本記事は、吉野 創氏の著書『自分ものさし仕事術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

オフィスの階段で話をするビジネスパーソン
(画像=maroke / stock.adobe.com)

「『楽』な働き方」って何だろう

自分らしく働くことができると、「楽に」仕事ができるようになるとお話ししています。

ここで言う「楽に」という言葉は、決して「楽して働く」という意味ではありません。また、わがままに、自分勝手に、手を抜いて、楽をする、という意味ともまったく違います

ではいったい、どういう意味なのかを説明したいと思います。

人間には誰しも、基本的に、「楽をしたい」という欲求があります。それは、自分自身の身を守ろう、という動物が本来持つ自己防衛本能に近いものです。

ですから、放っておくと、面倒なことは避けたい、嫌なことは人のせいにして自己正当化したい、という方向に無意識のうちに流れていきやすいようです。

自分の損得で考えて、楽な方に無意識に流される……これを「依存型姿勢」と呼んでいます。

ただし、そうした依存型姿勢に流されて人生を送っていると、人は決して主体的に生きることはできません。世界で一番読まれている自己啓発書と言われている『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)という本がありますが、ここに、成功のための第一の習慣として挙げられているのが、「主体的に生きること」です。

このことからも、いかに主体的に生きることが大切であり、また逆に言えば「意識しなければ」難しいことであるかがわかります。

最近ではワーク・ライフ・バランスが叫ばれ、働き方改革が進み、職場でも個人の意思が尊重される時代になってきました。

個人の意思を尊重すると言えば聞こえはいいのですが、それはつまり、全て「自分の責任で選び取り、決めていかなければならない」ということです。

以前のように、会社が働き方を厳しく管理することも少なくなってきていますから、もしあなたが「楽する方に流される」道を選んだとしても、誰もそれを注意などしてくれないことが当たり前となるでしょう。

つまり、これからの社会人は、どう生きるかは、全てあなた自身が決める時代になる のです。それを意識すると、「主体的に生きること」につながります。

しかし、ここで重要なのは、「楽する方に流される」道を選んだとしても、楽になって喜んでいられるのは一瞬であって、その喜びは決して長続きしない、ということです。

例えば、「自分の案件で受注を取れず、チーム全体の今期目標達成ができなかった」という場合に、「でもその責任は、提案資料を最終チェックした上司の責任であって、自分の責任じゃない」と他責にしてしまった、とします。

確かに、それで責任を逃れて、その時は楽になるかもしれませんが、そのように上司批判をして他責にしているあなたの人間性を見て、周囲のメンバーのあなたへの信頼度は下がる可能性がありますよね。

そのような状態で、上司からあなたに仕事の案件が回ってきたり、仲間からの協力が得られたりするものでしょうか。

これは極端なケースですが、信頼が低下して、職場の仲間からの協力が得にくくなっていくと、結果として仕事での成果はさらに出しにくくなると思います。

さらにこの経験からの自分自身の成長は、果たしてあるのでしょうか。他責にしてばかりいると、自分自身の成長はありませんよね?

つまり、他責にして自己正当化しても、根本的な解決になっていないので、また同じ問題が起こり、何度も繰り返され、そこでまた「楽な方に流される」としたら……。

長い目で見たときに、果たしてそれは本当に「楽」と言えるのでしょうか。

楽な方に流される生き方をしていると、若いうちはよくても、30代、40代と、年齢を重ねても自分の中に何も積み重なりません。

楽して要領よくやってきたように思えても、後ろを振り返ったら、実績も、人も、何も残っていない─。そんなことにもなりかねません。

少しでも、思い当たるところを感じたら、ここで一度、自分には他責にして自己正当化する「依存型姿勢」の部分ってなかったかな? と振り返って自覚してみることが大切です。入社したばかりの新人の方であれば、学生時代や、家庭生活、親との関係の中で、そのような姿勢を無意識に取っていなかっただろうか、と。

その上で、依存型姿勢を自覚できたら、改めて自分は何のために働いているのか、そして、主体的に生きるためにはどうすればいいのか、少し深く考えてみることをおすすめします。

「主体的に生きる」ということは、自分が「こう在りたい」と思った通りの人生を生きるということ。自分の「在りたい姿」に向けて、生きていくことができれば、そこにはストレスが溜まる隙はありませんから、ストレスは0、という状態になります。

ただし、それは無責任に、自分勝手に生きることとはもちろん違います。

あなたは何のために働き、何のために生きていくのか。

それが明確に理解できると、自分の生きる目的、働く目的が見えるようになります。

そうなると、仕事においてもさまざまな迷いは消え、自然体で自由に働くことができるようになるのです。そうなれば、働くこと自体が楽しくなります。

そんな状態を、私は、「楽に働く」と表現しています。それは「自分らしく、無理なく、自然体で働く」という意味です。

そして、楽に働く秘訣こそが、「自分理念」を見つけることなのです。働く目的がわかると、働くことが楽しくなる。「働く目的」が「自分理念」とつながっていくのです。

自分ものさし仕事術
吉野 創(よしの・はじめ)
株式会社トゥルーチームコンサルティング 代表取締役/一般社団法人 自走式組織協会 代表理事 北九州大学法学部卒業後、ジーンズメーカー大手EDWINで営業に従事。その後、経営コンサルティングファームにおいて約300社の財務分析と管理会計の構築ノウハウを習得。マネジメント責任者、支社長などを歴任し、コンサルタントの育成にも携わる。人や組織に、さらに深く関わる合宿や研修を延べ5,000人へ実施。社員が自発的に動く成長ノウハウを見出し、体系化。 2014年「株式会社トゥルーチームコンサルティング」を設立。指示なしでも社員が動く組織づくりは、経営者の組織と業績の悩みを同時解決する手法として公式認定され、「自走式組織®」として2018年に商標登録。100社以上の「自走式組織®」を生み出し、クライアントは3年で売上2.1倍、経常利益4.3倍、わずか1年で粗利益率7.9%改善や、離職率を0%にするなど多くの成功事例を持つ。 自身の経験から、特にマネジメント層の思いに寄り添う人間味溢れる支援が強み。業績がアップするだけでなく、働く社員のやりがいと一体感のある理想の組織になったと多くの経営者から厚い信頼を受けている。 著書に『売上を2倍にする 指示なしで動くチームの作り方』(ぱる出版)がある。
自分ものさし仕事術
  1. 「『楽』な働き方」って何だろう
  2. 「ミッション」というのは、つまり「志」
  3. 楽しもうとするほど人生は充実し楽しくなる
  4. ミスを恐れて何もしない人生にどれほどの価値があるのか
  5. 「自分理念」をつくる3つの発想法
  6. 行く末(未来・ビジョン)からの発想
  7. 人は最後は人間性で判断され、選ばれていく
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