本記事は、吉野 創氏の著書『自分ものさし仕事術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
人は、最後は人間性で選ばれる―専門性能力と人間性能力
「自分理念」を持つと、日々の生きる方向性が決まるので、ブレることが次第に少なくなっていきます。
自分の生きる目的に沿っている感覚があるので、行動することや、自分のために仕事を頑張ることが、自分の人生に全てプラスとなって積み重なっていく実感があり、 ストレスが少なくなります。
しかも、それが同時に会社のためにもなり、仕事の成果につながっていく実感も得られるでしょう。
それまでは、ただなんとなく、惰性で生きる毎日だったとしても、「自分理念」を持つようになると、「今日は自分理念に沿った1日を過ごせた」と実感できる毎日に変わります。
そして、そのことによって徐々にあなたの人間性は磨かれていきます。
仕事においても、知識や技術のレベルの高さといったことも大切な要素ではありますが、それ以上に周りの人は、あなたが日々「どんな思いで仕事をしているか」を見ています。
人が仕事で成果を出していくには、大きく分けて2つの能力が必要だと考えています。それを、私は「専門性能力」と「人間性能力」と呼んでいます。
「専門性能力=スキルや知識」は結局、あなたの「人間性能力」という土台の上に乗るものです。いくら仕事の知識が豊富で、技術力が高くても、それは土台である「人間性能力」の器の範囲でしか発揮されないでしょう。
だから人は、最後は人間性で判断され、選ばれていくものだと思うのです。
そして、この人間性とは結局、その人が「どんな価値観に共感するか」によって決まってくるのではないかと考えています。それがその人の「在り方」です。
「在り方」とは例えば「損得に共感するか、善悪に共感するか」。
これは、個人の損得だけで判断する価値観でしかないのか、それとも、個人を超越して社会の善悪、すなわち、人や社会の良い在り方にまで思いを広げて考える価値観を持っているのか、ということです。
自分1人のことしか見えていない人よりも、社会全体にまで視野を広げている人の方が、器が大きく、豊かな人間性=在り方を持っているように思います。
また、「在り方」とは他にも、「自分自身が本当に生きたい人生を生きているかどうか」ということでもあります。
これは、家庭や職場において与えられた役割をただ生きていくのか、あるいは、それを超えて、本当に自分が大切にしたいことや、大切にしたい価値観を追い求めながら生きていくのか、ということです。
無意識に与えられた環境に甘んじている人よりも、自分自身で納得する道を追い求めている人の方が、自分の人生を生きている、という感覚は当然高まりますし、周囲にとっても、その人間性=在り方がよりよい影響を与えていくのだと思います。
このような価値観に対して、今の時点で100パーセントの共感を持てなかったとしても、それはそれでいいのです。
「自分理念」を持つことにより、少しずつ視野が広がる中で、さまざまな価値観に深い共感を持てるようになっていくものだと思います。
徐々に共感が深まるにしたがって、行動や発言の「選択」も自然と変わっていくことでしょう。
すると、その変化が未来に向けての「原因」となります。
そして、最終的に、未来における「結果」に変化が生じるのです。
そんなふうにして、「自分理念」は人の人間性を変え、未来にも変化を生じさせていきます。
そして次第に、あなたにとって「一番大切なことを一番大切にする」人生にシフトしていくことができるようになるのです。