本記事は、ひきたよしあき氏の著書『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
雑談は相手に「教えてもらう」こと
会話を大きく分類すると2つに分かれます。対話と雑談です。
対話は、相談すること。
雑談は、教えてもらうこと。
学生たちに、私はこう教えています。
対話は、対等な立場でお互いが意見交換しながら、共通のゴールに近づく相談をすること。
会議で売り上げを上げるための議論をすること、相手とWIN−WINの関係を構築する交渉、夫婦で子どもの教育について話し合いをすることは、対話です。
一方、雑談は、決まった目的やゴールがない会話です。雑談で大切なことは、相手に気持ちよくなってもらい、親睦を深めること。
だから、雑談では、相手に「教えてもらう」という態度を示すことは、極めて有効です。
人は、誰かに何かを教えることが好きな生き物です。
- 教えることで、「感謝されたい」という欲求が満たされます
- 教えることで、自分に自信が持てます
- 教えることで、頭のよさを示せます
- 教えることで、「いいことをした」という自己肯定感が高まります
人に何かを教えるって、気持ちがいい行為なんです。
だから、相手を「教える立場」にしてあげる。これも、雑談が上手くいく極意です。
相手が「もっと話したいこと」を見つける
相手が教えたいことを探すコツは、こんな感じです。
たとえば相手が、「このところ出張続きで、さすがにバテ気味です」と、言ったとします。
この言葉には、「疲れている」という内容のほかにもうひとつ、「がんばっている私を認めてほしい」という意味が含まれているかもしれません。
このとき、あなたは何を教えてほしいと伝えたら、相手は喜ぶでしょうか。
そのためには、こんな感じで聞いてみてください。
「教えてほしいんですが、出張続きなのに、どうしてそんなに元気なんですか。何か健康のためにやってるんですか?」
「教えてほしいんですが、出張先のホテルを選ぶコツってありますか? 私、いつも失敗してるんですよ」
と、「教えてほしいこと」を質問する。
このときのコツは、「自分が聞きたいこと」ではなく、「相手がしゃべりたそうなこと」を探すことです。
ポイントは、次のような気持ちをくすぐること。
- 認められたい
- ほめられたい
- 共感、同情されたい
この3つのポイントを「察する力」を磨くことです。
ただし、毎回、相手の気持ちにジャストフィットする質問ができるわけではありません。ひょっとして、外れちゃうことのほうが多いかもしれません。
でも、そこでがっかりしないでください。
相手の気持ちになって考えた経験は、確実にあなたの雑談レベルを上げています。
「しまった、ちょっと当たりが外れたかも」と思うたびに、あなたの中で、チャリンチャリンと経験値が高まっているのです。経験値の貯金は、自分にとってすごい価値になるはずです。
相手の本音をうまく引き出す方法
ただ、相手の気持ちを察するときに、注意も必要です。日本人の謙遜体質が、話を見えにくくしていることがあるからです。
「めちゃくちゃがんばったから、ようやく昇進したぞ!」
「うちの息子、優秀だから東大に合格しましたの!」
と、本当は言いたくても、言わない人が多いですよね
日本人は、「人に自慢しているように思われたくない」という気持ちの強い人が多い。だから、「ここが認められたい!」「ここをほめてほしい」という話が表に見えにくい傾向があります。
そんなときは、とにかく話をよく聞いてください。
そうすると、「大変だ」「苦労している」と、困っているような表現の裏には、ヒントが隠されていることに気づくはずです。
こうした言い回しが出てきたら、「ここがほめてほしい、認めてほしいポイント!」と推測してください。
もうひとつ例をあげます。
「朝、子どものお弁当をつくるのが大変。うちの子、好き嫌いが多いから」
これも、よく聞く話です。
さて、ここから「教えてほしいこと」を探してみましょう。
まず、相手の言葉の裏にある気持ちを読み取ります。
「朝、子どものお弁当をつくるのが大変」と言っているので、ここから「毎朝、起きて必ずお弁当をつくっている私」を認めてほしいという、本音が見えます。
もうひとつ。好き嫌いの多い子どものために、献立を工夫しているところをほめられたいという気持ちもあるのではないでしょうか。
そこで、こう質問します。
「ぜひ、毎朝ちゃんと起きられるコツを教えてください」
「毎日の献立をどうやって思いつくのか、教えてください」
どうでしょうか。相手が「よくぞ、聞いてくれました」と、心で思っているイメージが見えてくるんじゃないでしょうか。
雑談は、相手にしゃべってもらうのが鉄則。
自分が興味のあることで会話を組み立てても、相手の興味関心とずれていれば、会話は続きません。
でも、相手の話したそうなことに対して、「教えてほしい」という態度を示せば、相手は「待ってました!」とばかりに話してくれるはずです。
それで、いいのです。
雑談は、目の前の相手がマイクを握り続けて、いい気持ちになることなのですから。
- ポイント
- 相手が話したいことを、「教えてほしい」という態度で質問する。
早稲田大学法学部卒業。
博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。
政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種・世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析し、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授する。
また、大阪芸術大学、明治大学、慶應MCCなどで教え、「はじめて『わかった!』と心の底から思えた講義」「一生ものの考える力が身につく」と学生や社会人から支持を集める。
教育WEB「Schoo」では毎回事前予約が約20,000人、朝日学生新聞社「みんなをつなぐ新聞WEB」では、毎回1,200人近い子どもと保護者が参加する人気。
著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『大勢の中のあなたへ』(朝日学生新聞社)、『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)など。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。