら、親会社の工場やお客様先へ出向くなどして開発者全員で工作機械や製造業に関する知識の底上げをはかっています。それにより、弊社が元々持っていたIT技術との相乗効果で、お客様にとって価値のある開発ができると考えています。
社長が考える、今の時代に必要な従業員との向き合い方
社員との向き合い方については、今の時代に限ったことではありませんが、モチベーションを持って仕事をできる環境を提供することが重要だと考えています。 我々の会社では、創業後の早い時期から経営理念として「SUCCESS IS MUTUAL」を掲げています。「成功はお互いに」という意味で、自社だけではなくお取引先様と一緒に成功することが重要だと考えています。会社と社員の関係でも同様で、会社だけが利益を追求するのではなく、社員やその家族も幸せになれるように、という精神を大切にしています。
社員が何にモチベーションや満足感を感じるのかは、個人個人でも違いますし、時代によって変わるものもあると思います。 お給料をもらうこと、やりたい仕事ができることは、一般的に、今も昔もモチベーションに繋がる要素だと思います。一方、時代の変化に伴い、最近では健康経営やライフワークバランスが、以前よりも重要視されるようになってきました。 そのため、今の時代では、社員にモチベーションや満足度を持って仕事をしてもらうために、健康の維持増進やプライベートの充実を考えた経営が重要だと捉えています。
従業員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること
弊社では、昔から社員食堂で昼食と夕食を提供しています。元々、創業者が「良い仕事をするためには質の良い食事は大事」という考えを持っており、札幌の三つ星レストランを経営する会社からシェフを招いて、社員食堂で調理をしていただいています。社員からの評価も高く、以前の社内アンケートで「会社の誇り」を聞いたときには、社員食堂が一位になったほどです。
また、近年では親会社とともに、労働時間の管理に気を配り社員の健康を守る取り組みを行っています。例えば、在社時間は1日12時間以内まで、終業から翌日の勤務開始までに12時間のインターバルを必ず取るようにする、といった感じです。
男性の育休取得も推進しており、2020年以降の取得率は100パーセントです。高取得率である理由のひとつには、一定の条件を満たした場合育児休業の最初の20日間は有給扱いという制度が影響していると思います。ただ、それ以上に重要なのは「育休を取得してもよい」という雰囲気が会社全体にあることです。このような空気は、職場の社員全体の育休取得に対する理解と支持があってこそ醸成されるものです。
会社は育休取得を奨励することを積極的にアナウンスしますし、部門長も部署内でそのことを伝えます。その姿勢が社員に浸透し、育休を取得することが当たり前となっています。弊社の成り立ちが、学生が作ったITベンチャー企業であることも、このような企業文化に影響しているかもしれません。現在は、大企業のグループ会社ですが、ベンチャー企業の精神が残っており、社員が働くために必要なことを自ら提案し、実行に移す風土が根付いています。
今後の取り組みにおけるテーマや課題
今後の取り組みのひとつに、「社員が持つスキルの可視化」があります。 弊社には現在200人強の社員がおり、その大半がエンジニアです。エンジニアとして必要なスキルを適切に定義し、各社員のスキルがどの段階にあるのかを本人と上司が共有し、社員の成長に結び付けられるようにしたいと考えています。
そのために、社員のスキルシートのようなものを作成し、本人と上司が共有する、上司はそれを踏まえて成長につながるような仕事を適切にアサインする、といった仕組みを作ろうとしています。これまでも同様の取り組みを試みたことはありますが、残念ながら定着しているとは言えません。今回は実効性がありしっかりと定着する制度を作るために、検討段階から若い社員にも参加してもらい、焦らず時間をかけて制度設計をしているところです。
弊社では、2022年から社員満足度調査を行っています。給与や職場環境、福利厚生などの満足度は相対的に高いのですが、「仕事を通じた自身の成長」に対する満足度は低めの結果となりました。先ほど述べた仕組みを導入し、組織として社員の成長を後押しすることで、社員の満足度向上にもつながるものだと考えています。
今後の展望と従業員への期待について
DMG MORIが推進している「マシニングトランスフォーメーション(MX)」は、工程集約、自動化により製造業の製造プロセスをリーンな体質にする、またその全プロセスをDXにより改善するものです。従いまして、DMG MORIカーのIT開発の中核会社である弊社に、この戦略を推進するために行うべき開発が山ほどあります。
この非常にチャレンジングな立ち位置を、今いる社員も、これから仲間に加わってくれる社員も一緒に楽しみ、世の中に貢献している充実感を感じて仕事をしていきたいと思います。 この大きな目標に向かうためにも、一人一人の人材を大切に育てていきたい、社員のエンゲージメントを高めていきたいと強く思います。
- 氏名
- 鈴木 祐大(すずき ゆうだい)
- 会社名
- DMG MORI Digital株式会社
- 役職
- 代表取締役社長