本記事は、ひきたよしあき氏の著書『雑談が上手い人が話す前にやっていること』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
会話の「間 」は相手の考えている時間になる
雑談が苦手という人からよく聞く悩みのひとつが、
「話が途切れたときの沈黙をどうしたらいいのか」
「話に『間』が空くのが怖い」というものです。
これは雑談が苦手な人に限った話ではなく、多くの人は「沈黙恐怖症」です。
この「沈黙」「間」の恐怖から逃れるには、どうすればいいのでしょうか。
ここでは、私が「沈黙」「間」の恐怖を克服したエピソードをご紹介します。
沈黙ができたとき、何を考えているか
私が若い頃のことです。
勤めていた広告会社では、とにかく雑談が活発に行われていました。
単なる雑談の中に、気の利いたアイデアや面白い意見や質問が飛び交い、投げかけられた質問には、即答しなければならない空気がありました。
ところが、私が放ったひと言に、上司や先輩は「怖い顔」をしてこちらを見るだけ。反応が薄かったりということも、しょっちゅうありました。
そんなことをくり返すうちに、自分の意見を言うのが怖くなってきました。
何か言うと、
「バカにされるんじゃないか」
「嫌われるんじゃないか」
という考えが、先に立つようになってしまったのです。
自分が話したあとに、みんなが黙っている、あの重苦しい時間に耐えられなくなりました。
私も、立派な沈黙恐怖症だったのです。
私は、ある日、この空気が耐えられなくて、会社の先輩に「話をするたびにみんなからあきれられていて、つらい」と弱音を吐いたのです。
すると、先輩から予想だにしないことを言われました。
「君の発言に対して、みんなはバカにしたり嫌ったりしてるわけじゃないんだよ。なかなか答えるのが難しい話が多いから、みんなどう答えたらいいかを一生懸命考えているんだ。考えている時間が間になっているだけだ。君は誤解をしてるよ」
私は、はじめて知りました。
「間」は、相手が何を言おうか一生懸命「考えている時間」でもあるということを。
もしも、目の前の相手が押し黙ってしまったら……それは、何かを伝えようとがんばって考えているのかもしれません。
だって、あなただってそうでしょう。
沈黙が訪れたとき、何を考えていますか。
「どうしよう、何か言わなくちゃ。この人はどんな話が好きなんだろう?」
「沈黙、気まずい! さっきの話をヒントに話題を広げようかな」
みたいな感じで、いろんなことをグルグル考えているんじゃないでしょうか。
話が回らないことを自分のせいにする必要はありません。
雑談は、あなた1人でしているのではなく、相手がいるのですから、1人で責任を感じる必要はないのです。
沈黙なんかで自分を責めないでください。訪れた沈黙は、相手と一緒に打ち破ればいいのです。
会話における「間」は、互いが「もっといいコミュニケーションをしたい!」いう気持ちにあふれた時間と考える。
これで、私は「間」が怖くなくなりました。
別のアクションで気まずさを強制リセットする
「間」は怖いものではないと頭ではわかっても、やっぱり間を避けたい。そういうときはどうしたらいいか。
そういうときは、「一度逃げる」というやり方があります。
たとえば、かかってきてもいないのに「すみません。電話が……」と言って席を離れてしまう。トイレに行く。
とにかく、重い「間」が流れた場面を強制終了してしまうのです。
そして、戻ってきたら「ところで……」とまったく別の話をすればいい。
沈黙の時間は、相手にとっても沈黙。
お互いにとって気まずい時間だと感じたら、多少、強引でベタなやり方で、沈黙を切ってしまうのもアリです。
- ポイント
- 「間」ができても、自分も相手も責めない。
どうしても気まずくなったときは、いったん場をリセットする。
早稲田大学法学部卒業。
博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。
政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、幅広い業種・世代の価値観、世代間のギャップ、言葉遣いの違いなどを分析し、コミュニケーション能力が高まる方法を伝授する。
また、大阪芸術大学、明治大学、慶應MCCなどで教え、「はじめて『わかった!』と心の底から思えた講義」「一生ものの考える力が身につく」と学生や社会人から支持を集める。
教育WEB「Schoo」では毎回事前予約が約20,000人、朝日学生新聞社「みんなをつなぐ新聞WEB」では、毎回1,200人近い子どもと保護者が参加する人気。
著書に『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)、『大勢の中のあなたへ』(朝日学生新聞社)、『トイレでハッピーになる366の言葉』(主婦の友社)など。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。