本記事は、吉野 創氏の著書『自分ものさし仕事術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
自分自身の「ミッション」を見つける―あなたが掲げる旗印
「自分理念」の中で大切な3つの要素には、「生きる目的」、「ミッション」、そして「ビジョン」があります。
ここでは、「ミッション」と「ビジョン」についてお伝えしたいと思います。
自分自身の「ミッション」というのは、仕事を通じた社会や人に対する役立ち方、つまり「志」という意味で用いています。これらは言ってみればあなたの仕事に対する考え方に含まれるもの。仕事に対する考え方のことを、私は広い意味で「仕事観」という言葉で表現しています。
「自分は何のために、なぜ、働いているのか」
「なぜ自分は、この仕事をするのか」
という問いに対する答えが、あなたの「志」、そして「仕事観」を表していると言っていいでしょう。
こうした問いを投げかけると、ほとんどの方が真っ先に、
「お金のため、生活のため」
という答えを思い浮かべるのではないかと思います。
しかしこの問いを、一度じっくり掘り下げて考えてみてほしいのです。
誰しも生活がありますから、「お金のために働く」のは当然のことです。
しかし、この当然だという固定概念を取りはらって、「お金」以外の働く理由について、自分の心の深いところにスポットを当てて、考えてみてほしいのです。
時間をかけて、突き詰めていってみると、たいていは1つ、2つと、何か理由が出てきます。例えば、商品を売ってお客さんが喜んでくれた時に、自分もとても嬉しかった、という経験から、
「お客さんの笑顔を見るために働く」
という答えを導き出したなら、それも立派な「働く理由」であり、あなたの「志」、そして「仕事観」と呼べるでしょう。
私が以前に研修でお話を聞いた20代の方は、研修で学ぶ前は「働くことは、稼ぐこと。お金を稼ぐために、営業として売ることが仕事だ」というふうに考えていたそうです。
しかし、「売る」ということを、単に「自分の給料のために、売る」という意味合いだけで捉えるのはとても浅い考え方だ、ということに気づきました。
そして、「そもそも、何のために働くんだろう」といったことや、「そもそも、何のために生きるのか」といった深いテーマから、人生観や仕事観を掘り下げていくように変化していきました。
こうして自分の働く理由、すなわち仕事観を考えていった結果、これまで仕事の目的だと思っていたお金が、ただの結果であることに気づき、結果だけしか見ないような仕事観を変えていこうと思ったそうです。
仕事を、お金を得るための手段としてではなく、本質的な意味で捉えることができた結果、それまで目的だと思っていたお金、業績、売上ノルマなどといったものが、全て「結果」に過ぎないということに気づくことができたのだと思います。
仕事をする上で一番大切なのは、「なぜ自分はこの仕事をするのか」の「なぜ」の部分です。なぜなら、この「なぜ」が自分の中のエンジンとなって、自分を動かしていくからです。
そして、自分の中のエンジンを回して、自発的に仕事をしている人がいると、周りの人も動かされるようになります。そうなれば、チームや組織にも良い影響を与え、生産性も高まり、組織全体の仕事もうまく回っていくようになるのです。
とはいえ、正直なところ、「自分の人生や生きることに向きあうのって、なんかキツイなあ……」とも思ってしまいますよね?
皆さん、最初はそうおっしゃるんですが、難しく考えることは一切ありません。
ここでは、簡単にできる1つのワークをご紹介します。
白紙を1枚用意します。「私はこのために仕事をする」というテーマを、紙の真ん中に丸で囲んで大きく書いたら、その周りに、自由に、仕事や人生で大切にしていること、好きな言葉やキーワードを、ふせんに書いて貼り出してみてください。
もちろん、お金のため、給料のため、と書いてもOKです。でも、それ以外にもまだ書き込める空白はありますよね。
書き始めてみると、意外に楽しい、と皆さんおっしゃいます。
紙に書くと、自分の頭の中にある状態とは違って客観視できるので、意外な発見があったりします。職場の仲間と一緒にワイワイやって、他の人の書いたものを見ることでも、発想が広がります。
そしてその中で、これだと思うキーワードから、今世の中で起きていること、今社会で課題となっていることと関連付けて、掘り下げて考えていきます。
「こう変えていけるかも?」「こう変えていきたいな」「こう変えるぞ!」という、仕事を通じた「自分なりの役立ち方」を見つけていく感覚です。
お金のためだけではない、「何のために」を発見できたら、あなたが大切に思うテーマは、あなたの仕事や人生にとって何らかの意味を持つはずです。
そして、そのテーマはあなたが掲げる「旗印」のようなもの。「自分理念」の大切な構成要素となります。そんな「旗印」を掲げて、仕事や人生に向かっていってほしいと思っています。