特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。
これまでの事業変遷について
ーー創業から上場までの事業変遷についてお伺いさせてください。
株式会社Fast Fitness Japan 代表取締役社長・山部 清明氏(以下、社名・氏名略): 弊社は2010年にビジネスをスタートさせ、当時、日本で初めて、24時間型ジム「エニタイムフィットネス」を展開しました。現在は全国の都道府県で約1,100店舗以上を展開し、80万人以上の会員様にご利用いただいています。弊社の歴史は大きく分けて3つのフェーズに分かれています。創業フェーズ、フランチャイズオーナー開拓による成長フェーズ、そして全国展開フェーズです。
創業フェーズは、ビジネスモデルの確立です。まずは直営店を運営し、損益分岐点が低く、いかに固定費の少ない筋肉質な強みを持つビジネスモデルを確立できるかを模索し続けました。その後、フランチャイズ展開をスタートし、2015年頃から本格的に加盟店が増え始めました。フランチャイズオーナー様には、利益が上がるビジネスであることを実感していただき、弊社がサポートする形で店舗を増やしていきました。
その後、全国展開が始まり、2010年代後半頃から毎年100店舗以上のペースで店舗が増え続けました。特に、初期から加盟していただいたフランチャイズオーナー企業をはじめとした有力な会社様が全国展開を支えてくださいました。その後もハイペースで店舗が増え続け、現在は約1,100店舗以上に至ります。
ーー 上場の背景には何があったのでしょうか?
山部 :店舗が急拡大していく中でさらなる拡大のために、実は、2015年から上場を目指し始めました。しかし、コロナが発生し、エニタイムフィットネスも一時的に閉鎖せざるを得ない状況となり、厳しい局面に立たされたのです。それでも、弊社では様々な対策を早期に講じ、運動を続けたいという方々が早く戻っていただけるよう努力と対策を実施し続けました。結果、ビジネスは縮小することなく、2020年12月に上場を果たすことができました。
ーーかなり競合他社や類似サービスなども増えてきている昨今ですが、貴社の優位性や強みはどのようなところだとお考えですか?
山部:まずは圧倒的な店舗数です。確かに24時間営業のジムは最近増えてきましたが、我々は全国のほとんどの街に展開しております。お陰様で誰に伺っても「エニタイムはうちの近くにもあります」といってくださるほどのブランドとなりました。それが何よりもの強みと考えております。
また、常にスタッフがいるということも強みの1つです。トレーニングマシンの使い方がわからないといった問題にも対応でき、さらに、監視カメラが20台近くあり、あらゆる角度で全て録画しているので、何かあってもすぐ対応できます。
そして、我々の特徴は、安全・安心・清潔・快適を重視していることです。いつ行ってもエニタイムは綺麗だという感想をたくさんいただいているので、そこが差別化の大きなポイントだと考えています。
今後の事業戦略について
ーー今後の戦略や展望についてお聞かせいただけますか?
山部:まずは、新規のお客様に店舗に来てもらう仕掛けをどんどん展開していきたいと考えています。実際に、当社のジムに入会される方の中で最も多いパターンは、人からの紹介が多いのです。そのため、お客様同士の信頼感を大切にし、口コミで広がるような仕組みを続けていきたいと思っています。また、SNSや配信などのコミュニケーションツールも活用していくつもりです。 さらに、12月から1月にかけて、全国で大規模な広告を展開しています。テレビやWebを通じて、健康的な運動習慣をつけるアピールを行いたいと考えています。
他にも、企業、あるいは市役所や町役場といった団体様に対してうちのサービスを提供するようなパートナーシップを進めております。社員割引などの特別オファー形式で福利厚生として提供しており、今後は、健康保険組合との連携も計画しています。社員に運動習慣を身につけて病気にならない環境をプロモートしていきたいと、どの法人様も同じような悩みを抱えており、こういった面からも弊社のバリューを発揮していければと考えております。
例えば医療機関との連携も強化することを計画しています。実際に山口県周南市の徳山病院では、同敷地内のエニタイムと連携し、年に一度受ける人間ドックや健康診断の結果をもとに、運動プログラムを提案するなどを実施しております。 この取り組みをもとに、他の病院からも問い合わせを受けており、既に導入を検討いただいているところもあります。運動習慣を身につけることで、検査数値が改善し、病気にならないように貢献できるので、この分野には膨大な市場が眠っていると思っています。
ーー 今後のファイナンス戦略についてもお伺いしたいです。
山部 :現在、成長できるチャンスがたくさんあり、どの順番でどう攻めていくかという悩みがあります。M&Aや周辺サービスへの展開も考えており、まだ進出していない地域で店舗を持っている企業との協業や、新しいブランドを立ち上げることなどを積極的に検討しているところでございます。
現在、私たちの主要な顧客は20代から40代の男性が多いのですが、女性向けの新しいフィットネスブランドを立ち上げることで、女性の顧客も取り込んでいきたいと考えています。
また、物販やEコマースにも力を入れる予定でして、健康に関連したグッズを、他社様とコラボしたり、あるいは独自にそういったブランドを開発したりと、既に案件を進めているところでございます。
ーー海外展開について具体的にはどのような計画があるのでしょうか?
山部:実は、ヨーロッパやアジアの国々からも、日本のFast Fitness Japanで店舗展開してほしいという具体的な話がいくつもあります。ただ、日本以外の市場に進出するには、現地のノウハウや人脈、ネットワークが必要です。そこで、既存のフランチャイズマスターや現地で有力なジェネラルマネージャーを採用し、サポートする形で展開することを検討しており、既にいくつもの国で話が進んでおります。
ーー 海外展開を考えた際、これまでのビジネスモデルとは異なるものが求められると思われますがそのあたりはいかがでしょうか?
山部 :海外ではパーソナルトレーニングが非常に高い市場を占めており、売れっ子トレーナーは朝から晩まで予約が入り、お客様から別枠でフィーを頂くことで店舗売り上げに大きく貢献しています。私たちのエ二タイムの店舗では、自由に運動ができるスペースを提供していますが、海外展開を考える際には、この点を考慮する必要があるでしょう。
ZUU onlineユーザーへ⼀⾔
ーーそれでは、最後に投資家やユーザーに向けて一言お願いいたします。
山部:当社のビジネスモデルは非常に安定しており、安定収入が得られることから、余裕のある方にはぜひFCオーナーとしてご検討いただければと思います。国内エニタイムフィットネス事業は堅調に推移しておりますので、代表取締役として今後も企業価値向上に繋がる取り組みを全力で推進していく所存です。ユーザーの方はもちろん、まだエニタイムフィットネスのご利用がない方も是非一度お試しにご来店いただき、ご要望やご意見を寄せていただければ大変幸いに存じます。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
- 氏名
- 山部 清明(やまべ きよあき)
- 社名
- 株式会社Fast Fitness Japan
- 役職
- 代表取締役社長